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あまから

甘辛い、あまじょっぱい、食べものが好きだ。

昔は甘いものはあまり好まなかった。特におかずは、ひたすらしお辛いほうがおかずらしい、甘いものでご飯は食べられないじゃないか、と思っていた。塩や醤油で白いご飯がいくらでも食べられた、あの頃のこと。

今でも塩むすびを食べたくなる日はあるけれど、それ以上に「あまから」が好きで、つい色々と甘辛くしてしまう。


私の生まれたところ、港のある田舎では、あらゆるものがしお辛かった。そして女たちは、はっきりと甘いものを好んでいた。甘納豆はおやつで金時豆がおかずとして並ぶことは、私には理解できなかったけれど、母や祖母たちはなんだかんだとそういった甘いものを食卓に並べたがった。

煮物もきっぱりと甘かった。魚はまだ良い。芋や牛蒡の煮物など、飴菓子とどう違うのかと思うほど甘かった。素材の風味や色を損ねない白だしで上品に煮上げるようなことはなく、もちろん減塩や無漂白などは頭の片隅にもなく、キッコーマンの真っ黒な醤油とスプーン印の真っ白な砂糖だけが正義だった。

そもそもあの頃、あの町には、そういう商品があまりなかったかもしれない。平成の時代とは思えないよろず屋で菓子パンと卵と茶色い無地の紙袋に入った「粉」をちょうだい、と求めたあの頃のこと。


季節は春だ。砂糖醤油に絡めた団子が懐かしい。

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