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#3 「もう疲れた」「燃え尽きてしまいそう」と思っているあなたへ

社会を変えるために声をあげる人は、ただ見ているだけの人に比べて、良いことも、悪いことも、さまざまなことを経験することになります。日本では「出る杭は打たれる」という言葉がありますが、どの国・地域でも、社会で声をあげることに大きなストレスを問題として抱える人は、多くいます。
周囲や世間からのネガティブな反応などの「外的な要因」によって感じるストレスがある一方で、全力に活動をし続けて、無理をして燃料切れになった結果、燃え尽いてしまうという内的な要因のストレスもあります。

あなたのように「声をあげる」選択をした人が活動の中でストレスを感じた時に備えて、メンタルヘルスのマネジメントやセルフケアの方法を練習していくと、自分の力をより発揮することができ、さらには充実したライフスタイルの実現にもつながります。この記事では、周囲からのストレスにより「もう疲れた」や、がんばりすぎて燃え尽き症候群(バーンアウト)になってしまうような事態を防ぎ、成し遂げたい目標に向けて声を上げ続けていくための対策・アイデアをいくつか紹介します。

  1. 予期する・向き合うべき課題を把握する

  2. 自分がやっていることに価値を見出す

  3. できること・できないことの線引き(バウンダリー)を決める

  4. 「オン・オフ」の切り替えとバランスをとること

  5. 信頼できる人と話し合う、つながる

  6. 批判に向き合う・悩みの相談相手をみつける

  7. 回復力(レジリエンス)を高めるために活用できるセルフケアを実践



1. 予期する・向き合うべき課題を把握する

自分の署名の特徴は何か、その特徴にはどのような課題があり得るのか、賛同してくれるグループがいる一方で、どのような層から批判を受けやすいのか、一度考えてみましょう。
取り組む課題によってはポジティブな成果が見えやすいものもあれば、テーマが大きすぎて成果が実感しづらく途方にくれるようなものもあります。たとえば気候変動に取り組むアクティビストは、悪化していく状況を少しでもマシにさせるために日々活動していますが、状況が改善しても「マイナス10000がマイナス5000に転じただけだ」と自分達の状況を喜びにくいことがあるかもしれません。どのような状況になれば署名が成功したと思えるのか、仲間たちと喜べるのか、あらかじめ活動をはじめるときにイメージをしておくと、バーンアウトの予防になるでしょう。

そうすることで確実な成果を1つずつ喜ぶことができるだけでなく、とりわけ批判やネガティブなコメントにはどのような内容のものがあるのか予想をしてみることができます。

2. 自分がやっていることに価値を見出す

次に、あなたが声をあげる活動にはどのような意義があるのか、そもそもなぜ立ち上げ、声をあげようと思ったのか、その活動にある価値について改めて考えてみましょう。
例えば、
その活動は、(特定の)人々の暮らしや生活を向上させることにつながっていますか?
その活動は、(特定の)人々の日々が明るくなる方法となりますか?

活動が成果をあげておらず、行き詰まりを感じている場合には、これまでとは同じやり方で努力するのではなく、別の方法を試してみるのもよいでしょう。キャンペーンガイドには、賛同が集まりやすい署名文の書き方や、署名提出の際にどうしたらより良い回答を引き出せるかについてのヒントが書かれています。また、もしあなたがグループで活動している場合には、以下のことも参考にしてみてください。

  •  イベントや何かアクションを行った後に、振り返りの時間をもつ。「二次会」に行く前にやってしまう。

  • うまくいかなかったり不愉快に感じることがあったとしても、メンバーの行動を肯定的に評価する。うまくいったことを労う。

3. できること・できないことの線引き(バウンダリー)を決める

全てのことができる人なんていません。
もし、仕事や学校など、アクティビズム以外に本業がある際には、時間と労力のバランスを取ることが大変な時もあるでしょう。アクティビズムの目標に沿って、どこまで自分が活動に関わるのか、また、どの領域はやらないのか、線(バウンダリー)を引くことが必要です。自分がこれ以上動いてしまうと燃え尽きてしまう、またはミーティングやタスクが不必要に多いと感じたときには、「NO」、(それは)やらない、と言えることも大事かもしれません。または、すぐにできる方法としてスケジュールを調整したり、時間を少し縮めたり、他の活動メンバーに手伝ってもらえるように求めることも、ソーシャルアクティビズムによる燃え尽きを防ぐために必要となります。

4. 「オン・オフ」の切り替えとバランスをとること

休む時間をあらかじめ確保したり、疲れた時には、休む。そして、休みの時は本当に休む。
夕方、週末、休暇など、関わっている活動から一度離れてリラックスする時間をとることも良いでしょう。例えば、1週間でこの曜日は自分自身のケアに集中して、活動については考えない。心身の休息をとることを優先するなどして、活動について考えない時間を作ることをおすすめします。

SNSなどアプリに過剰に時間を費やしていると思うようであれば、スマホやPCから一定時間離れて、「デジタルデトックス」をすることが有効だとされています。SNSやメールの通知に気を取られすぎていることに気づいたらスマホのアプリや内蔵されている機能を使って通知をOFFにする時間を設定することもできます。(詳しくはお使いの機器やアプリの通知OFFについて検索してみてください)

アクティビズムの多くは、「今すぐ変えなければならない」と感じるような差し迫った緊急性の高い社会課題を扱っています。自分が休むことで何か恐ろしい結果に結びついてしまうのではないかという不安があると、休むことが難しくなります。アクティビストの中には、自分自身のトラウマ的な経験が活動をはじめたきっかけである人たちも多くいます。このような場合、活動を通して自分の経験を整理したり、人生に意味を見出したりという肯定的な経験をすることもありますが、やはり休むことを難しく感じることもあります。
社会で大きな何かを成し遂げようとすることは、活動している人にとっては自分を誇らしく思う要素のひとつかもしれませんが、そのための自己犠牲が過ぎると活動は長続きしません。自己犠牲がそのグループの中で常態化してしまうと、新しく活動に入ってくるメンバーを見つけることも難しくなります。バーンアウトの原因のひとつに、仲間が自分と同じように動いてくれないことや、仲間割れの問題があります。活動仲間とうまくいかない背景に、メンバーが休めていないことがあるなら、休める状況を作ることは最優先課題のひとつかもしれません。
また、あなたにとって他の大切な活動に集中することも、生活のバランスをとりつづけることができる方法にもなります。

5. 信頼できる人と話し合う、つながる

批判や否定的なコメントによるストレスを感じているようなら、信頼できる仲間・友人と話をして、認知がゆがんでしまわないようにしてみましょう。一緒に取り組んでいる仲間や、同じような活動をしている友人は、もしかしたらまだ言葉に出していないだけで、実はあなたと同じような悩みを抱えていて、本当はお互いに助け合うことができるかもしれません。声かけをすることは決しておかしなことではありません。むしろソーシャルアクションを起こす人にとってサポートを求めることはごく当たり前で自然なことです。

6. 批判に向き合う・悩みの相談相手をみつける

建設的で役に立つ批判であれば、耳を傾けることも大切です。あなたが良かれと思ってやっていてもそれが効果的な方法ではなかったり、他のだれかの足を意図せずに踏んでしまっている場合はあります。ときには耳の痛いアドバイスが、あとになってから運動の成功にとって重要なことだったとわかることもあるでしょう。

また、批判をする人をコントロールすることはできないと割り切ることもできます。もし、99%の人が賛同していても、どこかの1%の人が過剰な批判をする可能性は常にあります。ネットでヘイト的な批判をする人は、実はインターネット利用者のうちのごく限られた少数派であるという研究もあります。
もし、活動を続ける上で心配なことがあったり、批判に対する答えが見つけられない際には、その分野に詳しい人にアドバイスを求めることも1つの方法です。
あなたが関わっている署名のテーマについて、専門家はいますか?いる場合、その人はどんな人ですか?連絡し、話し合う機会を持ってくれそうですか?

7.回復力(レジリエンス)を高めるために活用できるセルフケアを実践

最後に、あなたの今の状況を改善するために最も役立ちそうな項目を挙げてみます。どんな小さなことでも、少しでも自分の気持ちがよくなれるようなことはセルフケアになりますから、是非日々の生活に取り入れてみてください。
セルフケアの一例として、以下を参考にしてください。

  • 特にストレスを感じているときは、不要なものは手放して、心身の休息をとることを優先しても大丈夫。

  • 「完璧主義」になろうとせず、できる限りの最善を尽くしたのであればそれで十分なのだと思うことも大切です。

  • 1日を通してちょっとした喜びの瞬間を取り入れる。

    • 元気のでるようなアップビートの音楽を聞く

    • 好きな人・もの・動物の写真を見る/撮る

    • 外に出て数分間ジョギングする/日光浴する

    • 大好きな食べ物を作って食べる/食べにいく

    • お気に入りのポッドキャストやラジオを聞く

  • 十分な睡眠時間をとる。
    どれほど質の良い睡眠がとれたかによって、集中力、気分、ストレスの管理能力など、あらゆることが左右されます。

  • 身体を動かす。
    散歩に行ったり、走ったり、泳いだりする。もし時間がない場合は、例えば数分のダンス、あるいはYoutubeで10分以上の運動の動画をみるなどして、自宅で簡単な運動を試すのも効果的です。

  • リラックスできるアクティビティを行う
    ヨガ、瞑想、旅行、自然探険、太極拳など、あなたのストレス解消に役立つアクティビティを探してみましょう。

最後に、上記のアイデアを実践するための計画を立て、実際に試してみましょう。もちろんこれら全てを一人で行う必要はありません。燃え尽き症候群は誰にとっても深刻な課題になり得ますし、仕事や私生活はもちろん、社会活動にも大きな影響を与えるものです。必要な時には必要なケアやサポートを受けましょう。

参考:
・ModernHealth “Taking Care of Burnout” (英語)
・The Unspoken Complexity of “Self-Care” https://medium.com/@deanna/the-unspoken-complexity-of-self-care-8c9f30233467 (英語)
・Self-Care for Activists: Sustaining Your Most Valuable Resource
https://www.newtactics.org/conversation/self-care-activists-sustaining-your-most-valuable-resource (英語)