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麦畑へ 5

前回の記事の続きです。

一ヶ所目とは違う穂の形。
一ヶ所目で見たのは小麦でこちらは大麦だそうです。

と言っても、実際にこの場所に立っていた時には、穂の形の違いに気づかないまま、この不思議な麦の形に魅了されました。

麦自身が風を起こしているよう。

好き勝手に、あちこちを向いている。仲がいいのか悪いのか。

やんちゃ揃い。協調性なぞ、なんのその。

頑固な寝癖。

でも遠目には、けぶるように美しい麻色の波。

とにかくね、僕にはね、広いライ麦の畑やなんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなんかのゲームをしているとこが目に見えるんだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない――誰もって大人はだよ――僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ――つまり、子供たちは走ってるときにどこを通ってるかなんて見やしないだろう。そんなときに僕は、どっかから、さっととび出して行って、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日じゅう、それだけをやればいいんだな。ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ライ麦畑でつかまえて

私たちが訪れた時には、すでに刈り取りが終わっている圃場もありました。本当にぎりぎりのタイミングで、今年の麦に出会うことができたわけです。

ライ麦畑を、崖に向かって無我夢中で走りぬけようとしていた私を、きっと苦笑まじりで、でも一緒にワクワクしながら応援してくれたannon さん
計画から旅の最後まで伴走してくれた、相方さんと娘。
彼らが私の、ライ麦畑のつかまえ役でした。

タクシーの運転手さんが、こんなことを教えてくれました。

「あの山、山本山っていうんだけどね。
大鷲がいて、琵琶湖に魚釣りに行くんだよ。
こーんなカメラ持ったのが何十人も集まって写真撮ってるんだよね。」
「鷲ですか?一羽ですか?」
「そうそう、一羽。ばあさんの鷲。
それから、あのあたりが琵琶湖なんだけどね、白鳥が来るよね。
今年はもう帰っちゃったけど。」
「白鳥ですか。
それで、ヤマトタケルの白鳥伝説が生まれたのかもしれませんね」

山本山。

ちなみに、最後のセリフは私ではなく、歴史好きの相方さんのものです。

ここからは、ヤマトタケルが山の神の怒りをかったという伊吹山も望むことができました。

右手奥が伊吹山。

ここで相方さんは、あれが伊吹山、と私に教えてくれたそうですが、麦に気をとられ、まったく耳に入っていませんでした。

後日談ですが、長浜から帰った後に伊吹山のヤマトタケル伝説を知り、それを相方さんに伝えたら、
「言ったじゃない!あれが伊吹山だよって。
運転手さんだって説明してくれてたしさぁ!」

うわっ!ごめん。

続きます。

おまけの話

タクシー運転手さんが話していた大鷲を撮りに行った、という記事がありました。


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