【500文字小説】新生活応援プラン

「新生活応援プラン?」
「はい、当社限定6G通信は十年後の自分と通話が可能なので、より的確な新生活へのアドバイスが頂戴できることでしょう」

値は張ったが、これから始まる大学生活のネタになるからと契約した新しいスマホを起動した。通話アプリを開き、指定された番号にかける。
「サトルだね、待ってました」
電話口の男は何故か誰も知らないような俺の情報を持っていて、やけに詳細なアドバイスをくれた。そしてその通りに行動すると面白いくらいに上手く事が運んだ。
「お前の言う通りに言ったら、アキちゃんと付き合えたよ。本当にありがとう」
そう言うと電話口の俺は一瞬黙ってから「おめでとう。俺はアキと付き合えなかったから、嬉しいよ」と言った。

ある日、国内で頭角を現し始めていた携帯会社が倒産した。駄々広い会議室のような部屋から出ていく大勢の人に紛れて、一人の男性が同僚と話している。
「やっぱり嘘はよくないよな。倒産してよかった。でもおかしいんだ。俺の担当していた顧客が大学生のときの俺にそっくりなんだ」
「おい、お前、顔が真っ青だぞ」
男性は同僚の声を聞く前に倒れ、朦朧としていく意識の中で自分の指先が透けていくのを見ていた。

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