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「”世界観”とは、お客様と向き合い続けた結果だと思うんです」 ーコンテンツマーケティング最前線:クラシコム 高山様インタビュー 前編

皆さまこんにちは。CCI Lifestyle Digital CONNECTです。

さて、今回は「コンテンツマーケティング最前線」シリーズ第一段といたしまして、株式会社クラシコム 高山 達哉 様をゲストにお招きし、コンテンツマーケティングを考える上でのヒントをお聞きしたく思います。

※中編はコチラ

<ゲストプロフィール>

高山さん

高山 達哉
株式会社クラシコム
取締役 事業開発部 部長
ブランドソリューショングループ マネージャー

1985年生まれ。WEBサイト制作会社にて、コンテンツマーケティングのプランナーを経て、2015年9月にクラシコム入社。広告事業の立ち上げを行い、「北欧、暮らしの道具店」に新たなビジネスラインを確立。現在も様々な企業とのコラボレーション施策を統括、「北欧、暮らしの道具店」の世界観やブランド価値を広告主にソリューションとして活用いただく取り組みに従事している。

<インタビュアープロフィール>

舟山3_R

舟山 隆明
株式会社CARTA COMMUNICATIONS 
メディアソリューション・ディビジョン

2007年株式会社オプトに新卒入社。
2011年株式会社サイバー・コミュニケーションズ入社。
IT・ビジネス系媒体担当などを経験後、株式会社電通へ出向。
某大手トイレタリー・化粧品メーカーのWeb広告担当営業として従事。
帰任後、Amazon、美容系・ファッション系メディア、生活系メディアのチーム・マネージャーを経て、2021年にCCI社内プロジェクト『CCI Lifestyle Digital CONNECT』を立ち上げ。

お客様と常にフェアな関係でありたい

舟山「ぼく、もともと『北欧、暮らしの道具店』のファンなんです 笑。
広告事業を始められたタイミングで初めて『北欧、暮らしの道具店』を知ったのですが、ECから始まってコンテンツもしっかり作られてて、とても面白い媒体だな、というのが第一印象でした。

それで今回、高山さんとお話するにあたって代表の青木さんのインタビュー記事なども読み返したのですが、2015年に広告事業(BRAND SOLUTION)を始めるにあたって、自分たちがイメージする最高のサービスを健全に実現するために、よりコストをかけてコンテンツをつくることができるよう、新たな収益機会をつくることが目的、というのをお客様に明言していた記事を読みまして。そんなことをわざわざ言う媒体ってないよな、と 笑」

高山「当時も驚かれた記憶があります 笑」

舟山「ただ、このような正直さというのが『北欧、暮らしの道具店』のユーザーのロイヤリティの高さに繋がっているように思えるんですね。ですので、まずはユーザーとのコミュニケーションのとり方についてお伺いできないでしょうか」

二人①

高山「はい、わかりました。

この広告事業開始時に限らずなんですが、わたしたちは新しい取り組みを行う際には『何でやるのか』という動機をお客様に必ず共有するようにしております。

なぜ共有するのかと言うと、お客様とは常にフェアな関係でありたい、と考えているからです。そのためには、こちらの動機を説明する責任もあると思いますし、話すことがお客様と対等な関係を作っていくうえでとても重要だと考えています」

舟山「それはお客様への配慮とも異なりますよね」

高山「そうですね。

動機を伝える時に、完全にお客様におもねるようなスタンスではないですし、過度に自分たちを良く見せたい、ということもありません。

また、クライアントや外部パートナーの方ともフェアな関係であることを心がけていますね。クライアントで言えば、先方からのリクエストをそのまま受ける、ということはせず、あくまで「北欧、暮らしの道具店」のお客様を第一に考えたこちらのスタンスを説明したうえで進めますし、合意形成が難しい場合は案件を降りることも選択肢としては持ったうえでお取り組みしております」

舟山「自社ブランドを始められる時もお客様へ共有したんですか?」

高山「はい、もちろんです。

少し前ですが、オリジナルでメイクアップカテゴリの商品を始めた時にも伝えてますね。コラムという形式で、店長の佐藤がその動機を語っています。

ある意味、わたしたちはお客様に説明できることしかやってないんです」

”顧客視点”で意図した体験を届けられているか

舟山「新しいことを始めるにあたっての意図をユーザーにすべて話すというのは、なかなか他媒体では聞かないことですよね。

ちょっと話は変わりますが、クラシコムのコーポレートサイトでの記事で博報堂ケトルの嶋さんが『コンテンツがスライスされて単体評価される』という発言をされてました。

個人的にもSNSやキュレーションメディアなどのプラットフォームを通じて、コンテンツが単体で評価されるケースが増えているため、世界観をしっかりと構築できている媒体は少なくなっているように思います。

ただ『北欧、暮らしの道具店』はブレない世界観をもとに記事のみならずYouTube、ポッドキャストなど発信するコンテンツを多角化していると思うんですね。どうやったらこの世界観を維持できるのでしょうか」

舟山①

高山「まず、企業として『フィットする暮らし、つくろう。』というミッションを掲げております。

”フィットする暮らし”とは、”丁寧な暮らし”や”豊かな暮らし”ではなく、じぶんがじぶんのモノサシで満足できる暮らしのことです。じぶんを誰かと比べるのではなく、今のじぶんを肯定してもらいたい、というメッセージが込められています。

もうひとつの”つくろう”ですが、今のじぶんを肯定するだけでなく、これからの暮らしがちょっとでも良くなるようなことを、じぶんでも作っていけるんじゃないか、というささやかな希望が込められています。

わたしたちは、この”現状やこれまでの肯定”と”この先へのささやかな希望”という読後感を、商品やコンテンツを通じて感じてもらいたいと考えています。

例えると、お客様が『北欧、暮らしの道具店』の商品やコンテンツに触れているときは、”わたしの暮らしって、なんかいいかもな。これからも自分なりに良くしていけそうだな”と自分のまわりや暮らしを見つめられるようになったらいいなと思います。

このような価値観・ミッションの管理を社内でしっかりと行っています。
常に”顧客視点”で、ちゃんと意図した体験を届けられているか、ということのマネジメントですね。

そして、それをキープしていくのは膨大なコミュニケーション量でしかないと考えています」

社内のコミュニケーションで”世界観”という言葉は使わない

舟山「膨大なコミュニケーション量とは?」

高山「例えば、社内の各グループやプロジェクトでのSlackの会話量がとんでもない量なんです。

担当者から上がってきたコンテンツに対して、マネージャーやディレクターは、分かりやすさや写真の選定などでアドバイスをするだけではなく、『お客様はもっとこうしたほうが嬉しいと思う』など、お客様を主語にした内容も一緒に伝えているんですね。それに対して担当者からも、「その意図をもう少し教えてほしい」などのレスが続いたりと、とても健全なコミュニケーションが常に図られています。

お客様のためのクオリティを維持するために、コミュニケーション量をあきらめない、というか」

高山さん①

舟山「いまのお話も、先ほどの企業ミッションのお話もそうですが、社長の青木さんがブログで仰ってたことが通底されてますね。

お客さんを第一に考えるということは、社内文化として根づいているのでしょうか」

高山「というよりも、社内のスタッフはお客様なんですよ。スタッフの8割が元お客様なんですが、現お客様でもあるんですね。

スタッフになっても『北欧、暮らしの道具店』の商品をプライベートで購入している人も多いですし、『新商品や人気商品は購入を控えてね』と言わなければならないぐらい 笑」

舟山「それはすごいなあ 笑」

高山「弊社は意図してお客様からスタッフになる、という構造にしています。

まずはスタッフが”フィットする暮らし、つくろう。”を体現できている状況が大切ですね」

舟山「そういう一つ一つの積み重ねが『北欧、暮らしの道具店』の世界観を醸成しているのですね」

高山「ありがたいことに”世界観”についてインタビューなどで聞いていただくことが多いのですけど、面白いのは、社内のコミュニケーションで”世界観”という言葉はほぼ使わないんですよ。あとは”ブランド”という言葉も。

『フィットする暮らし、つくろう。』という自分たちの価値観をどう伝えていくのか、お客様から見てどうなのか、ということを突き詰めた結果に”世界観”というものがあると考えています。”ブランド”というものも、おそらくお客様と向き合い続けた結果で生まれるものなんじゃないかと。

どちらも実態のあるお客様を見続けた結果だと思うんです

舟山「お話を聞いていて思いましたが、結局、”世界観”というのはぼくらのような第三者が使う言葉じゃないかと思います。

社内で”世界観”とか言ってしまうと、やることの範囲をあらかじめ決めてしまいそうです。『お客様がこういうことを求めている』と意見を出す時も、『いや、それは”世界観”が違うから』と制限されてしまいそうですよね」

高山「本当にそうかもしれないですね。

共通認識を作るために言語化は大切にしていますが、言葉に固執しすぎると単なるチェックリストになってしまいます。それは可能性をとても狭めてしまうことになりますね」

コンテンツメディアの本質は、お客様が求めていることを熟知していること

舟山「先ほどの『スライスされたコンテンツ』とは作り方が大きく異なりますよね」

高山「スライスされたコンテンツで集客しようとすると、お客様がバラついてしまう可能性があると思います」

舟山「お客さんがバラついてしまう、とはどういう状況でしょう」

高山「『北欧、暮らしの道具店』の記事が様々なキュレーションサイトに載ってアクセスを稼げたとしても、その記事を読んだのは誰なのかわからなくなってしまうと思うんですね。

コンテンツがスライスされてどんどん他のプラットフォームに掲載されるたびに、お客様が見えなくなってしまうんです。その記事でビューがとれたとしても誰のリアクションなのかがわからない見えるのは数字だけとなり、お客様のためのコンテンツ作りから離れてしまう気がします

二人②

舟山「非常によくわかります。

以前、花王 廣澤さんにお話を伺った際に、同様の問題を提起されていました。廣澤さんからWebメディアの方に読者像について質問するとGAなどの数字でしか説明されない場合もあるそうです。広告主的として知りたいのは、実際の読者が具体的にどんな方々なのか、になります。その”読者”を語る力がWebメディアでは弱まっているのではないか、という指摘です。いまの高山さんのお話も、それに通ずる話だと思います。

似たような文脈でのお話として、時々、広告会社の方より『この媒体はSEOが強いのでPVがとてもとれそうだ!ぜひ提案したい!』というオーダーをいただくこともあります。

ぼく個人としてはオススメはしませんよ、とお返事することもありますが、PV数が大きいから、と提案のご要望をいただくことが多い印象ですね」

高山「コンテンツメディアの本質はお客様が求めていることを熟知していることだと思います。お客様のインサイトを起点に、どのように伝えるべきかまでをプランニングし実行することで、クライアントはそのコンテンツメディアがお客様と築いてきた関係性の一部を享受でき、それが価値になるのだと思います。

お客様をちゃんと知りたいと思うのであれば、お客様のためを思ってコンテンツを作り、そのフィードバックを受けなくてはなりません。

SEOを意識してコンテンツを作ってわかるのは、Googleなどのアルゴリズムだけではないでしょうか。

なので、何のためにコンテンツを作るのか、という最初のセットアップが一番大事かと思います」

いかがでしたでしょうか。

中編では『北欧、暮らしの道具店』でのクライアントとの新たな取り組みについて、高山様からのより突っ込んだお話をお届けいたします。

LDCでは今後も業界キーパーソンへのインタビューも行い、発信していきます。具体的な広告プランニングのご相談などは下記までお問合せください。

■お問合せ:ldc@cartahd.com
※中編はコチラ

筆者:舟山 隆明

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