見出し画像

第257号(2024年3月11日) 2024年度版の「ミリバラ」と「ニュークリア・ノートブック」ロシア編を読み比べ


【今週のニュース】「ロシアが宇宙空間に核兵器配備」疑惑について ほか

ウクライナ向け砲弾80万発の購入資金集まる(?)

 前号で紹介したように、チェコは欧州域外から80万発の砲弾を有償でかき集め、ウクライナへと送る計画を立てている。これまでのようにEU内で生産して戦略援助としてウクライナに送るのではなく、EUの外から買ってくるということだ。世界中に存在する榴弾砲の弾は80万発どころではないだろうが、少々外国に売っても大丈夫なくらい備蓄弾薬に余力があり、尚且つ政治的にウクライナに弾を売ることに同意してくれる国の中からすぐに供給できる数、というのがこの程度だったのだと思われる。

 そこから3週間も経たない3月7日、チェコのパヴェル大統領は、この80万発分の購入資金がすでに集まったと発表した。前号で述べたように、チェコはさまざまな国から砲弾購入資金を募っていた。最終的には賛同国が18カ国にも及び、最後にノルウェーが1億4000万ユーロの拠出に同意したことで80万発分の購入に必要な全額が集まったという。
 ちなみに80万発を買い集めるのに必要な総額がいくらなのか、どこの国から何万発ずつ買うのか、どこの国がいくら出したのかといった詳細をチェコ政府は明らかにしていない*。とにかく金は集まったので、これからチェコが各国政府と協定を結んで弾を実際にウクライナに供給する手筈を整えるとしている。
 他方、ポジャール国家安全保障担当補佐官によると、資金が完全に集まったというにはまだ尚早で、パヴェルがいう「全額集まった」というのは第1バッチの話に過ぎないのではないかという。この辺り、政府内でちゃんと情報共有ができているのかどうかなかなか不安にさせられるのだが、その顛末やいかに。次号以降でも本件については継続的にウォッチしていきたい。

*『フィナンシャル・タイムズ』に対して匿名の関係者が語ったところによると、80万発の購入に必要な総額は15億ドルほどであるという。

「ロシアが宇宙空間に核兵器配備」疑惑について

 過去1ヶ月ほど、ロシアが宇宙空間に核兵器を配備するのではないかという話がマスコミを賑わせてきた。米下院情報委員会が2月に言い出したもので、その後「これは原子力推進衛星ということだ」「いや、本当に核弾頭を備えているのだ」というふうに話が錯綜しているが、ロシアが何らかの衛星配備型兵器を開発しているらしいことはホワイトハウスのカービー報道官も認めている。

 この辺の真偽はなかなか一朝一夕に明らかにならないだろう。ただ、そのバックグラウンドを考える上で格好の論考が『フォーリン・アフェアーズ』に出ていたので紹介したい。著者が宇宙安全保障の専門家として知られるアーロン・ベイトマン(ジョージ・ワシントン大学宇宙政策研究所)である。

ここから先は

4,982字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?