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【後編】オコリンボウのジジイに‘’圧倒的真顔‘’で睨みつけられた親子を救ったのは…満を持した…アレだった

「どうしてちゃんとできないんだ!」

「お前は一体、何を考えているんだ!」

上司がデスクに部下を呼びつけて
怒りに満ちた般若面はんにゃづら怒鳴どなりつける。

きっと多くの職場の
あるあるであろう。

職場の上司だけでない。

世の中には自分のことを‘’力のある人間‘’に見せたがる人がいて、思わぬ場所でその力を誇示こじしようとするのだ。

「あの人はすごい」
と言ってもらいたい。
そう認めてもらいたい。認めてもらうためなら、役職という権威だって使うし、怒りという暴力的な手段だってためらわない。

鼻毛処理の‘’圧倒的真顔‘’ジジイもそう。
陰茎丸出しでハゲ頭にタオルをのせたジジイもそう。

低俗な欲望の権化ごんげ

群れの中で頂点に立ちたいと思い自分の胸をポンポンと叩いている野生のゴリラと発想のレベルが全く同じである。

人は‘’悪事を正そう‘’として大音量で怒るのではない。

‘’怒りの力で相手を屈服させる‘’
という真の目的をかなえるため、カッと心に火を点けるのだ。

鼻毛処理した‘’圧倒的真顔‘’ジジイと自転車親子の結末は…

先に謝りたい。

この‘’後編‘’。
1週間も引っ張る内容ではなかった笑
決してないのだ。

普段、からみのないフォロワーさんからも‘’続きが気になる‘’との愛の告白をして頂き、
えらいこっちゃ、と、
改めてよく見直してみてみたところ、期待だけをもたせる終わり方をしてしまったと猛省した。

たいへん申し訳ない。

みなさま、期待値のハードルを
グググぐぐぅぅぅうわぁぁぁぁん、
っと下げて頂きたい。

そう。
うん、もう1段階。
下げて頂きたい。

…うん…では…はい……
そろそろ……

後編です。

【前編はこちら】


「知らなかったのです。すみません。その先(300mくらい先)から上がりますから。」

バリアフリーの傾斜進入口をゆびさしてバツが悪そうに自転車パパが言った。

何度も頭をペコリとさせながら低姿勢で謝っている。

が、ジジイは逃がさなかった。
‘’立ち去る‘’と言っているのに、それでも許さない。振りかざした“正義の鉄拳“をもはや止めることができないのだろう。

「常識的に危ないってわからんのか!知ってる、知ってないの話じゃない!」

イキってた。
イキりすぎてジジイの唾液だえきがそこら中に飛び散っていた。

ストレス、コロナ、承認欲求、性欲、プライド、支配欲、おっパブといった、彼を構築する要素は全て唾液だえきに凝縮され、それは未曾有みぞうのエネルギー体としてただ存在し、

口から噴射される唾液で産声うぶごえをあげ、
頭角とうかくを表し、
そして周囲を圧倒した。

……ん?

…あれ?

しばらくするとボクは何やら異変に気づいた。

はて…。

近くで‘’玉ねぎ‘’が栽培されているのだろうか…

初夏の心地良いそよ風に吹かれて、
さっきから‘’腐った玉ねぎ‘’のようなニオイが信じがたいレベルでボクの鼻に流れついてくる。

それも継続的ではない。

腐った玉ねぎと、澄んだ川のニオイは
不定期に強弱の協奏曲とし、ボクの鼻の粘膜ねんまくをビブラートに刺激してくるのだ。

ふとボクは気になって、
その規則性を見出そうとした。

ジジイが怒鳴る。
すると、きまって2秒後に腐った玉ねぎ。
そのまま3秒間ホールドし、 
おぇぇっ、、っと。
その2秒後に澄んだ川のニオイ。
また怒鳴る。
すると2秒後に腐った玉ねぎ。
おぇぇっ、、っと。

そうか。

ここまでの研究結果を考慮し、改めて正しい解釈を以下に示したいと思う。

腐った玉ねぎ臭の発生源はジジイの口元でありジジイは歯周病と断定して間違いない。
ジジイが怒鳴った瞬間に、未曾有の悪臭が拡散され、空気に希釈されながらもボクの鼻にまでたどり着く。
それをすずしげな顔してボクはぐ。

おぇぇっ、、っと。

さすがにそのおぞましいにおいに堪え兼ね、
ボクには可及的速かきゅうてきすみやかな対応が求められた。
取り急ぎ自分の鼻の穴の下に人差し指の稼働域かどういきをグッと押し付け両穴をふさいだ。

鼻の穴の吸引力に人差し指が引っ張られる形で完全に鼻穴がキュッとふさがれると、ボクは少しだけ呼吸がしづらくなり、慌てて口呼吸に変えた。

よし、これで臭くなくなった。

ジジイの説法をフンフンとうなずきながら新鮮な玉ねぎ畑に思いを馳せ、ただただ妄想を膨らませてパラレルワールドで一人、腐った玉ねぎの存在から解き放たれたことに大喜びしていた。

…それにしてもこの記事。

前編に続いて、何度も何度も本題とはまったく関係のないジジイの描写と玉ねぎ畑の妄想を繰り返してしまい、話が一向に進もうとしない。

たいへん申し訳ない。

このままでは、また‘’次回に続く‘’になる。先を急ごう

怒りというのは性質上、他者へ多大なる不快感を与え、存在だけで辺り一面に険悪なムードを醸成じょうせいする。

さっきまでワイキャイと騒々そうぞうしかった周囲は
完全に静まり返ってしまっていた。

そんな聴衆ちょうしゅうをおいてけぼりにして
ジジイの独演会は続いた。

次から次へと、誰も聞いていないような‘’怒り‘’をあらわにしまくったのだ。

とんでもない鼻息で。

しばらくすると指摘内容が同じことの繰り返しになり始め、
そろそろ怒りネタも尽きてきたのだろうと誰もが感じ始めたそのときだった。

「それとな、さっきからそのミラーが反射してワシの目に入って眩しいんじゃ!」

!?

ん!?

唐突にジジイが父ちゃんのママチャリに設置されたミラーに対して怒りをぶつけた。

ボクは聞いてからしばらくの間は
頭の処理が追いつかなかったが、
これはさすがに粗略な言いがかりを言っていると理解した。

これを合図に、事態はあらぬ迷宮の深淵部しんえんぶへと歩みを進め始めた。 

どうしてもボクにはジジイ渾身こんしんのボケに聞こえ、ボクの中にひそむ“つっこみの血‘’がワサワサと騒ぎ始めたのだ。

もちろん本人につっこむなんて勇気は
チキンのボクにはない。

いやでも、どうしてもつっこみたい。

この欲求をどうしても満たしたい。
つっこんで誰かを笑わせたい。
人前では巧妙に隠していたが、承認欲求がタイフーンのように猛威を振るっていた。

そこでボクはママにだけ聞こえる程度の小声でボソッとツッコんでみせた。

「じゃ、オレのスターのオーラはどうなんねん。自転車が去ったところでまぶしさはなくならないだろ、ハハハ笑」

そう…みなまで言うな。
わかっておる。

内輪うちわにしか通用しないクソほどつまらんツッコミに似たボケをぶっ放したのである。

でも、このボケにママがクスっと笑い、人差し指を口元にもっていきシーっと大袈裟おおげさにやった。

するとどうだ。

周囲の大人たちが、この一連のやりとりを横目にみてクスクスっと笑った。
どうやら周囲に座っていた大人たちにも聞こえていたようだ。
内輪のボケが。

周囲がザワザワ、ニヤニヤとした
異質な空気に変わり、その異常を察知したジジイは、中核にいたボクに矛先ほこさきを向けてきた。

「なんや?ワシが面白いこと言ってるか?間違ったこと言っとるか?」

周囲の視線が一気にボクに集まった。
うわぁ最悪である。

どうしよ…。

“いやなんでもないです“
なんて回答したら、テンポが悪くなって
さらにややこしくなるであろう。

あぁ、もう。
正直に言って謝ろう。
意を決するしかもはや選択肢がなかった。

「ま、まぶしいのは、ボクのオーラって言ったんです。悪ノリしちゃいました。すんません(ペコリ)」

すると…
どうだ。
奇跡が起こった。

なんとお笑いの鉄則「緊張と緩和の法則」が発動したのだ。

本来ならスベリ倒すこんなちっぽけなボケで、周囲は大爆笑のうずに包まれたのだ。

その笑いの渦で1人、
ジジイはキョトンとした。

「オ、‘’オーロラ‘’ってなんや。」

あぁ。
面倒くさい。

けど、さっきの大爆笑でボクは気が大きくなっていた。みんなボクの味方なんだ。

今度は、堂々と言ってやろう。

「オーラやて!!かがやきや、輝き。ミラーとオレでは眩しさの‘’ルクス‘’が違うねん笑」

そして、また質問されると察したボクは
即座にコトバを付け足した。

「ルクスっつーのは、明るさの単位やからね!」

もはやさっきまでのピリついた空気はどこにいったかというほどに一転し、
場が‘’笑い‘’に包まれた。
そしてその穏やかな空気をバックにして、勇気ある中年男性がジジイに叫んだ。

「おっちゃん、わかったわ!もうええやんか。行かしたりーや。ボクちゃんが可哀想やんか」

1人 対 50人
あきらかに孤立し、形勢の悪くなったジジイが

‘’もうええわ!行けや!‘’

と、最後に強がりをみせてそう言うと、怒りモードを強制終了させ、川沿いから去っていった。
自転車父ちゃんは中年男性の方にペコリと頭を下げ、バリアフリーの傾斜坂に向かって子どもと一緒に自転車を押して進んで行った。

あれからしばらく経過したが…

いつだってそうだ。

人前で大声で、
怒られている人を目の当たりにするとき。

少年期に父ちゃんが陰茎丸出しのハゲオヤジに怒られた日の銭湯の記憶が、未だに成仏じょうぶつ出来ない亡霊ぼうれいのように自分にしがみついていてボクのココロを窮屈きゅうくつにする。

あの日からすでに3週間が経った。

でも、ふとした時にこのインパクトのあった一日を今でも鮮明に思い出す。

そんな時には決まって鼻毛を出したジジイがボクの横に現れて、「ルクスって何や」と耳元でささやいてくる。

そいつの息がね。
初夏のそよ風に希釈されることもないジジイの息がね。

そう。

腐った玉ねぎ臭で、死ぬほど臭いんだ。

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