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新芽の色は?

近所に、萌黄色の新芽が目立つ生垣があります。
金芽柘植(きんめつげ)、日本原産。
日本原産という言葉が何故か好きなのですが、それは置いといて。

イヌツゲの園芸品種。1〜2メートルほどの小ぶりな木で、枝葉が細かく密生し、樹形を整えやすいため、生垣に使われます。

雌雄異株。写真の木は彼女。小さな蕾をつけています。

新葉が黄金色だからキンメツゲか‥と納得しかけて。
いや待てよ。これ、金色なのかな。

金色というと黄色、あるいはちょっと赤みを帯びた山吹色のようなイメージがあります。
緑がかった色でも、日本語では金色と呼ぶのかな。それとももう少し前なら黄色っぽかったのかな。


金色を手元の国語辞典を調べると、金のような艶のある黄色、こがね色とありました。ちなみに隣に書かれていた銀色は、銀のようなにぶいつやのある灰色。

なるほど。金と銀は、色と艶が違うのか。
銀色は鈍くひかる大人色。
銀より金の方がぴかぴか光って若い雰囲気なのかも。
それなら新緑の色も金と呼べるかな。

そんなイメージを、まず頭の中で作り上げてみました。


次に、名前に金とつく植物はどれだけあるかと探してみたところ、随分たくさんありました。金柑、金木犀、キンセンカ、金銀葛…。

日本人はもしかして金色好き?特別感がある色だもんな。

それならと、今度は日本の伝統色から金とつく色を引っ張り出してみました。


金春色(こんぱるいろ)

緑がかった明るい青色、つまりターコイズブルーです。幕府や時の権力者から保護されて栄えた能役者の家柄、金春(こんぱる)家の屋敷があった東京の新橋界隈は、かつて金春新道(こんぱるしんみち)と呼ばれました。屋敷跡近辺はその後、花街として栄え、芸者たちは金春芸者と呼ばれました。その彼女たちが好んで用いた色が金春色です。
(この金色は、固有名詞の一部だな。)

金青(こんじょう、きんせい)

紫色を帯びた暗い青色で、紺青の古い呼び方です。この色の岩絵の具の原料となる鉱物、藍銅鉱(らんどうこう)が、中国から運ばれた貴重な舶来品だったことから、色名に「金」の字が含まれます。
(金色=貴重か…。)

金糸雀色(かなりあいろ、きんしじゃくいろ)

野生のカナリアの羽のような、赤みを帯びた黄色。
(少しくすんだ赤っぽい黄色。これも金色なんだ。)

鬱金色(うこんいろ)

鬱金草の根で染めた赤みがかった黄色。カレー粉の黄色のもと、ターメリックはこの色です。鬱金という黄桜もあります。
(鬱金桜は黄色というよりは、薄い緑。黄色がかった珍しい色だから、縁起がいい色を名前につけたのかな。)

紅鬱金(べにうこん)

黄みがかった赤色。染色では、鬱金で濃く染めたあとに紅花、蘇芳、茜を薄くかけることで赤みを表現します。
(元祖、鬱金色より、こちらの方が金色っぽい。)

金茶(きんちゃ)

金色がかった明るい茶色。江戸時代に流行した染色だそうです。
(茶色だけれど、黄色の方を見ていたい気分になる色。)

ところで緑色のことを青、と呼ぶことがあります。
青田、青葉、アオムシ、青リンゴ‥。

日本でグリーンは「あお」と表現され、また「若草色」「萌黄色」のように自然界の色を用い、「緑」と呼ぶことは少なかった。衣袍や畳の縁など、身分にかかわるグリーンだけを緑と呼んだ例が多い。

八條忠基『有職の色彩図鑑』淡交社

緑という呼び方は、どうやら限られた場でしか使われなかったようです。
そうすると、若芽の新緑を金色と呼ぶのは、緑という言葉を避け、青葉の色と、緑の中でも黄色に近い、若々しい新緑の色を区別するという意味合いもあったのでしょうか。


茶色、赤、緑。いろんな色の中に潜む、明るく輝く黄色を見たいと思えば、人はそれを金色と呼ぶ。金色は貴重なものを指す色、縁起のいい色。若々しく、ひかり輝く色だから。
そういうことなのかもしれませんね。

下の写真は、昨日森の中で出会った新芽。
確かに金色と呼びたくなる輝きを持っていました。

ちょっと長いおまけ その1

中高生の吹奏楽コンクール。
すべての演奏が終わり、審査が終了すると、一校ずつ結果が読み上げられます。金賞と銀賞は聞き間違いやすいので、金賞の場合は

「ゴールド、金賞!」

と言われます。
そのため、ゴールド、という言葉が聞こえると、金賞という言葉がかき消されるほどの歓声が場内に響きます。

娘たちが出場した時、さあ、次は我々の番だ、と勢いこんで結果発表を待っていたら、

「金賞、ゴールド!」

言う順番を間違えちゃったんですね。
娘たちは、え?今の金賞?と、ちょっと戸惑い、少し遅れて自信のなさそうな歓声が上がりました。

まったく、喜び損なっちゃったよ、と、嬉しさと複雑な気持ちが入り混じった表情で帰宅してきた娘でした。

ちょっと長いおまけ その2

アイヌの古式舞踊に「ルイカ・リムセ」という踊りがあります。
金の橋、銀の橋、という意味だそうで、新しい橋ができたのを祝い、渡り初めをする様子を表しています。

コンカニルイカ ホオルイカ
シロカニルイカ ホオルイカ

コンカニは黄金、シロカニは白金。

「さあ、最初に渡ったのは誰でしょうか。」
踊りの先生の定番質問です。

「最初に渡るのは名誉なこと。
だから一番尊敬されている人が渡ったんですよ。
誰だと思いますか?」

答えは、以下のYouTubeでどうぞ。

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