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選手に頼りすぎている~現時点の日本代表の限界

昨日、サッカーアジアカップのベスト8、日本代表とイラン代表の試合が行われ、日本代表は1対2でイラン代表に敗れました。
森保監督が就任して以来、最悪の試合内容だったと思います。

それでは、この試合について振り返ってみようと思います。


◆伊東純也選手について

その前にまず、伊東選手についても言及しなければなりません。
彼の離脱がこの試合に影響があったかなかったかと言えば、無かったとは言えないと思います。
少なからず残った選手たちに精神的な動揺はあったでしょう。
ただ、伊東選手がいなかったから負けたというよりは、選手の質に頼ったサッカーをしていたところに、選手の選択肢が減って質が落ちて負けた、そもそも質に頼り過ぎだったから、と言うだけのような気がします。
それに加えて、後述しますが、確かに彼は日本代表の強みではあったものの、チームとしてそれを生かす形を作れていないので、どちらにせよ変わらないと思います。

ちなみに、彼が実際有罪なのか無実なのかは知りませんが、どちらにせよ今後の復帰はかなり難しいでしょう。
たとえ無実だとしても、彼のキャリアに大きく穴が開いたことは事実です。少なくとも、日本においては疑惑が出た時点で有罪と同じになってしまいます。

とはいえ、ここでチームから離脱させた協会側の判断が良かったのか悪かったのかはわかりません。(堂安選手のXの投稿を見る限りでは、ほかの選手たちはチームに残そうとしたようです)
さらに言うと、田嶋会長の会見には、スポンサーへの配慮が見え隠れしていました。

◆イラン戦の結果について

試合が終わっていますので、冒頭からあえて言わせてもらいますが、試合に負けたのは相手が強かったからです。そこは勘違いしてはいけません。
ただ、それでも相手の長所をつぶすことはできますし、その上で自分たちの長所を生かすこともできます。
ですが、何も策を講じず、ただぶつかるだけなら力負けします。
今回はそういう試合でした。

これまで何度も記事に書いているので、もう言いたくもないのですが、攻守において最低限の約束事がない為チームとしての連動性がなく、毎回同じ問題が起きているにも関わらず未だ対策を講じていない以上は、選手個人個人が瞬間的なスーパープレーを見せて状況を打開する、これしか勝つ方法はありません。
以前の”戦術は三苫”発言然り、森保さん自身の考えがそうであって、しかも代表監督に就任してもう何年もたっているわけですから、いまさら変わる事はありません。

僕のような素人がこれ以上言っても、ただの頭でっかちにしか思われませんし、どうしようもない事をこれ以上ウダウダ言っていても仕方がないので、これっきりにしたいです。

◆前半うまくいっているように見えた理由

それでも前半序盤は日本のペースであるように見えました。
それはなぜかと言えば、相手がある程度パスを細かくつないでくれていた事と、相手が序盤はあまりプレスを強くかけてこなかった為、ディフェンスラインからビルドアップの際にセンターバックの富安、板倉選手が顔を上げる余裕があったからです。
加えて、左サイドバックの伊藤選手のサイドに張りすぎる癖が序盤はあまり見られず、ペナルティエリアの幅に収まっており、結果的にポゼッションは安定していて、相手チーム全体を押し込んでいました。

とはいえ、相手も日本に対して対策を講じていなかったわけではなく、まあ主力選手の出場停止もあったからなのかもしれませんが、これまでと違いフォーメーションを4-2-3-1から4-1-4-1に変え、イランのサイドバックとウィングの選手に対し、日本の選手がこれまでの試合と同様に3対2の数的優位を作ろうとしてくるところに、イランのセンターバックがガンガン前にプレスをかけてきて、それをアンカーの選手が埋めるようなやり方で、攻撃を防ぎにかかっていました。
ただその分、1対1になったときにスペースが空きやすくなっており、日本代表の1点目はそこで守田選手がドリブルを仕掛けた事により、運も味方して、得点に繋がったわけです。

◆決して良い戦い方ではなかった

とはいえ、失点後にイラン側のプレッシャーも強くなり、なかなかボールが繋がらなくなります。
遠藤選手がフリーになる事が多かったのですが、他の選手がマークされてパスの出し先が無く、とにかくワンタッチで蹴るしかなくなる。
結果、互いに蹴り合いになり、ボールが落ち着きません。

左ウィングの先発に前田大善選手を起用したことにより、彼が縦横無尽に走り回ってボールを回収したところまでは良かったのですが、その後のボールを繋ぐロジックが無く、再度ボールを奪われます。
加えて、チームとして前線から連動して守備できていたとは言い難く、トップで上田、久保両選手がディフェンスラインにプレッシャーをかけても、相手のアンカーが下がって3バック気味になる事で、回避されてしまう。
そこから相手がロングボールを多用するようになると、前線には相手選手が5人も上がっていて、そのままキープされたり、サイドに展開され、ディフェンスラインがどんどんペナルティエリア近くまで下がってしまう。
ボールを外にクリアしても、今度はロングスローで崩しにかかってくる。
そういった形で何度もピンチを招く場面が多く見られました。

ディフェンスラインからすれば、もっとラインを上げたいと思うところですが、前線のプレスが効いておらず、かつチーム全体が連動できていない為、ただただ布陣が間延びし、ディフェンスラインが4対5の数的優位を作られる。
板倉選手のミスが目立ったのはそのせいです。
早い時間にイエローカードを貰ったことも、彼をナーバスにさせてしまいました。

それをカバーするために中盤の選手が下がってくると、今度はピッチの中央がスカスカになり、ロングボールをはじき返しても簡単に拾われ、相手にひたすら殴られ続ける展開になっていきます。

◆後半さらにプレッシャーが強くなる

後半はイランの選手がガンガンプレスに来て、日本の4バックから中央の久保選手などにボールが繋ぎにくくなります。
だったらと前田、堂安選手の両ウィングに渡そうとしても、サイドバックのポジションがサイドに張りすぎていたり、中途半端だったりして、互いの距離感や位置関係が悪い為、ウィングの選手が後ろを向いた形でしかボールを貰う事ができませんし、相手選手もがつがつ競り合ってくるので、そこでボールが奪われてしまう。
加えて、左サイドバックの伊藤選手がボールを受けるときに、自分がパスを受ける準備ができているかだけでなく、プレスに来る相手選手との距離感を計れていない事で、パスを受けても戻さなくてはならず、三苫選手に繋げないシーンが多く見られました。

一方、久保選手も6番の選手に徹底マークをされていましたが、そこは打開策を見出して、あえて中央でなく引いたサイドに流れて、マークが若干離れた時にボールを貰って、中にカットインしようと試みていたのですが、そこでも徹底マークに遭い、ボールを持つ事ができません。
この試合の主審があまり笛を吹かないタイプで、ファウルを貰えない事も影響していました。

そうしてまたボール奪われて、殴られ続けます。

◆殴り合いをしてはいけない相手だった

早くも後半10分に耐えきれず、失点します。

この時もディフェンスラインで数的優位を作られた上で、アズムン選手のポストプレーから裏に飛び出したモヘビ選手へとボールが渡り、シュートを決められました。
イランの徹底した戦略が功を奏しました

殴り合うにはパンチが強すぎる相手だったと思います。
これまでの相手ならギリギリ防ぐことはできても、アジアトップレベルの戦いになると、無策では守り切れません。
ハードパンチャーのボクサーに対してノーガードで撃ち合いに行くようなものです。

それでも選手の質で勝ててしまっていたのがワールドカップ、そうでなかったのが今回のアジアカップ、というだけでしょう。

◆結果的に悪手になった交代策

ここでまたしても森保監督は悪手を打ってしまいます。
いや、交代で出た選手自体は問題なかったとしても、修正がないままでの選手交代が悪手になったと言った方が正しいかもしれません。

先ほどのサイドバックのポジショニング問題を解決しないまま、三苫選手をピッチに送り出したことで、ほとんど三苫選手にボールが渡らず、状況打開に至りません。
ボールを持っても4バックが幅を作っているために、サイドバックの選手に素早く寄せられて間合いを作れず、そこにウィングの選手も戻ってきて、1対2の状態で挟まれる。
無理に抜こうとして相手に引っかかってスローインになった場面、森保監督は「OK」と気にしてもいなかったのはおかしな光景でした。

久保選手を下げて南野選手投入したところでボールが一向に出てこなかったのも、ディフェンスラインからのビルドアップの問題が解決していないからであって、交代策に効果が見られないのは必然的です。
さらに久保選手の上下動によって、多少なりとボールが循環できていたところが、交代によってそれも無くなりました。
そもそも2人のタイプが違うので、同じ役割を期待することはできず、久保選手が降りてきて繋ぎ役になっていたのも、チームとしてそういう決め事があるわけではなく、久保選手自身が気を利かせていただけなので、人が変わると機能不全に陥るリスクが生じます。

つまり、ただ人を変えて、あとは何とかしてくれ、ではなく、交代選手がどのように動けば状況が改善されるかまで考える必要があるのです。

また、板倉選手が試合途中にケガしていたように見えたので、早めに後退させた方がよかったかもしれません。
とはいえ、板倉選手と同等のパフォーマンスを発揮できる代わりの選手がいたかと言えば、難しいですが。

そうして、一方的に殴られ続ける展開は変わらないまま、後半ロスタイムに悲劇が訪れます。

◆悪い流れを変えられなかった

前述のケガの問題もあって、競り合いの際にヘディングが上手くできなかったのかもしれません。
板倉選手がボールをスカしてしまったところに出てきた相手選手にボールをかっ攫われ、その際に足を引っかけてしまって笛を吹かれました。

その後、浅野、細谷両選手を投入してパワープレーを試みるも、時すでに遅し。
ベスト8で戦うには無策と言われても仕方がない試合内容でした。
したがって、選手を責める事はできないと思っています。

強いて言うならば、中山選手ではなく伊藤選手が左サイドバックに起用されたのが驚きでしたが、どちらにせよポジションの問題を改善しない限り、似たような状況は起こり得ます。

◆森保監督を解任すべき?

じゃあ、監督を解任すればいいのかというと、それは違います。
今の代表の問題点を指摘する事も出来ない、強い言い方をすれば、見る目がない人たちがまた次の監督を選んでしまう事で、むしろ現代表チームの良いところ、リスク管理ができていてチーム内に目立った不和が見られず、選手の意見を尊重するのでモチベーションが上がる、まず守備をしっかりできる選手が選ばれている、といった部分まで無くなってしまう可能性もあるからです。

それに結局は、前々回や前回のワールドカップの時のように、たまたま強豪国に勝ってしまう事で、いつも問題が棚上げになって、また同じことの繰り返しになる、これはどの監督を選ぼうが変わる事はないと思います。

今の時点で無理矢理どこかからいい監督を連れてこようとするよりも、今後は良い監督だけが選ばれるような構造に日本代表をしていく、国内で良い監督が生まれる環境を作る事だったり、監督をきちんと評価できる体制を整える事の方が先だと思います。

4年に1度しか集まってこないような人たちの声が大衆の意見とされて、監督の続投が決まってしまうようでは、それも難しいのでしょうが。
そういう意味では、現時点でその国のレベルにあった監督が選ばれているだけなんだと思います。

◆今後の日本代表

アジアカップは終わりましたが、今度はワールドカップ予選が待っています。
こんなところで足踏みしているようでは、予選敗退すらあり得ます。
試合後に選手の中からも、これまでの戦い方に疑問の声が上がっており、

監督の進退はともかく、何かしらのテコ入れをしないといけないでしょう。

残された時間はあまりありません。


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