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和樂の編集現場は雑誌だけじゃない!

こんにちは。和樂編集長のセバスチャン高木です。編集長と言っていますが、実は私、現在発売中の和樂2月号で雑誌の編集は卒業し、ウェブメディアと商品開発と新規ビジネス(なんだそれ?)の担当になっているのです。

え?じゃあ編集長って嘘じゃんJAROに電話するぞ!という声も聞こえてきそうですが、いえいえ、そこには深ーい、いや、たいして深くない理由があるのです。

私が和樂に配属されたのは16年前。3年前から編集長に就任し、スタッフにも社内の関連部署の方々にも、そして何より和樂を読んでくださっている読者の方に並々ならぬ愛着をもっております。

最初紙を離れると打診(まあ、会社のなので打診と言うよりほとんど決まっていたんですけどね)された時は、「じゃあ、会社を辞めてやる!」と息巻いておりました。ごねてごねての2週間でしたが、ごねつつも実は自分が編集する雑誌の内容と読者の皆様とのミスマッチを感じていたりしたのです。

和樂は創刊から「家庭画報」や「婦人画報」、「ミセス」といった婦人誌と同じジャンルにくくられています。和樂自体はもう数年前から「日本文化の入り口マガジン」として、日本美術を中心とする特集を組んできましたが、やはり書店では婦人誌の棚に置かれています。なんとか婦人誌のジャンルから飛び出したいと思い、かつ、雑誌だけが日本文化の入り口でなくていい!と言う考えから、商品開発にも力を入れてきました。

ここのところの和樂のラインナップを見ると「茶の湯ROCK!」「歌舞伎ヴァーリトゥード(なんでもあり)」「日本美術は自由だ!」「若冲VSフェルメール」など、もう婦人誌ではないですよね。ですが、一度つくられた書店でのジャンルの壁はなかなか越えられないんです。

しかも、ウェブの構築をはじめて、そのあたりの方々とお会いするたびに「こんな雑誌があったんですね」「知らなかった」と言われる始末。そりゃそうですよね、自分でも書店に行って女性誌の棚には行かないですから。端から目に入らないんです。

開発している商品に関しても「うぁ、とんがってますね!いいですね」などと言われ喜んでおりましたが、実はこれ、喜んでいる場合ではなくて、自分がつくっている雑誌や商品とユーザーの方とのミスマッチが起こっていることに愕然としたのです。これって雑誌を読んでくださっている方にも失礼な話ですよね。

その時ふと思ったのが、自分は編集の現場を雑誌だけと思って、和樂にいろいろな役割をつめこんできたけど、編集の現場って、ウェブでも、商品開発でも、イベントでも、コンサルティングでも何でもいいんじゃないかなぁと。そう考えると雑誌に担わせる役割ってもっと他のメディアに分担できますよね、きっと。そして、それであれば雑誌を離れても編集長でいいじゃん、とある意味開き直ったりしたのです。

特にこれから注力をしていきたいのが、商品開発です。私たちはメディアカンパニーに身を置いていますから、つくるものはすべてメディアにならなくてはなりません。ですから、和樂が開発する商品は、ただの商品ではなくて、それ自体がぴーちくぱーちくとメッセージを発するメディア。雑誌の編集で多少つちかった編集力が込められた商品でなくてはならないし、メディア化した商品は、また、雑誌とは違う方法で、雑誌とは違った層に「日本文化の入り口」を届けられるんじゃないかなぁと思うのです。

というわけで今日も明日も和樂は商品開発をし続けます。ひとつひとつの商品には、発想から開発まですごーくおもしろい物語が込められています。開発する商品だけではなく、商品にまつわるストーリーもメディア化する。リテールやブランドの世界ではオウンドメディアで当たり前のように行われていることが、メディア自身は怠っているという皮肉。メディアから商品へ、そんな小さなことからメディアの逆襲をはじめたいな、と思う今日この頃です。

和樂を応援してくださる方の投げ銭お待ちしております。