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【E】え?則本昂大が抑え?

 今江敏晃監督の下で、新たに生まれ変わる楽天にビッグニュースだ。抑えの松井裕樹がMLBへ飛び立ち、救援で50試合を3年続けて投げ抜いた安樂智大がパワハラ問題により自由契約に。まさにごっそりと抜けてしまった救援陣の、それも柱である抑えにエースの則本を立てるようだ。今回は、懐かしくも新しいこの登用について考えてみよう。

先発陣の若返り目的??

 則本は衰えたとはいえ、楽天では規定投球回を計算できる数少ない投手だ。今季もチームで唯一規定投球回を達成。投球内容も直球の衰えは少々感じるものの、ベテランならではの技巧的な投球でのらりくらりと投げ抜いた。ベテランが多く、衰えが顕著な投手陣を精一杯牽引したと言えるだろう。

 ただ、彼も今後不惑に向けて齢を重ねていく間に、どんどんと体力は蝕まれていくことだろう。それに昨季、楽しみな若手投手が台頭した。先発陣は彼らに任せ、則本はその星を守りきるという役割に回るという算段なのだろう。まさにハイリスクハイリターンではあるが、成功したら明日の楽天投手王国は約束されるだろう。青年監督の1年目に、これだけの決心ができることから今江監督は名将の予感がする。

昔は「セオリー」


 一見斬新な起用法に見えるが、昭和の時代には当たり前にあった起用法だ。もちろん、僕は平成の中期に生まれたため、平成後期からの野球しか皆様とご一緒できておらず、見聞きした話で語ることは避けて通りたいが、あくまで「こうした起用法があった」という程度に読んで頂けたら幸いである。

 球史探索家の皆様は、「ベテランエースを抑えに回す」と聞くと、阪神から南海へと追われた江夏豊氏が思い浮かぶのではないか。故野村克也氏に「革命を起こそうじゃないか」と口説かれ、住処を真っ新なマウンドから荒れたマウンドへと変え、そこから200勝200セーブポイントというアンタッチャブル・レコードを立ち上げたのは有名な話である。ただこれは野村氏の現役時代に、南海伝説のエースである故杉浦忠氏が血行障害で3回と持たなくなったのを抑えに回したという起用法のオマージュである。その後もお笑い芸人としても活躍した中日の板東英二氏や、大洋の氏がそれにあたる。そして投手分業制が確立されていく過程で、抑えには活きのいい若手投手を抜擢するというのが主流になったのだ。従って、新しい起用法というよりは、投手分業制の原点に回帰したといった感じだ。

ポスト則本?な若手投手たち


内星龍


 この投手は髙橋宏斗世代。現在の大学3年生と同い年にあたる。今季はもっぱら救援投手として53試合に登板。ホールドポイントも11記録し、楽天投手陣を陰ながら支える存在となった。

 彼の武器はというと、やはり長身から投げ下ろす快速球だ。山本由伸投法を取り入れており、ワインドアップの勢いそのまま力強い球を投げ込む。今季は回跨ぎからここ一番の抑え役まで、あらゆる場面で経験を積んだので、いろいろな引出しを持ち合わせたのではないか。ペース配分さえ間違わなければ、先発投手として十分に通用するだろう。

渡辺翔太


 この投手は、来季で大卒2年目となる。巨人の戸郷翔征や、中日の根尾昂と同じ世代の大変に脂の乗った投手だ。今季はルーキーイヤーながらも51試合に登板。6月に初登板だったため、数字以上に連日出番があった印象である。まさに大車輪の活躍であった。

 彼の武器は、ストンと落ちるパームボールだ。これがチェンジアップの作用をして、タイミングの狂った打者たちから凡打の山を奪い取った。この球以外にも多球種を操るザ・技巧派投手である。チーム事情から救援をしていたが、明らかな先発タイプだ。打たせて取ることができるので、多くの投球回数を期待できる投手だ。

荘司康誠

 彼は昨季のドラフト1位投手。前述の渡辺と同期入団、同い年である。岸孝之や西口文也を彷彿とさせる綺麗なフォームから150キロ以上の球を投げ、数種類のスライダーを操る本格派投手だ。今季はルーキーイヤーだからということか、大事に使われていた印象だ。

 彼は1年間普通にローテーションを回ったら、2桁勝利と規定投球回は必ず達成できるだろう。それだけ試合をまとめられる投手である。唯一の課題はクイック投法か。ただ、ここを磨こうとしてフォームを崩しては元も子もないので、長所である速球を磨いてほしいものだ。

最後に


 期待の若手投手として、安樂智大を挙げられなかったのが残念だ。彼のセカンドキャリアはどん底からのスタートだろうが、少しでもいい人生になることを祈ろう。


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