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"地球探索鉄道"花咲線に乗って、ソフトクリームを食べて来た。

 湿原を渡る1両編成の列車の姿にあこがれて、突然決まった初夏の釧路旅行。釧路~根室を繋ぐ花咲はなさき線は、昆布漁、並走するアオサギ、湿原を渡ればエゾシカの影。そして気づけばルパン三世を追い越して…あっという間の90分でした。
 停車駅のほとんどが無人駅で、駅から降りても観光地はないかもしれない。けれどもタタンットトンッと揺られる電車旅はそれだけでロマンが詰まっています。

JR釧路駅と根室駅をつなぐ、花咲線

 広い北海道の東側・道東エリアはたぶん、観光地としてはあまり有名ではない。観光パンフレットでもやたらと「秘境」「手つかずの大自然」を推している。秘境ハンターでもなし、乗り鉄でもないのになぜ釧路を訪れたかというと、Twitterでみたこの写真に心を奪われたからです。

 すっかり心のアルバムに記憶したまま忘れていたのですが、友人に北海道旅行に誘われたときに再燃、ダメ元で提案したところ、快諾。札幌に立ち寄ることもなく一路、釧路へ。

花咲線でどこまで行くか?

 釧路に行くならカヌーのりたいね、とカヌーツアーとホテルの予約だけして、あとはほとんど何も調べずに釧路に到着。

釧路はかつて物流の拠点として栄えた町。現在の利用者数からは想像できない大きな駅舎。

 「いざ明日は花咲線」と時刻表をひらいたところ、終着の根室までは片道2.5時間、往復するとほぼ一日がつぶれる計算に。5時間も座り続けるのはさすがに疲れそうなので、湿原を渡るハイライトを堪能したら、ちょうどよい観光地のある駅で途中下車して、釧路に折り返そうと決めました。

 が、「ちょうどよい観光地のある駅」が見つからない。地図をいくらながめても、花咲線のまわりに町がない。「駅から車で20分」って花咲線に乗ってきた人には無理では?という表記ばかり。釧路の観光相談カウンターでも、優しそうな女性が申し訳なさそうな顔で「車がないとここらへんはどこも・・」と言われてしまう。
 色んなパンフレットを眺めていたところ「駅から徒歩30分」の小さな表記を発見!北海道の30分は近所!むしろ折り返しの電車のタイミング的にもちょうどいいね、と、厚床あっとこ駅から片道2キロ、明郷あけさと   伊藤牧場をゴールに決めました。

8:21、花咲線に乗車

 釧路駅8:21発、普通・根室駅に乗車。

 団体ツアーの方々もいて、ほぼ満席。ぶじにボックスシートに着席。

観光客が多いので、なんとなく車内の空気が浮足立っています。

 定刻になるとタタン、トトンとゆっくり走りだします。はじめは木立に囲まれあまり視界はひらけませんが、のんびりしたローカル線ならではの空気が心地よい。

駅舎が貨物列車・・?

 尾幌駅、駅舎が列車で驚きました。旧国鉄時代に再利用したらしい。

  車窓はどんどん移り変わります。

根室に向かって左手側は草原
右側に海がみえた

 居ても立っても居られなくなり、立ち上がって右側の車窓が見える場所へ。

電車の後ろ側から

 気付けはすでに1時間近くたっていました。そして厚岸あっけし駅の近くは、昆布漁が有名。

昆布が干されている。長い・・!
そわそわ

 そして厚岸駅到着。ちょと大き目の駅。

 すぐに発車、ついにここから念願の湿原ゾーンに入るので、万全を期す。

デカい。アオサギだ・・

 車内に響く「シカだ・・!」の声。左手遠くに、確かにシカの姿が。遠すぎて写真にはおさめられなかったけれども。
 そして海沿いを走っているつもりでいたら、湿原になった。ラムサール条約に登録されている、別寒辺牛べかんべうし湿原だ。

 これですよ、これ・・。まさに一年前にTwitterでみたあの景色の中の人になっている。静かに興奮する。

電車後方(進行方向と逆側)。東側に海、西側には湿原と山。シカがいたのは山側。

 湿原が見えてる間は、少しゆっくりと走行してくれた。たぶん15分ぐらいは湿原の景色を堪能できたのかな。体感はアッと言う間、茶内ちゃない駅に到着。

とっつぁんがいる

 ルパン三世の生みの親、モンキー・パンチ氏の故郷らしい。ちらり石ノ森章太郎のキャラクターで飾られていた石巻を思い出す。

 茶内駅をすぎ、20分もすればゴールの厚床あっとこ駅に到着。

これは・・牧場がありそう・・!!

 私たち2人をおろした列車は、タタンタタンとのんびりと去っていく。

 現在10:04。駅にはもちろん私たち以外に誰もいない。釧路へ戻る電車は11:51発。万が一逃すと二時間半待ちぼうけになるので、失敗は許されない。

10:04、厚床駅からまっすぐ2.3km

 ここからソフトクリームまで片道30分、往復60分。牧場の滞在時間は最大でも30分。寄り道・迷い道は即失格じゃん・・とハラハラと歩き出す。が、それも杞憂。ここは北の大地、ただまっすぐに伸びる気持ちの良い道しかない。牧場には必ず着く。

駅前の広場?広い。電車の時間にあわせて車がきていたり、すらしない。

 晴れて穏やかな天気なので、道脇の野花を見ながら歩く。

かわいい脇道もたまにある。

 駅から一本道。地平線が見える。

あの坂の上までたぶん1kmぐらい。

 牧場や、何に使われてるのか、使われていないのかもわからない広い土地を眺めながら、ひたすらまっすぐ2km歩くと、ついに牧場。きっかり30分かかった。

伊藤☆牧場

 突然、人の気配を感じて嬉しくなった。

10:40~11:10、牧場を急ぎ堪能する

 平日だったので、お客さんもおそらく私たち以外にいない。綺麗な牧場を独り占め…でのんびりしたいものの、30分以内に出発しなければならない。

かわいい犬をなでる時間もない・・

 牧場にくると、ついつい食欲が増す。早めのお昼ご飯、を言い訳にホットドックも食べることに。

もちろん美味しい

 ドッグ食べて、ちょっとだけ牧場を眺めたらあっという間にいい時間なので、ソフトクリームと飲むヨーグルトを抱えて、帰路につく。

右手にソフトクリーム、左手に飲むヨーグルトをもっていたので、しばらく写真は撮れませんでした。

 ミルク感濃厚なのにさっぱりしていて、いくらでも食べられてしまうソフトクリーム。酸味がしっかりきいてどろっと飲みごたえたっぷりのヨーグルト。限られた時間ながら、しっかり定番をおさえられてよかった。

これぞthe北海道、食べ歩き。

 帰りも同じ一本道。

車は猛スピードなので、すれ違う時けっこう怖い。
北海道はここにかぎらず、いたるところに蕗がある。

 きっかり30分で駅前に戻ってきました。

駅前唯一のレストラン。焼肉とラーメン?

 かわいい駅舎。11:45、想定よりもギリギリに到着。

厚床駅は昔、花咲線以外にも車線があったそうで、駅舎も大きい。

11:51、帰りの花咲線

 11:51、再び列車にゆられ、90分の釧路への旅。

 帰りは団体ツアーもいなくて、ガラガラ。海側のボックスシートに座って、帰りました。

 帰りはスマートフォンで動画を撮っていた。

13:19、釧路駅到着。

 朝8時過ぎに出発した釧路駅に、約5時間後に戻ってきました。あれ、そんなに経ってたのか。日頃、長距離移動するときは本をカバンに忍ばせてるんだけど、結局スマートフォンで興味のないニュースやSNS、電子コミックを読んで無為な時間を過ごしがち。ところがさすが花咲線、スマホはカメラの起動のために触りこそすれ、往復ずっと車窓を楽しんでいました。
 なんとなく花咲線の余韻から離れがたく、駅内のレトロな喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら、あぁ釧路きてよかったなぁ…としみじみ思い返したのでした。

一枚の写真に心動かされ

 去年の夏に、Twitterのタイムラインにふと流れて来た花咲線の写真。おそらく鉄道が大好きな方が撮った写真。短い編成の車輛が、ごとごとと湿原を走っている。こんな場所が日本にあるんだ…
 ほんとに来ることになるとは思ってなかった。けれども来てみると、釧路の街は大きくて、特に朝はすがすがしい。花咲線に乗る前、ホテルの周りを散歩していると、コンビニは少ないし、駅前ビルのほとんどはテナント募集中。だけどそんなことは関係なくて「ここにまた戻ってきたいな」と思わせる空気が漂っていた。(釧路の町については、またどこかで。)

釧路のまちなか、幣舞橋ぬさまいばしからの景色。この橋の上には「四季」をあらわす4体の像が立っている。

 花咲線も、釧路湿原も釧路のまちもとても素敵なので、もしも誰かの釧路に行くきっかけや参考になれば嬉しいです。




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