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【カタールW杯】幸運を掴むものが勝利を手に入れる~ドーハの奇跡の再来

今朝の試合、皆さんもご覧になりましたでしょうか?
逆転ゴールの瞬間、早朝にもかかわらず、隣の家からも歓声が聞こえました。
今回も試合を振り返っていきたいと思います。

◆起こしてしまった2度目の番狂わせ

言い訳をするわけではないですが、やはり日本の組織が完全に機能していたとか、作戦通りだったとか、そのようには今回も思ってはいません。
少なくとも前半の内容はお世辞にも良いとは言えず、700本ものパスを回され、史上最低のポゼッション率と言われながら、勝ったのは日本でした。

ただ、今回2度目ですから、運だけで勝ったとは言えません。
とはいえ、数々の幸運があって、それを確実にものにしたことが勝利につながったとは言えると思います。

◆戦術とは失敗しないためにあるもの

僕はこれまで、戦術とは、戦いに勝つためにあるものだとばかり思っていたのですが、もしかしたらそれは誤りかもしれません。

有名な学習塾講師の林修先生が以前語っていたのが、
“ 「勝つときはとんでもない偶然が起きる、(以下略)
でもね、負けるやつって意外と共通なんだ」“
という話。

つまり戦術とは、負けないためにその芽をいかにつぶしていくかという作業であり、それによって必ず勝てるとは限らないのだというのが、真実なのかもしれません。

であれば、対戦相手と比較して戦術的に完成度が非常に低くても、試合に勝ってしまう現象に対して納得がいきます。

◆序盤からあまり前に来ないスペイン

日本代表はこの試合初めて最初から3バック(もしくは5バック)で臨みました。
しかも、コスタリカのように雑にラインを下げるのではなく、例えば吉田選手が中盤に引いたモラタ選手を追いかけると、残りの2人のセンターバックも一緒になって上がるなど、布陣をコンパクトに保っていました。

とはいえ、前からのプレスは相変わらず前田選手が単独で追いかけるのみで(少なくとも前半は)、チーム全体で連動してボールを奪いに行く動きは見えませんでした。

一方スペインはいつものように、ゲーム序盤からサイドバックが高い位置に上がってくるのかと思いきや、そうではなくて、パスの回し方も守備的もしくは保守的という言葉がふさわしいような感じだったなと思います。
(積極的にボールを保持することは、必ずしも攻撃的とは言えないので)
ディフェンスラインの4人のうち3人を入れ替えていた影響もあったのか、あるいは無理に勝とうとしなくてもよいと思ったのか、
いずれにしても、前がかかりになってくれた方が、ボールを奪いやすいので、正直いやらしいなあ~と思いながら試合を見ていました。

試合開始後の布陣

そんな中での最初の失点だったので、これは非常に厳しいと思いましたし、ドイツ戦と同様、この時もはっきり言って勝てる見込みをほとんど感じていませんでした。

ですが後半、また同じような展開を迎えるのです。

後半から、久保選手と長友選手に替えて、堂安選手と三苫選手が投入されました。
投入直後、三苫選手はマークすべきニコ・ウィリアムズ選手とあえて距離を置き、リスクを負って攻める姿勢を見せました。

そんな中、もう一人チャンスをうかがっている人物がいました。

◆余裕を見せた一瞬の出来事、伊東選手のチャレンジ

前半もそうでしたが、やはり日本は前線からのプレスが単発で、
なかなかボールを奪うことができていませんでした。

また、前田選手の圧倒的なスピードで激しくプレッシャーをかけても、スペインの守備陣はほとんど慌てることはなく、GKのウナイ・シモン選手が詰められた際もクリアすることもなく、実に冷静にしっかりと繋いでいました。
ところが、その後に落とし穴が待っていました。

ウナイ・シモン選手が左サイドのバルデ選手にボールをつないだその瞬間、本来なら5バックの一角を形成していたはずの伊東選手が、守備を完全に捨てて前線に飛び出していました。
それに驚いたバルデ選手がボールを失い、それが堂安選手に渡り・・・

その時のポジション、そこはまさに堂安ゾーン、
堂安選手が最も得意とする角度からのシュートを放ち、
後半3分、日本が同点に追いつきました。

◆怒涛の5分間

引き分けでもあるいはグループリーグ突破の可能性もあった日本代表ですが、同点に追いついても守りに入るそぶりは全く見せませんでした。

それまで通らなかったパスも通るようになったのは、思いがけない失点にスペイン代表が一瞬動揺したのかもしれません。

同点から3分後、その時はまた訪れます。
試合後、スペイン代表のルイス・エンリケ監督曰く、
“ 「あの5分間は完全に制御不能だった」“そうです。

後半6分、ついに日本代表が逆転します。

正直最初の映像を見た感じ、あれはボールが外に出ていた、つまりノーゴールだと思っています。

この瞬間の画像ばかり出回っていますが・・・

上記の画像の瞬間はあくまで足に触れた瞬間で、
その後もボールは外に向かって進んでいたのをしっかり目にしております。

恐らくスペインの選手もそう思っていたと思いますし、
そうであるからこそ、気持ちを切り替えられず、次第に焦り始めたのだと思うのです。

ただ、運を引き寄せるのも態度や行動がそうさせるものですし、
そういう状況を逃さないのが大事なのかもしれません。

◆怖さのないスペイン代表

その後はスペイン代表がボールを保持する時間が続きますが、
決して日本の攻撃がまったくなかったわけではなく、チャンスと見るやリスクをかけて攻める場面はありました。

スペイン代表がカウンターが得意なチームではないことも影響したかもしれません。日本が攻め込んで、仮に奪われたとしても、そこからの速攻がそこまで怖くないなと感じました。

他会場の結果によってはグループリーグ敗退の可能性もあったので、その焦りもあったのでしょう。
左サイドバックをジョルディ・アルバ選手と交代(本当は温存したかったのでしょうけど)、さらに左ウィングにはアンス・ファティ選手が入りましたが、
そこは、交代で出場した富安選手がしっかりとカバー。
ファティ選手は素晴らしいドリブルを持っていますが、巧みなポジショニングでドリブルをさせません。
日本代表でも、ガナーズでも富安選手のいる右サイドは全く不安がありません。

◆絶対的な選手の不在

トップはモラタ選手に替えて、アセンシオ選手を投入。
彼は右サイドに流れる傾向があるので、同じく交代で右ウィングに入ったフェラン・トーレス選手と共に日本の左サイドを崩す狙いだったのでしょう。

ところが、後半から投入したフェラン・トーレス選手も怖さがまったくない上に、試合から消えている時間の方が多く、
そうなるとスペインの頼みはアセンシオ選手の左足でしたが、
ただ、そこは三苫選手がしっかりと抑えていました。

三苫選手は攻撃の貢献度を評価されがちですが、Abemaの中継で本田選手が言っていたように、幼少期に一対一の練習を何度も繰り返すことで、守備においても強さを発揮できていたようで、この試合でも一対一の守備の貢献度が半端なかったです。

主要大会を三連覇した頃なら、スペインの中盤にシャビやイニエスタがいて、中央を固められてもそれをこじ開ける力があったのですが、現在のチームにはそういう選手がおらず、日本がしっかりと人数をかけて守った時は安心してみられるほどでした。

全体的なレベルは日本とは比べ物にはならないものの、やはりまだ世代交代中のスペインにとってはそこが弱みだったようです。

恐らくそういった理由もあって、サイドから崩そうという策だったのでしょうが、その目論見はあっさりと崩れました。

◆精神面で上回った日本代表

そうなると、あとは気持ちの戦い。
耐える試合であっても気持ちの余裕が感じられました。
(見ている側はヒヤヒヤしていましたが・・・)

一番印象的だったのは、先制されてビハインドの場面も、逆転して守りに張った場面も、選手たちの顔に自信がうかがえたことです。
以前の日本代表の選手たちなら、あからさまに動揺していたはずです。

監督の中には、1からすべてを管理して、チームを引っ張っていくタイプもいれば、ほとんどを選手に任せて、選手たちがのびのびプレーできるようにサポートする事に長けている人もいます。

森保さんは名監督ではないかもしれませんが、選手の士気を高め、自信を与える、モチベーターとしての能力は非常に高いのかもしれません。

◆勝つためには運と勇気が必要

今回改めて思い知らされたのは、勝つために必要なのは運と勇気だということです。

もちろん戦術や戦略は絶対必要だし、
世界トップレベルのチームは皆それを持っています。
ただ、そこにいるのは人であり、人はチェスのコマのように完全にコントロールできるものではありません。
サッカーはミスのスポーツと言われるように、人は必ずミスをするので、そこで失点が生まれるのです。

大事なのはそう言った幸運を拾う事、それを逃さない事です。

そしてそのような幸運は、勇気を持ったものだけに与えられるのかもしれません。
もし、最初の同点のシーンで伊東選手がリスクを冒して飛び出さなかったら、同点になっていなかったでしょう。

逆転弾の際も、もしも三苫選手がリスクを冒さずにあの位置に飛び出していなかったら、微妙な判定に助けられたとはいえ、ゴールライン際であのようにボールに追いつくことはなかったでしょう。

◆次の試合でもチャンスをつかめるかどうか

次の試合でも、同様にチャンスをものにできるかどうかは、
やはりなのかもしれません。

コスタリカ戦はチーム全体が明らかに消極的で、
そのような状態でチャンスがあったとしても、ものにはできないのでしょう。

つまり、次のクロアチア戦でも勝利をものにしたいなら、
勇気をもってチャンスを掴みに行く姿勢を見せるべきなのです。

そうすれば、幸運の女神は3度目も振り返ってくれるはずです。




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