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第3章【21】感動の前期のオーケストラ演奏会②

注)私が音大入学前にアフリカで働いていた時の写真です。沢山あるので毎回紹介しています。写真は、ルワンダの中学生と先生(撮影:いちあ)


前期のオーケストラの本番の日は、なかなか緊張していた。

衣装は上は白、下は黒だという。舞台衣装は初めてなので、こんなんでいいのかな、と不安に思いながら、ひらひらのサテンのスカートにレースがかわいい透かしの上着にした。

控室に入ると、みんな着替えをしており、ごったがえしていた。

ヴィオラのKちゃんは、いつも普段からギャルっぽい、かわいい恰好をしているのだが、すでに本番などは高校までで経験しているらしく、衣装も、豪華で高価そうなサテンのプロっぽい感じのスカートをはいていて、私は、『そうか、これくらい豪華じゃないといけないんだな、、、、いかん、気持ちで負けないためにも、次は頑張って値のはった格好いい衣装にしよう、、、』と、演奏とはちがうところで妙な決心をしていたりした。

演奏する曲の中で、私は、ベートヴェンの交響曲第5番の『運命』はもちろんのことだが、シベリウスの『フィンランディア』が大好きだった。後半のメロディアスになるところが、もう、弾きながら感涙ものなのだ。あーこんな音楽をよく!!!と思いながら毎回練習していた。

さて、開演!!

大学のホールには、8割くらいの入りだった。学生はみんな思い思いに、大学が作ってくれたチラシを配って、家族や友人を呼んだりしていたので、おそらくお客さんの多くは、学生の関係者なのだろうと思った。

私は友人を呼ぼうかな、と思ったが、大学が少し都心から離れていて、わざわざ呼ぶのも申し訳なく、友人たちは呼んでくれたら行くよ~と言ってくれていたのだが、まだまだふがいない私の演奏に、来て来て~、という気にもなれず、誰も呼ばなかった。

コンマスはOくん、チェロパートは、トップがEくん、その隣が沖縄出身のHちゃん、そして第2プルトが私と、演奏補助員の方、第3プルトにA先生が入ってくれていた。

いくらみんなで弾くからと言って、緊張しないかというと、ぜんぜんそうではなく、お客さんの拍手に高揚し、着席したら、なぜか指が震えた。

それもそのはず、最初は、弦楽合奏だけのモーツアルトのディベルティメント(K.137)だったのだ。白目をむきそうなくらい気をつけて、変な音をださないように、飛び出さないように(注:自分だけ先に音をだしてしまうこと)、細心の注意を払った。優美で甘美なモーツアルトのメロディーを弾きながら、気分はドロドロであった。コンマスのOくん、おなじくヴァイオリンのIKちゃん、みんなが必死に複雑なメロディーを弾いているのを台無しにするわけには。。。!!!といった感じだった。長くはない曲なのだが、弾き終わったら、なぜか始まったばかりというのに、かなり疲れてしまった。

次は、スッペ、シベリウス、ときて、最後は『運命』だった。

誰でも聴いたことのあるこの曲、第一楽章と最終楽章は、本当に心躍るというか、興奮するというか、、、、で、そこを走ってしまうのが私の大問題だった。4年間ずっと、師匠のK先生に、カウントのマス目を正しく!!!と口酸っぱく言われ続け、4年してようやく、、、なおった感じだったのだ。

前期は第一楽章だけだったのだが、それでも、この曲の第一楽章は血が沸き立つところが多く、弾いていて幸福感が爆発だったのだ。

曲がはじまり、だんだん佳境にはいり、指揮者にも力がはいり、コンマスOくんが、情熱的に弾いているのを見ながら、ヴィオラのKちゃんが、とてもかっこよく、力強く弾いている。いつもはほんわかな雰囲気の沖縄のHちゃんも、凄い大きな音で弾いている聴いて、私の幸福感がマックスになってしまった。そして、後ろの管楽器、打楽器からの音圧を背中にうけながら、クライマックス!!!

あー本当に音大に来てよかった、、、苦節数年、アフリカの奥地でまともな先生もいない中、頑張って仕事やめて帰国した甲斐があったというもの。コンマスOくん、Eくん、Hちゃん、同期の14人のみんなのおかげだよ、ありがとう、、、!!!

心の中でそう感涙しながら、幕はおりたのであった。

が、、、、終わったあと、楽屋にもどると、A先生がとても怒ったような顔をして私をみているのに気が付いた。おそらく、私は、どこかで、気が付かないままなにか、ミスをしたに違いないのだ、、、なんとなく、どこかで飛び出たような気がするのだ、、、、

結局、A先生は何も言わなかったし、みんなも何も言わなかったけれど、きっと私はミスをしたのである。。。。が、しかし、私も怖くて尋ねることができなかったのである。。。

いまだもって、わからないままだが、なにはともあれ、私には初めての、音大でのオーケストラの演奏会だった。

オーケストラの授業では、楽しいことも、つらいことも多かったが、このあと、2年生、3年生になり、さらにいろんなつらーい体験をするとは、私はまだこの時知らなかったのである。

それでも、やはり、この前期の演奏会は、私の人生の中の、大事な大事な思い出なのだった。


次回につづく!!






チェロで大学院への進学を目指しています。 面白かったら、どうぞ宜しくお願い致します!!有難うございます!!