ゆきみち

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  • 東京うろうろ

    東京をうろうろする記事です。

最近の記事

「他人のキス」さよなら大学生(13)

はじめて他人のキスをみた。それは一瞬で、2人の秘密だったものを、うっかり目撃してしまった。金曜日の夜、東京の小さな電車で、大人2人が無邪気に見つめ合っていた。 東京のローカル線は、住宅街から終点駅に向かうにつれて、街明かりに包まれる。ゆっくりと進むので、メリーゴーランドみたいだなと思う。 なんてことない、ただの帰り道だ。好きな子を家に呼んでいて、帰る時間になったので、見送りで一緒に乗っていた。車内に適当に目線をやりながらとりとめもない話を聞いていたら、隅のほうで、他人の秘

    • 一瞬ちょっと私生活のアクシデントがあったので更新継続きびいかと思ったんですが、秒で大丈夫になったため再開します

      • 「夜道」さよなら大学生(12)

        深夜1時。いきなり欲しいものができて、コンビニまで歩いた。静かな夜に、住み慣れた街を愛でる。 引っ越してきて、もう3年になる。ここに住んで、前より人が好きになった。みんな、赤の他人だけど。 日中は、子どもの溜まり場になっている。 よく笑い声が聴こえて、前より子どもが好きになった。スーパーの買い出し帰りみたいな、手をつないで歩くカップルもよく見る。愛っていいなと思った。ご老人も元気なようで、道端で楽しそうに歓談したり、公園で晩酌していて、なんか憧れた。地味だけど、優しい場所

        • 「自慢」さよなら大学生(11)

          「学生新聞やってました!書くの得意です!」 ある新聞社の面接で、絶叫して、祈られた。自信はときに、身を滅ぼす。 「いろいろ努力されてるんですね」 zoomごしに微笑んだ、現場記者。どう思われていたのか…。考えはじめると、恥ずかしさに胸がムズムズしてしまう。 学生の自慢話。 それは、知らない子どもに話しかけられた気持ちに似ている。相手がプロであれば、なおさらだ。「かわいいやつめ」と、思ってほしいけど…。それだけでは、世の中は渡れない。 最近どうも、この件を思い出す。就活を

        「他人のキス」さよなら大学生(13)

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          2本

        記事

          「ジャスミンちゃん」さよなら大学生(10)

          入学式を終えた、3年前の夜。リクルートスーツの2人が、東横線に飛び乗った。行き先は横浜中華街、占いの館。失恋後にしか、できない勢いがある。 私の大学生活は、失恋から始まった。 入学目前に、初めての彼氏に振られた。突然だった。実家の布団に引きこもって、目を腫らしたまま当日を迎えた。 新築の日吉記念館は、頂上に慶應義塾の三色旗をなびかせた。 数千人の新入生は、誇りとか、期待とか、輝かしい感情を抱いたと思う。そこで私と、友だちのAくんは、下を向いて、失笑して、傷を舐め合っていた

          「ジャスミンちゃん」さよなら大学生(10)

          「春風」さよなら大学生(9)

          風は目に見えない。それでも確かに存在して、なでたり、ゆさぶったり、突き動かしたりして、現実に作用する。人間の心みたいだ。 なにもない、からっぽな一日だった。 毛布を抱きしめて、窓の外を見ていた。曇りががった、平坦な白い街。 もうろうとして、風の音を聞いていた。見かけによらず、激しい風が吹いていた。 吹き飛ばされてしまいそうな。(367日)

          「春風」さよなら大学生(9)

          「隣の芝」さよなら大学生(8)

          芝生に寝転んで、空を眺めた。心地よさに身をまかせて、目を閉じて、ゆっくりと開くと、長々とした飛行機雲が広がっていた。 知らない大学に行くのは楽しい。 他大学の友だちに会って、キャンパスを案内してもらった。都心から少し離れたところで、駅からの直通バスを降りると、うぐいすの声が聞こえてきた。 「ここでみんな、お昼寝とかするんだよ」 かつては滑走路だったという並木通りをしばらく進むと、芝生の広場があった。たしかに見ると、教員らしいスーツ姿の男性がゆるやかな傾斜に寝転んで、眠って

          「隣の芝」さよなら大学生(8)

          「小規模な世界」さよなら大学生(7)

          毎日、ネコの餌みたいな食事をしている。安いシーチキンに、安いなにかを混ぜて食べる。1食100円以下。生活の全てに、こういうノリが染み付いている。 「納豆以外 購入禁止」 かつて実家に帰ったとき、居間にこんな張り出しがあってぎょっとした。A4用紙に太い油性ペンで、母が手書きしたらしい。尋ねたら、「先月はお金が厳しかったから」と笑っていた。親子の血は譲れない。 ひとの海外旅行を見ると、「お金があっていいな」と思う。 仲良くない人から海外絡みの話をされれば、「実は日本から出た

          「小規模な世界」さよなら大学生(7)

          「書けない」さよなら大学生(6)

          大学で、とくに好きだった講義がある。記者出身の先生が作文を添削するもので、毎週の楽しみにしていた。 「こんな文章、ぜんぜんダメ。まったく話にならない」 そこで、先生が言い放った言葉だ。 学生に対して、ではない。自身の記事に対してだ。 「記者には、記事を出す責任がある」 「調子が悪いときもあるよ。でも、関係ない」 「それでも書いて、世に出さなきゃいけないんだ」 創作をするには、少なからずプライドがいる。 良いものを作りたいと思っている。良いものを作れるのが、自分だと思っ

          「書けない」さよなら大学生(6)

          「子鹿の愛」さよなら大学生(5)

          「好きだよ」と言われて、「ありがとう」と言う人がいる。かつての私だ。 3年前、18時の御茶ノ水。神田川沿いに金色のイルミネーションが輝いて、美しさって、なんの救いにもならないと知った。別れ話に、声を殺して泣いていた。はじめての彼氏は、半年だった。 「だってきみ、おれにはなんにも与えてくれなかったじゃん」 「一方通行ってさー しんどいんだわ」 「わかる? わかんないかな」 つい先週にも、お花見の約束をして「よっしゃ~」なんて笑っていた声が。 いつもご機嫌で、歌うようにくだ

          「子鹿の愛」さよなら大学生(5)

          「ずっと」さよなら大学生(4)

          ただ一瞬が、一生になることもある。たぶん今日は、そんな日だった。 22時のコード・ダジュール。ワインで潰れていた。 卒業式を終えた、夜の日吉。祝う人と祝われる人がいつまでも歌い続けるところを、寝そべりながら眺めていた。 時代を越えた名曲は、よく知らなくても知っている。 もうろうとしながら愛しい人たちの大声・ダンス・ミュージックを聴いたとき、ああ、いまって本当に幸せだなと、湧き出るように思ったのだった。 「自分の人生を生きろ」なんて、よく言われるものだ。この人生の、主役は

          「ずっと」さよなら大学生(4)

          「春がくる」さよなら大学生(3)

          人生に、正解はない。けれど、「自分がそう信じること」は、きっとある。22歳、進路の話だ。 ゼミの友人から、学期が終わって以来の連絡があった。「後輩が入るから、なにか準備しよう」ということだった。春休み、すっかり忘れていたので助かった。 「そういえば、進路 決めました」 それから、雑談。 冬がすぎて、春になる。その間、ずっと悩んでいた。それでも腹をくくるのは、やってみれば呆気なかった。 「○○?」 1秒もない早さで、社名を当てられる。やっぱり、わかるものなのか。 「

          「春がくる」さよなら大学生(3)

          「ひとり悲観」さよなら大学生(2)

          足が冷えると思ったら、寂しかったのでした。 ここ数日、ずっと1人だったし。毛布を抱いても、心には冷たい風が吹き込みます。 深夜0時。明かりを消して、眠るために目を閉じる。 当たりまえに大好きな子を思い出すけど、そのうちに心が(嫌われてるのでは?)みたいな不安で埋め尽くされる。急にLINEを開いて、会話がリアクションスタンプで終わってるから絶望するとか。 ちょっとした一言とか、態度の変化とか、些細なことを思い出して、その1つ1つが裏付けになって、嫌われているのがもう事実とし

          「ひとり悲観」さよなら大学生(2)

          「余命1年」さよなら大学生(1)

          余命1年。布団を抱きながら、ふと思い浮かんだ。平日の昼間に、目覚ましもかけず、いつまでもベッドのなかにいる。 なにせ、私は大学生だ。寝たいときまで寝込んだって、二度寝、三度寝、四度寝、何度寝たっていい。誰も文句は言うまい。 起きたくなったら、起き上がる。スマホを見たら、11時だった。 冷蔵庫からヨーグルトを取り出して、グラノーラをかける。窓の外は曇っている。この街でも、今ごろ多くの人が働いているだろうが、私はただ、グラノーラにハチミツを混ぜて、ゆっくりと食べている。 け

          「余命1年」さよなら大学生(1)

          小春日和の多摩川沿いを歩く。天国って意外と近所にあったんだな

          天気の良い日曜日なので、多摩川に行ってみました。 天国って、意外と近所にあったんだなって思ったんです。 今日は春日和ぶらぶら歩いてたら、とても天気が良いことに気が付きました。 今日は晴れた日曜日です。日差しはあたたかい。 せっかくなので、多摩川の河川敷に行ってみることに。 実は今まで、目黒線の車窓から眺めるだけで歩いたことはなかったんです。 Googleマップを頼りに住宅街の中を歩きます。 マンションに囲まれた坂道を登っていきました。 この先を登りきると河川敷らしい。

          小春日和の多摩川沿いを歩く。天国って意外と近所にあったんだな

          「ゆりかもめ」最初から最後まで乗ってみた。 海に浮かぶ理想郷のちぐはぐ

          埋立地には、独特の空気がある。 計画的に作られた完全な世界でしか流れない時間がある。 雑多な街に飽きたら、整然とした埋立地を見に行こう。 新橋から「ゆりかもめ」で豊洲まで乗って、埋立地の空気を存分に吸ってみました。 新橋から「ゆりかもめ」へ新橋駅のゆりかもめホームに来ました。 このホームも、近未来な感じがしてゾクゾクします。 そもそも、自動運転だし。運転手、いないんですよ。 終点の豊洲まで乗ります。 やっぱり、この辺りは東京らしい景色が存分に見れるので楽しいです。

          「ゆりかもめ」最初から最後まで乗ってみた。 海に浮かぶ理想郷のちぐはぐ