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第3章【12】木曜のソルフェージュ


注)写真は私が音大入学前にアフリカで働いていた頃の写真です。記事とは関係ないのですが、たくさんあるので、毎回紹介していきます。写真は、小学校のPTA保護者会に集まった村の人々です。(撮影:いちあ) 


1年生の木曜の授業は、1限のソルフェージュ、3限の『古典派の音楽史』、そして、4限、5限、のオーケストラの授業だった。

1年生の頃は体力も気力も充実していたものの、1限はキツく、ソルフェージュの授業は根性だけで通っていた。

ソルフェージュの授業はソルフェージュI、II、III、IV、そしてソルフェージュ研究I、IIというのがあり、3年間みっちりソルフェージュを習うのだが、新曲視唱や、ピアノの単音、和音聴き取り、などなど、勉強になるものばかりだった。

私は、アフリカ滞在中に、現地のピアノの先生にソルフェージュを教えてもらっていたが、現地の人々で、教会の聖歌団に入って歌っているような人々は、子供のころから歌っているため、音感が良く、和声感も良くかった。そして、歌うのは音楽の基礎だから歌うのはやめないんだ、とよく言っていて、私のピアノの先生や、前のほうの記事にでてくる、私にチェロを教えてくれたデービッドは、毎週教会で日曜に聖歌団で歌っていた。そして、そんな私のピアノの先生にソルフェージュを教えてもらっていたのだが、彼らからすると、私の音程はまったくなっておらず、レッスンのたび、あきれられて、お前の音程は『Ridiculous!!!(馬鹿げてる!!!)』と罵倒された。そんなもんだから、私は、日本からコンコーネの教本を持ってきて何度も繰り返してきたのだが、苦手意識はずっと続いた。

日本に帰国し、音大受験の際、日本人のピアノの先生についてソルフェージュを習って、新曲視唱はまあまあだったけれど、やはりどうしても聴音が苦手!!!で、弦楽器コースのわたしとしては、致命的であった、、、

さて、1年生の時のソルフェージュの授業は、『音楽基礎分析』のS先生が同じく担当であったので、一風変わった授業で、面白くはあった。

S先生は、『1限からかわいそうにね~』とか言いながら、相変わらず、アンニュイな感じで毎回教室に入ってきて、そのたびにけだるさを感じたが、一番初めの授業で、ものすごく私たちを励ましてくれ、私はやる気がまんまんであった。

ソルフェージュの授業は、ほとんどすべてのコースの学生が履修するので、クラスが多く、さらに、レベル分けをされていたのだが、(これはどこの音大もそんな感じのようである)1回目の授業で大きな教室で、レベル分けの試験を受け、その結果、自分のクラスが決まる。

私は最後から数えたほうがはやい感じのレベルのクラスであったのだが(弦楽器コースのみんなは、ピアノコースの学生たちと一緒に、一番高いレベルのクラスにいるようだった、、、)S先生は、私のいるクラスに担当になり、さらに、そのクラスが下のほうのレベルであることを知っていて、最初の授業でこう言ったのである。

『君ら、有名なXXXXというオペラ歌手は、実は楽譜が読めなかったんですよ。不利な立場にあっても、一流になれるんですから、ソルフェージュが苦手でも、頑張って。』

これには、私は少々驚いてしまった。芸大を出ているような先生は、できない学生をバカにしていることが多いように感じていたので、S先生が本当に大真面目にそう言っているのがわかって、びっくりしてしまったのである。

聴音が苦手なのは、本当に致命傷で、いまもやり続けているが、S先生のこの一言が、いまもすごく励みになっていることには変わりない。

S先生は、『僕はピアノの聴音なんてやりませんよ。』とおっしゃり、毎回いろんなCDを持ってきて、それを聴かせて、S先生が途中まで手で書かれた楽譜のプリントを配布してくれ、その続きを聴きとって書かせる、という授業をしてくれた。

そうすると、その曲、例えば、交響曲などでは、その作曲家の背景や、曲の構成、なぜ、聴きとったその音がそこにあるのか、簡単な分析まで説明してもらい、従来のソルフェージュのピアノ聴音や、つまらない単旋律の新曲視唱とちがって、毎回とても楽しかったのである。

頑張って前期と後期に通ったが、しかし、成績は散々だった。気長にやるしかないのだ。

でも、面白い授業をしてくれたS先生には、いまだに感謝している。


さて、『古典派の音楽史』は、尾山先生という、50代後半くらいの小柄な女性の先生であったのだが、尾山先生には、3年生で履修した『中世・ルネッサンスの音楽史』でもお世話になった。尾山先生に関しては、またあとの回でお話しすることにします!

次回からの数回の予告ですが、金曜の安藤先生の『室内楽』、そして、平野公崇先生の『即興講座』、『音大でできたお友達』、など、盛りだくさんです。お楽しみに~!!

チェロで大学院への進学を目指しています。 面白かったら、どうぞ宜しくお願い致します!!有難うございます!!