『占星術殺人事件』を読んで

他人から勧められた本を読んで20分一本勝負で感想文を書きます。

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 「代々木セレブ殺人事件」を知っているだろうか。2010年代くらいに、代々木上原だか代々木八幡だかで実際に起きた事件。これは所謂バラバラ殺人というやつで、死体がバラバラになってスーツケースで運ばれた、普通の殺人事件っぽくない(普通の殺人とは?)ちょっとフィクションめいたやつである。
 
 死体がバラバラになっていたりする事件を見るとつい我々は、猟奇的な事件だなと印象を抱くし、グロテスクで犯人は頭がおかしいんじゃないかくらいのことを思いがち。でもそれは、金田一の読みすぎか酒鬼薔薇聖斗の影響を受けすぎだって、そういう話ですよ。我々が占星術殺人事件から学ぶべきなのは。わかりますか。わかりませんね。続けますよ。

 
 バラバラ殺人やメッタ刺しの事件を見ると、だいたいニュースはこんなことを言うんです。「強い恨みを持った者の犯行」だの「猟奇的な愉快犯」だの。しかしこんなコメントは全くのお門違いだと強く主張したいのだ私は。そこにはおそらく、恨みも猟奇もない。あるのは、合理。合理一択。おおよそ「犯人が女だから」なんだよな、という気がする。
 
 女の非力じゃ一撃必殺できないからメッタ刺しになるし、女の力じゃ人間一体運べないからバラバラにするのだ。代々木セレブの加害者は女だった。「スーツケースに入れる」という目的のためだけに死体を切り刻んでるに決まってるだろ。恨みの強さは全く比例しないのだ。だのにそこに殺意の大きさを見出しちゃう感じを見ると、「人を殺そうと思ったことのない」「男」なんだろうなぁとか思っちゃうよな。思っちゃうよ。

 
 ということを踏まえるとだな。占星術殺人事件を見る大興奮ポイントが変わってくる。普通のバラバラ死体事件だったら10回死体を切断しているように見えるのに、死体を順々に入れ替えていることで、実際は切断が5回で済んでいる点だ。もうここ。ここがハイライトよ。わかる? 工数半分なのに、猟奇殺人(に見える事件)としてのクオリティはアップ。生産性向上コンサルでも入れたんかってくらいの改善活動に成功しているんです、時子は。アゾートの見立ては無意味で、実際は非力な女性でも工数削減しながら確実な殺人を行える計画だったという点に、最大の拍手を送ろうじゃありませんか。パチパチ。
 

 興奮気味に語ってしまったが実際自分が人を殺したとしても、バラバラにするのは結構心が折れるだろうなと思ってしまう。血まみれの風呂場とかちょっと無理だし。酔っ払った友人を抱えるたびに「人間って重いな……」というのを実感している。できれば死体は抱えたくない。医者をやっている幼馴染と一晩話し合った結果、カリウム注射したあとできるだけ死体の発見を遅らせる&注射針のあとをごまかすために事前に献血に行ってもらうのが今の所いちばんいい方法だという結論になっているので、私は死体を隠す努力はしないと思います。
 
 

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