わたしにはまだ、

違う人の声で、違う人の体温で夢を見る。嬉しくて恥ずかしくて照れながら笑ったら、それを合図に目が覚めた。
銀杏BOYZを教えてくれたのはまた違う人で、フジファブリックもスピッツも、また違う人が教えてくれた。

身体がだるい。少女漫画をなぞるような行為は、幸せというよりスタンプを押している気分になる。大事に取っておいた箇所も、気付かないうちに埋まっていた。お姫様抱っこされたことある?と聞かれてしばらく考える自分が、しばらく考えることに何も感じない自分が、ただここにいるということを思う。夜の間にしか来ない通知を開かずに消す。もう寝ちゃった?

“目が覚めて僕は泣いた”という歌詞通りの朝を嫌いになれないうちは、どこにも行けないってわかってる。

雨の音、出勤、欲しいもの以外が全部ある。正常な生活。また朝、また夜、朝、夢、泣いて、起きて、正常な生活を送る。
私の帰る場所は頭の中にあって、それで充分だって思っているのに必要以上にキラキラした夢を見て、目覚めたベッドの上で泣きじゃくりながら、正常な生活に帰ってこれたことにどこか安堵している私がいる。ままならないなあ。

でもままならないのは、ままならないことを望んでいるからだよね。

なあ、わたしにはまだ、

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