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昔々あるところに焼き鳥と本とウェルビーイングがありました

「あなたは、いま幸せですか?」

そう聞かれたら迷わず「幸せ!!!」とこたえる。なぜならついさきほど焼き鳥屋さんで本をたのしみ、風呂に入ってさっぱりしたところだからだ。

童話『にんげんっていいな』には、おいしいおやつにほかほかごはん・みんなでなかよくぽちゃぽちゃおふろ・あったかいふとんで眠るんだろな、とあるが、あとはそれに焼き鳥と本さえ加えられたら文句ないです

幸せ、ウェルビーイングとはいったい何なのか。焼き鳥屋さんで本を読んだことをふりかえりつつ、ちょっとだけかんがえてみたい。


焼き鳥屋さんで読んだ本

せっかく大好きな焼き鳥屋さんで読むのだから、日本文化と幸福について書かれた本がいいだろうと思い、石川善樹さんのこの本をセレクト。

せせり・み・ねぎみ・せぎも・さんかくを注文し、本をひらく。
(ちなみに開店17時にすぐ入店し、1時間ほどひとりでした)

日本文化の『ゼロ』と『奥』

浦島太郎が助けた亀がつれていったのは竜宮城。乙姫様と宴会をたのしんで、もらった箱をかえって開けると急激に老化する、というモヤつくお話。

日本的ウェルビーイングの原型は「ゼロに戻る」にあると考えています。それが日本人にとっては長らく「幸せ」のかたちだったのではないでしょうか。

むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました

西洋だとシンデレラのように、マイナスからゼロを通過してプラスになるまでストーリーが進むのに、日本はそうじゃない。ごはんを食べて、お風呂に入って、あったかいふとんで眠るという『ゼロ』の大切さを、私たちはすこし忘れてしまっている。

西洋の「上」を目指す思考とは対象的に、日本の思想・文化は古来ずっと「奥」に重きを置いてきた。「もっと上へ」ではなく「さらに奥へ」の精神性が日本らしさである。

むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました

奥の手、奥ゆかしい、奥の細道。何があるかはわからない、深遠なものを愛でて大事にしてきた日本人。写真や映像ですぐに伝わるエンタメもいいけれど、伝わりにくく、奥の奥に入っていかないとわからないことにこそ本当の癒やしや幸福があるはず


焼き鳥屋さんとウェルビーイング

次に注文したのはさんかく・だんご・手羽元に馬力とせせりポン酢。

やきとり美味しい。本たのしい。しあわせ

焼き鳥はたべると串だけ(手羽元は骨だけ)がのこる。鳥を串打ちする前の『ゼロ』にもどっていった串。そこには焼き鳥がついさっきまであった余韻が残る。なんとも侘び寂びのある、日本らしい食後の風景だろうか

そういえば「せぎも」とは一体なんだろう。背中に肝なんてないだろうけど。見た目は黒みがかっていて、味はレバーのようにコクがある。濃厚でクセになる。焼き鳥は『奥』が深い。100円200円でまだ知らない世界を見せてくれる。

他にもいくつも本に書いてあることと焼き鳥屋さんの共通点がみつかった。

  • 手放すことからウェルビーイングは始まる(たべた串を手放さないと次の焼き鳥はたべられない)

  • 存在感がないことに存在意義がある(ぼっちでも居心地が悪くない)

  • 他人には言えない秘密を持ってワクワクさせると人生の満足度が上がる(たまには家族に内緒で焼き鳥屋にいくといい)

つまり、こういうことなのではないだろうか。

焼き鳥屋さんこそ日本のウェルビーイングの聖地(竜宮城?)

・・・・そんなこといったら石川善樹さんに怒られるだろうか。


本を焼き鳥屋さんで読むこと

最後に、焼き鳥屋さんで本を読んでいて気がついたことを記しておきたい。(ただし店による)

  • 開店すぐ1時間はひとりで来るお客さんが多い

  • 焼き場近くにすわっても、1時間くらいなら本に匂いはつかない

  • Bling-Bang-Bang-Bornがかかると本に集中できない

ちなみに焼き鳥屋さんの場所はこちらです。
17時から開いてます。せせりポン酢さいこうでした!ごちそうさまです!