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古代ギリシアの暦の話

1900年、ギリシア南部のペロポネソス半島とクレタ島の間に浮かぶアンティキティラ島付近で、沈没したローマの商船が発見されました。

紀元前1世紀前後に沈んだと思われる船の中からは、古代ギリシアの品々が次々に見つかりました。その中で誰の注意もひかなかった電話帳ほどの大きさの塊が、のちに世界最古のコンピューターと言われる「アンティキティラ島の機械」です。
現在、アテネ国立考古学博物館に収蔵されています。

精巧な歯車の残骸、目盛りやギリシア文字が刻まれたプレート。
表面に書かれた文字から、古代ギリシア人が天体観測やオリンピックの時期を知るためなどに使われた機械であることがわかりました。日食や月食がおこる周期であるサロス周期や、太陰太陽暦のメトン周期にも関わったとされています。


なぜこんな話をはじめたかというと、先日投稿したカラブ豆の記事が発端です。

娘がクレタ島に行った時に買ってきてくれたクッキーの袋の下に、月の満ち欠けが描かれているのが不思議でした。そこで、上の記事の末尾でそう書いたら、annon さんが「メトン周期では?」とコメントしてくださいました。興味を惹かれて調べ始めたら、沈没船と世界最古のコンピュータに行き着いた、というわけです。


メトン周期は、太陰太陽暦において閏月を入れる回数(19年に7回の閏月を入れる)を求めるのに用いられました。

月の満ち欠けの周期はおよそ29日。これを基準にひと月を設定し、12か月で1年としたのが太陰暦です。
そして、1年の日数を地球が太陽の周りをまわる周期、つまり1太陽年に一致するように作られたのが太陽暦です。

1年に換算すると、太陰暦の1年は太陽暦の1年より短くなります。その間に生じる差を埋めるために、古代ギリシアの天文学者メトンが編み出したのがメトン周期です。太陰暦で19年に7回、閏月(うるうづき)を増やす事で太陽暦と合わせます。だいたい3年に一度、閏月がはさまる計算になります。

古代ギリシアの暦は太陰太陽暦。その中にも様々な暦があり、その中の一つ、都市国家アテナイで用いられていたアッティカ暦にメトン周期が使われていたそうです。


  • 古代ギリシアでは、月の満ち欠けの周期に閏月を取り入れた太陰太陽暦が使われていた。

  • それらの暦にメトン周期が用いられたものもあった。

  • クレタ島の近くに沈んでいた紀元前の機械にメトン周期が関わっていた。

わかったのはここまで。
カラブ豆クッキーの袋に月が描かれていた理由は、結局突き止められませんでした。それでも、これだけ月の満ち欠けが古代ギリシア人にとって大事だったのであれば、お菓子のパッケージに描かれていてもおかしくはないだろう、という結論に落ち着いた次第です。

※写真は、娘がクレタ島に行った時に撮った写真です。
 この海にアンティキティラ島の機械が沈んでいたんですね。

おまけの話

調べる過程で何か情報がないかと、このクッキーメーカーのサイトを見に行きました。残念ながら、月の満ち欠けがデザインされているパッケージは他に見当たらず、ギリシア語で書かれたサイトなので読めもせず、手がかりは全くつかめませんでした。

ただ1つよかったことは、ギリシア文字のフォントが面白かったこと。
こんなにフォントにバリエーションがあるんですね。
かわいいなあ、ギリシア文字。

ということで、フォント観賞用にはよいサイトです。よかったら下記のリンクからどうぞ。

参考元:

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