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【Benno Moiseiwitsch, 1890-1963🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ13】

名ピアニストのベンノ・モイセイヴィチ(1890-1963)は旧ロシア帝国オデッサ(現ウクライナ)生まれ。 同年に同じ街で生まれたピアニストにフェインベルクがいる。ただ,フェインベルクは4才の時にモスクワに引っ越しているので,接点はなかったのかもしれない。

1904年から1908年までウィーンでテオドール・レシェティツキーに師事する。始めのオーディションで革命のエチュードを弾いたときには,レシェティツキーに,「私なら左足でもっとうまく弾けるよ。この曲には100位の繊細な表現があるのに君は全然わかってないね。派手に弾けば良いってもんじゃないんだ。2,3ヶ月練習してみてマシになってらおいで」と言われる。話が脱線するが,他の記事(「ベートーヴェンさん,ツェルニーさん,ショパンさん,みんなスピード違反です!?」)に書いたように,革命エチュードのテンポはよく聴く演奏よりも遅いのではと思う。

モイセイヴィチは落ち込むものの再チャレンジ。レシェティツキは,「『才能のあるアマチュア』を卒業したね。ちゃんと自分の音を聞けるようになってきたね」と言って弟子として受け入れた。
うん,この言葉は深い。ちょっと逆説的な言い方だが,演奏するときには,弾くことより聴くことが大事なんだ。

モイセイヴッチのレパートリーは主に後期ロマン派で,特にラフマニノフやシューマンを好んだ。 ラフマニノフの楽曲の演奏については,ラフマニノフ自身が感嘆して「魂の後継者(spiritual heir)」と語ったらしい。

演奏を聞くと,卓越した技術で自由に旋律を歌い上げて聞き手を惹き込む。 シューマンのクライスレリアーナのポリフォニーを巧みに歌い分ける演奏も絶品だし(7曲目の"Sehr Rash"なんかドキドキしてしまう),ショパンのバラード4番の「こんなに簡単そうな曲だったっけ」と思わせるくらい軽やかでありながらドラマティックな演奏も素晴らしい。

動画はリストの「3つの演奏会用練習曲」の「軽やかさ」(La leggierezza)。 これまでの紹介動画の多くと同様に古い録音なので音質は良くないですが,真珠の粒を転がすような美しく瑞々しい音色は十分堪能できます。


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