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読み続けるために書き続けたい

「なんで書いてるの?」
「何を目指してるの?」
定期的に文章を書いてアップしているとこんなことを聞かれる。せっかく書いた文章はなるべく多くの人に読んでもらいたいのでInstagramで「書きました」報告をしているというのもある。

このnoteを開設してから、友人の発行するZINEに寄稿した文章を含めかれこれ20本ほど書いてきた。書きながら何度か書く意味について言及したこともあるが、古賀史健著『さみしい夜にはペンを持て』はその答えを僕にくれた。

この本では、海の中の世界になぞらえて、書くことで自分の本当の気持ちに気づいたり、世界の見方が変わったりしていくタコの少年の姿を描く。他の登場人物(登場生物?)もイカやヤドカリだ。古賀史健さん曰く、中学生に向けた書くことの指南書であり、タコジローが抱く疑問を解決していくことを通じて、書くことの意義を言語化している。

読み進めることを通じて、ヤドカリのおじさんが教えてくれたことがある。僕は自分の書く文章が好きだ。このnoteにアップしている文章も定期的に全部読み返している。冒頭の質問への回答はこれだ。読みたいから書いている。未来の僕が読者だ。

そして、書きたいと思うようになってから、世界の解像度が上がり始めた。うれしいことがあったとき、「エモい」気分になったとき、この気持ちを残していきたいと感じたとき、自分の気持ちや過去に深く潜っていく感覚になる。作中でも、書こうと思って世界を見ることは、作中ではスローモーションのカメラを手にすることと言われている。僕のiPhoneのメモ帳にはいつか書きたいと思っているテーマや出来事がいくつか残されているが、「書きたい」と思ったときの気持ちは大事にし続けたい。

もちろん自分のために書いているのだが、一方で「誰かに聞いてほしい」というのも嘘偽りない気持ちだ。そのことをまさに言い表しているポストがあったので紹介したい。

Twitterでよく見る「人は10代で手に入れられなかったものに一生執着する説」って「いわゆる青春らしい表象に無縁の10代を過ごした者は一生青春コンプレックスを抱える」って意味だと思ってて、青春らしい表象に無縁の10代を過ごしたものの青春コンプレックス皆無の私はその説に否定的だったんだけど、私が10代の頃一番欲しくて手に入らなかったものって「自分の言いたいことを誰かに聞いてもらう」ことだったんじゃないかと最近ふと思い、だから私はずっと文章を書いているのかもしれなくて、それなら一生執着する説もあながち間違いじゃない気がしてきた。

絶対に終電を逃さない女さんのポスト
https://twitter.com/ypfigth/status/1718470292232901054?s=46&t=flAtotK_Q1GKanFbvgoXtw

僕も今でも聞いてほしい。読んでほしい。あわよくば褒められたい。もちろん褒められたらうれしい。

ただ、そんな僕のことも古賀史健さんの描くヤドカリのおじさんはお見通しかのように刺してくる。誰かに褒められるために書いた文章は何も考えていない。それは何も書いていないのと同じ。だと言う。ハッとさせられる。つい頼ってしまいそうになるが、誰かにわかってほしいという気持ちは、ときに自分の言葉を使っていないこともある。そして往々にして、そんなときは自分が思ってもいないことを書いていることになる。どんなに楽でも、便利な言葉で片付けない。自分の言葉で、自分の頭で考えたことを書く。

書くことを始めてから、ひたすら書きたいことを書き続けてきたが、そんな僕に考え、立ち止まるきっかけをくれ、また整理させてくれて走り出すきっかけをくれたこの本との出会いに感謝したい。中学生向けと書いたが、大人にとっても十分意味のある本だった。

そんな素敵で僕に気づきを与えてくれたこの本は、書くことを仕事にしている高校時代の友人に勧められて読むことになった。かれこれ半年ほど前におすすめされて即購入したのだが、読んだ感想を書かなきゃ、と思っているうちにあっという間に時間が過ぎてしまった。これもまた褒められたい願望が悪い方に作用した例かもしれない。

この友人には僕が書きたい、と悶々としていた昨年の夏に、高校を卒業して以来久しぶりにこちらから連絡し、やり取りをするようになった。このnoteも勧められて開設した。そう意味では、この本と同じように僕を導いてくれた存在と言える。書くことを通じて、友達も増えた。本当はいつか仕事にしていきたいと思っているが、それもどこかで叶うかもしれない。きっと道を切りひらいてくれるはずだ。

感謝しなくては。その友人のおかげで、僕はまた今日も自分の新作の文章を読める。まだまだ書き続けていたい。僕がまだまだ自分の文章を読み続けていたいから。

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