マガジンのカバー画像

作詞

6
運営しているクリエイター

記事一覧

もう春が来た

一匹の蛙 星を掴もうとした
底の見えない夜 井戸の水面はしんと揺れる
一緒だと思った 映る星も浮かぶ身体も
掴めると思った 小さなこの両手で

踏まれた蕾 また咲こうとした
底の見えない夜 周りの仲間はりんと揺れる
折れた腕が痛い 腐り始めた皮膚を無視して
咲けると思った 憧れという雨で

「炭水化物取れるようになったよ」
そう言って泣いた君が
終わったと気付いた
そこまででやっとプロローグだよ

もっとみる

カーテン

窓からの風で揺れる白
汚いガラス戸だらけの準備室は
踊る毎日を映すぴったりの鏡
指先の形を合わせてみれば
僕らだって鏡だった

晴れた6月の湿った匂いが
ずっと続く今を包んでくれる
四角い窓からこぼれる時間に
気付かないよう目をそらした

揺れる、なびく、掴んでしまえば呆気ない
淡い卒業の影が不確かな未来に旗を立てる
来ないでほしいいつかが来たら思い出すよ
光だけ通すこのカーテンのこと

誕生日か

もっとみる

わたしたちの魔法は負けない

いつの間にか遠くに来たな
過ぎた8月が霞むくらいの
ぐちゃぐちゃな私が息をする

自分の色を知るために
この手でかさぶたを剥がした日々
140字のワンルーム
愛だけ詰めて晒してやる

プロローグは丸めて捨てた
つもりでずっとここにあった
エピソードはとっくに尽きた
私が生きる今が世界

私たちの魔法は負けない
底の擦れた靴で歩く
私たちの魔法は負けはしない
夢に見ていたこの舞台で
夢を超えた今日を

もっとみる

3

「寒いね」って言い合いながら
お互いが自分のポケットに
手を入れて電車を待つホームの夕暮れ

いつか終わるってわかってる
幸せとも言えない毎日
思い出を薄く引き伸ばして
どこか延命治療みたいだ

ほらあたし指先から肺まで
君だけでできてるもんでさ
あたしの前から君が消えるまで
頭の中に響くカウントダウン

もしも君が結婚したら
黄色いパーティードレスを着るよ
君が好きと言った私を真似て
きっときっ

もっとみる

2

流したシャワーに溶けていく今日の良いこととか
石鹸でも落ちてくれない余計な一言とか
毎日無意識に奥歯を噛み締めてたせいで
頭が痛くなってやっと気付いた本音とか

神様が惰性でかき混ぜできたこの世界で
また儀式のように布団の中夜を耐える

平等に朝が来る せっかく終わったのにな
カーテンを透かす光にそっと背を向ける
縛られ消えかけ それでも血だらけの両手を伸ばす

痛いほど怖いほど 笑ってごまかす僕

もっとみる

1

タイムラインが止まる夜
まぶた押さえて目を閉じる
命綱のスマホを消す

おみくじを開くときだけ
祈る相手にされるから
神様には見放されたみたいだ

カラカラの落ち葉を踏んで
天才たちが死んでゆく
妄想だけ捗ること

膨らむ自己に潰されて
またひとつ葉っぱが落ちる
どうしたってお前になれないこと

もらった容器で形を変える泥
均された自分でずっと空ばっかり見てる

僕の形は見えますか?
喚く声は聞こ

もっとみる