独断と偏見で選定したサードユニフォームアワード2022

 ホーム・ユニフォームでもなく、ビジター・ユニフォームでもない第3のユニフォームがサード・ユニフォームである。巨人の橙魂ユニフォームや、中日の昇竜ユニフォームなど、各球団チームを連想させるような企画を銘打って開催しているが、他にも魅力的なファンクラブ・ユニフォームや練習用ユニフォームがあるのがNPBの素晴らしいところだろう。今回は、「伝統を打ち破った賞」、「伝統を上手く使った賞」、「デザイン賞」3分野に分け、それぞれを選定する。

伝統を打ち破った賞

オリックス・夏の陣ユニフォーム

これに関しては以前より「夏の陣」という企画名で気に入っていた。「昇竜ユニフォーム」や、「橙魂ユニフォーム」といったチームのモチーフとなっている動物やチームカラーを使用せず、大阪で争い事と言えば、日本人なら思い浮かべるのが「夏の陣」であるためにこの名前をつけたのだろう。こうした面から、これは現在MLBが挙って実施している「シティ・コネクトユニフォーム」の先駆けなのではないかと思っていると同時に、中日では「桶狭間決戦」や横浜では「横浜開港」といった企画をやっては面白いのではないかとも考えてしまった。

 少し話が脱線したが、この夏の陣ユニフォームのどこがいいかと言うと全身がカーキ1色というところだろう。MLBでは以前よりビジターユニフォームの色を上下で揃えており、前述のシティ・コネクトユニフォームでは所謂企画ユニフォームであるにも関わらず上下で色を揃えている球団がチラホラと見られる。

↑上下で色を揃えるロサンゼルス・ドジャースの「シティコネクト・ユニフォーム」

 こういった「こだわり」は日本球界ではあまり見られないが、オリックスのサードユニフォームはここ数年上下で色を揃えているのだ。これまでのような上半身だけを作り、取ってつけたように選手に着用させるNPBの悪しき伝統を打破して欲しいという思いを込めての「伝統を打ち破った賞」である。

伝統を上手く使った賞

こちらは素晴らしいユニフォームが2着あり、どちらかに決めることが出来なかったため2つ紹介する。
西武・ライオンズクラシックユニフォーム
 現在の西武のユニフォームは西鉄時代の昭和30年代前半に使われていたものを現代風にオマージュしたものであり、僕は大変に気に入っているがスカイブルーをチームカラーとしていた時代からの西武ファンにとっては気に入らないというか、「違うな」と思ってしまうようなデザインなのだろう。そこで西武は毎年のように「ライオンズクラシック」という復刻版のユニフォームを着用するイベントを開催しているを今回のように黄金期のスカイブルーを復刻することが多いが、たまに悪名高き太平洋クラブのユニフォームを当時の本拠地である福岡での試合で復刻するなど大変にマニアックな事をするのでこのシリーズは面白いのだ。

↑太平洋クラブの里帰り

 話を本題に戻すと、今回のライオンズクラシックは東尾修監督の下、主力の広岡達朗、森祇晶チルドレンが相次いで退団し、松坂大輔や松井稼頭央といった後に平成の西武史を彩ることとなる選手か台頭し始めた時代のユニフォームである。このチーム状況、現在の若手が台頭しつつある西武に被るのではないか。こうした要素も含め、伝統を上手く使った賞には西武・ライオンズクラシックユニフォームを据えた。「ただの復刻ユニフォームじゃないか」と思う方もいらっしゃるかもしれないが、変に華美なデザインをしたユニフォームを着用するより全然いいのではないかと思う。

阪神・ファミリーウィズタイガースデー限定ユニフォーム
 こちらは今季より阪神が開催している企画で、これはコロナ禍の影響を受けた子育て世帯への支援を目的としていると言う。こうした社会貢献は大いにやって欲しいのだが、今回はその試合で選手が着用する限定ユニフォームの話題である。デザインは通常のホーム・ユニフォームをそのままに、ロゴマークのカラーを黒から青色へと変更しただけなのだ。これは阪神のブランドを巧みに使っている。縦縞にブロック体で「Tigers」と書き、差し色に黄色を使えばそれだけで「阪神のユニフォームだ」と認識できるのであって、それ以外には何もいらないのだ。ウル虎の夏シリーズでもこうして欲しいのだが、そちらはなかなか上手くいっていない。

デザイン賞

ロッテ・ブラックサマーウィークエンドユニフォーム
 専らセ・リーグを見ているファンには馴染みのないものだと思うが、昨季よりロッテが夏季の週末限定で着用しているユニフォームである。今回ピックアップしたもののうち3着がパ・リーグとなったが、集客に乏しいパ・リーグの方が、セ・リーグよりもこうしたファンサービスにおいては一方リードしていると言っていいだろう。

 本題に話を移すと、今季のブラックサマーウィークエンドユニフォームはロゴマークのカラーをミントカラーから紫に変更し、背番号のフォントを独特なものに変更した。特に目立つのが0だ。二重丸を背中に書いたような独特なデザインはTwitterやインスタグラムなどのSNSで大いに反響を呼んだ。# BSWのタグを使い、プロモーションも面白いように上手くいっていた。ウェブページでは所属選手だけではなく、近頃流行っているアメカジのストリート・ファッションのモデルを起用しており、「球場内外で着られるユニフォーム」をアピールしているのも面白い。

最後に

 もはや恒例となったサード・ユニフォームだが、言ってしまうとネタ切れのような球団も出てきているので無闇矢鱈にユニフォームを作成することは注意した方がいいだろう。

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