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LDC Meet The Media:第5回『KAI-YOU.net』

皆さま、こんにちは。CCI Lifestyle Digital CONNECTです。

今回は、LDCがとっておきのコンテンツメディアを紹介していく連載、『LDC Meet The Media』の第5回目として、『KAI-YOU.net』の米村様、片山様へのインタビューの様子をご紹介します。

<ゲストプロフィール>

米村 智水
株式会社カイユウ 代表取締役社長

1986年生まれ。2011年に株式会社カイユウを創業。2013年にKAI-YOU.netをリリース。書籍編集者やWebサービスのコミュニティディレクター等を経験して現在に至る。様々なポップカルチャーコンテンツのプランニング・マーケティング・プロデュースを行う。

片山 健
株式会社カイユウ プランナー

株式会社カイユウのマーケティングチーム「KAI-YOU Marketing」のプロジェクトマネージャー。プランナーとしてはイラストレーターやVTuberを起用するプロモーションを担当することが多い。プランナーとしての仕事のほか、『KAI-YOU.net』では「ニゲロオリゴ糖 」の名前でライターとしても活動している。

『KAI-YOU.net』ってどんなメディア?

米村:『KAI-YOU.net』は「ポップカルチャー」と呼ばれるコンテンツのニュースを配信したり、「ポップカルチャー」のクリエイターや関係者の方々に取材を行ったりメディアです。

米村:はい、学生のころに自費出版で雑誌『界遊』を2008年からはじめて、そこから『KAI-YOU.net』は2013年にリリースしました。
同人誌のころから、WEBメディアを運営する現在まで、媒体として「ポップ」を扱うというテーマは一貫しています。『界遊』では『KAI-YOU.net』と同様にアニメや漫画も取り上げていましたが、「文芸」を中心に扱っていました。
文学とか批評って「ポップ」ではないですよね、一見(笑)

▼『KAI-YOU.net』の編集方針である「ポップを捉える心構え」はネット上で公開されている。

米村:当時から「文芸」というジャンルは閉塞的な雰囲気がありましたが、僕の感覚では「アニメ」や「映画」と何も変わらないなと思っていて、少なくとも自分の中では並列にあるものだったんです。
そこで「文芸」にも「ポップ」というワードを持ってくることで、「ポップ」になるんじゃないか、「ポップ」というカテゴリーで認知されるようになるんじゃないかと思って、「ポップ」をテーマにしました。

米村:そうですね。あとは、『界遊』の立ち上げた2008年は、例えば「初音ミク」が流行するなどして、ネットカルチャーが勃興し始めて、今までの文脈とは全く違ったところから面白いものが生まれ始めた時期。新しいカルチャーの出現に立ち会って、それを記録して、人に読んでもらうということをずっと続けていて、『KAI-YOU.net』という今の形になりました。

株式会社カイユウ 代表取締役社長 米村 智水 様

米村:ユーザーとしては20-30代の若い年代が多く、男女比は以前は男性の方が多かったですが、最近は「推し活文化」の影響で女性も増えていて、今は半々くらいです。
でもメディアとしてはペルソナを絞っているわけではなく、老若男女問わず読んでもらえるコンテンツを作ることを心掛けています。

米村:配信者、特にVTuberは「推し活文化」やコロナ禍の影響で特に人気があり、一気に伸びていますね。
あとは、最近は画像生成AIに関するニュースも人気です。画像生成AIによってどんなことができるか、とポジティブに捉えて情報収集されている方が『KAI-YOU.net』に来てくれています。

なぜ、「推し活文化」の記事が伸びるかというと、推し活されている方は記事をSNSなどで拡散してくれてコミュニティ内で盛り上げてくれるんです。

インターネットではプレスリリースをそのまま書いたような記事も多いですが、『KAI-YOU.net』の記事は、歌い手やVTuberなど本人にインタビューをしているものだったり、取り上げるテーマや作品に対してライターの解釈がちゃんと書かれているものが多いのも拡散してくれる理由になってそうです。

米村:ユーザーの方が楽しんでいる作品に対して、異なる見方、読み方を提示することはメディアとして大事だと思っていますね。

『KAI-YOU.net』ならではの強みとは?

米村:まずは、共に働くスタッフがとにかく若いこと。僕が今36歳ですが、会社の中で年上の方でして 、20代が大半を占める形で構成されています。ユーザーに近い年代のスタッフが多いことで、まだ大人をはじめとして多くの人が気づいていない面白い、人気のあるコンテンツの魅力を広げることができます。

次に、社内エンジニアがいないWEBメディア運営も多い中で、うちはエンジニアリングに力を入れていて、最新の技術を積極的に取り入れる体制があります。

あとは、会社としては自社資本のみで経営しているということが強みです。『KAI-YOU.net』は全く忖度しないメディア、何にも左右されないメディアでありたいと思っています(笑)

そのほかは、テキスト以外の幅広い形式のコンテンツを出しているところですかね。

米村:はい、『KAI-YOU.net』の他に、有料コンテンツを展開するサブスクサービス『KAI-YOU Premium』、YouTubeなど、プラットフォームごとに記事以外の形式を含めた情報発信に力を入れています。

通信技術が発展したことで、より大きなデータを扱えるようになれば、動画が主流の形式になることは当然だと思っています。そのような時代の流れに合わせてコンテンツの形式を変えてきました。

一方で、テキストならではの良さもあるから、いまだに残っているのだと思っています。テキストの強みって「早い」ことだと思うんですよね。人に伝わるのも早いし、人が作るのも早い。
即時性という点ではテキストは強いから、情報伝達という観点では続いていくと思います。

サブスクサービス『KAI-YOU Premium』を立ち上げた理由

米村:まず最初に、現代ではインターネットでの体験にお金を払うということが特別なことではなくなり、当たり前になりました。

そのような状況の中で有料サービスをはじめない理由はなかった。無料で提供しているということは、無料による「トレードオフ」が発生していると思うんですよね。コストを抑えてコンテンツを作ったり、あまり目に入れたくないような広告が掲載されたり。無料によって望まないものを体験・摂取しなければいけないというトレードオフがユーザーにもメディアにも発生していた。

それであれば、毎月1,000円を払うことで良いものを体験・摂取できる人生が送れた方が良い。だから『KAI-YOU Premium』を立ち上げました。

米村:あとは、『KAI-YOU.net』を長く続けていく中で、自分たちはしっかりと時間をかけてコンテンツを作ることが向いていると気づいたので、その点でも『KAI-YOU Premium』の形態は合っているし、成功できると思いました。

実際に手ごたえもありまして、経営も安定したと思います。今後も力も入れていきたいですが、インターネット上の無料コンテンツと有料コンテンツでは作り方が違うため、有料コンテンツの作り方を模索している状況です。

米村:はい、無料と有料ではコンテンツの目指す方向がまず異なります。

無料コンテンツは、とにかく多くの人にコンテンツを読まれることを目指していますが、有料コンテンツは、“会員登録したい”と思ってもらわないといけません。

多くの人に読まれることと、会員登録されることは本当に一致しません。

米村:そうなんです。

例えば、無料記事1本で100,000PVに対して、有料記事1本で1,000PVであっても、有料記事ではそのうちの500人が会員登録してくれるということがざらにあります。

逆に、有料記事で100,000PVであっても、数人しか登録してくれなかった、ということもざらにあります。

多くの人に見られる記事と、お金を払って登録される記事では、ユーザーの行動の原理が全く違うので、無料記事と有料記事は本当に異なる技術や企画が必要だなという感覚があります。

ユーザーと直接コミュニケーションできるイベント

米村:オンライン・オフライン問わずの多くのイベントを行っており、ユーザーの方も参加してくださいます!

例えば、1月には「KAI-YOU新年宴会」がありました!毎年1月31日に行っているイベントで、長くはオフラインで開催しましたが、コロナ禍ではVRChatやDiscordで開催していました。

▼2023年の「新年会」のお知らせ


米村:ユーザーの方だけでなく、いつもお世話になっているクライアントの方も参加されて、喧々諤々の議論を重ねています(笑)

片山:他にも、音楽イベントや、「KAI-YOU HYPER POP MARKET」も行っていますね。

株式会社カイユウ プランナー 片山 健 様

▼2021年開催「KAI-YOU HYPER POP MARKET」特設サイト

「KAI-YOU HYPER POP MARKET」は、幅広いジャンルのクリエイターの方をお呼びした即売会です。こちらのイベントには、1,000名ほどの方にご来場いただきました。

米村:雑誌の頃から、ジュンク堂書店など、書店の方でイベントを開催してトークセッションを行ったりしていました。

だから、イベントを行うという流れは、意識せずとも自然とあって、弊社の文化となっています。

今どのような人が『KAI-YOU.net』を読んでくれているのだろうということが気になっているので、イベントを行っています。

米村:そうですね、『KAI-YOU Premium』の会員限定でDiscordも行っており、いつもユーザーの方とフラットに話す場も設けています。その場で逆にユーザーの方からアイデアをいただくこともありますし、テーマを設けてトークセッションを生配信することもあります。


広告主からの信頼も厚い『KAI-YOU.net』

米村:広告主の業界は様々でジャンルレスになってきていますが、ご依頼の共通点は、訴求したい商品と「ポップカルチャー」を結び付けてほしい、というものが多いです。

片山:例えば、「北九州市」様との企画があります。

「ポップカルチャー」と、それらとのつながりが見えづらい「北九州市」との親和性を生み出し、ユーザー様に親近感を持ってもらうコンテンツを作ることを期待されておりました。

この企画では、若年層に人気のあるバーチャルYouTuber「甲賀流忍者 ぽんぽこ」さんに登場いただきました。ぽんぽこさんの「地方拠点で活動している点」や「旅動画が人気」など、「北九州市」様との親和性の高さも意識しました。

▼北九州市様とのお取組み事例

こちらの取り組みのように、VTuberの方に商材を紹介いただきたい、ポップカルチャーの文脈を取り入れたい、というご要望が多いです。

片山:あとは、新しい商品・お取り組みについては、ご相談をいただく機会が多いです。最近では、韓国発のデジタル漫画「ウェブトゥーン」や、仮想空間の「メタバース」、「サブスクリプション型の動画配信サービス」などの新しいトレンドのご相談はよくいただきます。

米村:いや、いただくことはあまりないですね。

『KAI-YOU.net』に対しては、「認知」というより、「ブランディング」を期待されていると思います。『KAI-YOU.net』に掲載されることで、かっこいい、面白い、と思ってもらえる。

そのように思ってもらえるのは『KAI-YOU.net』に取り上げることによって、クライアント様や商材が「ポップカルチャー」の雰囲気や文脈につなげることができるから。


米村:はい、この『KAI-YOU.net』のブランド力は、長く続けているからだと思います。
WEBメディアという形態がなくなってしまっても、様々なプラットホームで展開することになっていても「カイユウ」というよくわからないブランドがあり続けられれば良いと思います。

米村:トレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」の動画企画・制作です。もともと僕がプロプレイヤー目指してプレイしていたゲームでしたが、その様子を見た米国の方からお話をいただきました。

▼「マジック:ザ・ギャザリング」との取り組みのリリース

片山:タイアップ記事ですと、商材がイヤホンのPRで声優の方を起用してボイスコンテンツを作ってクライアントサイトに格納した事例もあります。

最近は、記事だけでなく、記事に付随した多角的な企画を求められることも多いですね。

今の時代・社会における『KAI-YOU.net』の役割とは

米村:どのような世界、社会にしていきたいか──ということは、わりともう達成していると思います。

最初の方でお話ししましたが、創設当初は、文学や批評に閉塞感があったり、アニメや漫画はあくまで”サブカルチャー”なんだよと言われてきました。

僕はそれが不当評価だと思っていて、お金にもなるし、もっと面白いから、広く見られるべきものだという思いでメディア運営を行ってきましたが、現在は世間でも「ポップカルチャー」として見られるようになったし、無視できないような存在になり、評価されるようになりました。

だから、そういう意味で、当初の目的は達成していると思っています。

ただ、SNSの登場以降、情報の受け取られ方や発信のされ方が大きく変容しています。
まず、ちゃんとしたメディアが情報の信頼性や面白さの保証をしていかないといけない状況になっていると思っています。

そして、Instagramのストーリーズに引きこもるように、自分の考えを発信することに抵抗感や恐怖感を持っている人も多い。だから、『KAI-YOU Premium』で提供しているDiscordのような安心して発信できる、健全な議論ができる場を作っていきたい。その場の選択肢の一つとして「カイユウ」があるよと言いたいです。

米村:その二軸でやっていくことが大切なのかなと思っています。

米村・片山:ありがとうございました。

LDCでは今後もとっておきのコンテンツメディアへのインタビューを行い、皆さまへ発信してまいります。具体的な広告プランニングのご相談などは下記までお問合せください。

■お問合せ:ldc@cartahd.com

筆者:鈴木 瑞穂

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