よくわからない講演をした方がウケた話 【World IA Day 2017 KYOTO】

「IAについて久しぶりに話してみないか?」と声をかけてもらって、先日京都にて「World IA Day 2017 KYOTO - 世界19カ国65ヶ所で開催される情報アーキテクチャのミートアップイベント」で話してきた。

「IA = 情報アーキテクチャ、Information Architecture」はウェブサイトの情報整理術として知られるが、誤解されていると思う。

本当に面白いのは、次のように「同じものが違って見える」という謎を解いていくところだ。少なくとも私はそう習った。

私がセピエント社のアメリカ人からIAを習ったのは2000年。セピエントは当時IAのメッカで、世界中のIA資料が閲覧できた。そこで驚いたのはどの案件でも「人がどう物を見るのか」を極めて重要な事として調べていたことだ。

星座ひとつをとっても、見え方は様々だ。マニアックなカーコレクターと、家から近所に中古屋で適当な車を買おう、と思っている人では車は違って見えている。MR(製薬企業の営業)から見たクスリと、医者から見たクスリは違って見えている。

じゃあ「どのように違って見えているのか?」を調査して見える化するのがIAの上流行程で、それを元に情報を整理するのが下流行程だ。後者の方がわかりやすいが、前者の方が面白いんだけどあまり日本では語られてない。

昔作ったバカ日本地図もIAワークだ。IA仕事の合間に遊びでやっていた。

面白いのは、同じものが違って見える「A≠A」のときに「笑い」が起こる。

これに気づけば、どんどんとコンテンツを作っていけるようになる。

さらにA≠Aは違和感を生むので、それで「謎」を作ってしまえば、ストーリーに引き込める。

そして、世界で最も使われてるストーリーは次だ。

ここまでは論理的に説明がつくので、通常の講演ならここまでしか話さないけど、今回は「京都らしいウェブコンテンツとは?」というテーマと、アットホームな会だったため、普段なら話さないことも話すとウケた。

京都は禅のメッカでもあるから、禅の十牛図のストーリーはハリウッドのさらに先をいっているという話をした。

十牛図は、禅僧の修行を10段階に分けて描いたものだ。牛を無くした少年が牛を捕まえ、家に帰っていく。面白いことに、ここまでの展開はハリウッドのストーリー構成に非常に似ている。

しかしその先の「7. 忘牛在人」となると、牛は見えなくなってしまう。ハリウッドでいえば、敵キャラがいない状態なのでコンテンツが成立しない。しかしここに、今後の表現の可能性があるのではないか?という話をした。

どういう話かは興味がある方だけあとで見てもらえればと思うけど、面白かったのは、このよくわからない話になったとたん、観客の集中度が高まったのを感じたことだ。

講演が終わったあと、話を聞いてみると「よくわからない部分」の方が好評だった。思い出したのは、アメリカで空手を修行している時に思った、「なぜアメリカ人は空手が好きなのか?」という話だ。

とある方が言っていて印象的だったのは、
「空手はよく分からないからだろう。例えば柔道はわかりやすいからアメリカでは流行っていない。アメリカ人は好奇心が強いから、空手の型とか黙想とかよくわからない部分を喜ぶんだ」という話だった。

分かりやすいように作られたモノの方が満足度が下がってしまう。講演でも、これから3割くらいはよくわからない話をしよう、と思った。

森内さん、井登さん、関係者のみなさんありがとうございました。


※講演のよくわからない部分「7. 忘牛在人」以降はどんなコンテンツになるか、ということについては興味のある方だけご覧ください。

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