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Chara「命のまつり」その39~東京地裁へ患者さんの付き添いで行く。緊張マックスからの解放

医療観察法病棟で受け持ちとなった患者さんの担当多職種は、MDT:マルチディシプリナリー・チーム(Multidisciplinary Team)と呼ばれます。多職種で構成さ れる支援チームを意味します。このチームと患者さんが治療共同体となり、ガイドラインの1年半を目安に、急性期(3ヵ月)、回復期(9ヵ月)、社会復帰期(6ヵ月)の3ステージの順で治療や社会復帰期の準備を進めていきます。

このMDTでいいなぁ~と思ったことがあります。
多くの病院では、看護師は医師のことを「○○先生」と呼んでいます。
当時、医療観察法病棟では画期的な取り組みを始めていました。
医師のことを「○○さん」と呼ぼうという取り組みです。
えっ、さんづけ・・・・と最初はとまどいました。

全てが医師の指示ですすめられるのではなく、MDT内でそれぞれの専門職が、その専門性において役割を発揮して治療や社会復帰を進めていくことをねらっていたと記憶しています。
医師と看護師、医師と患者、看護師と患者、上下関係ではなく横並びということを意識していたのだと思います。
田舎育ちの私はなかなか、医師に○○さんと言うことはできなかったのですが、看護師仲間は普通に「○○さん、この薬のこと調整のことですけど・・・」と会話している人も何人もいました。

まあ、そんなこともありつつ

受け持ち患者さんの治療経過もよく、社会復帰に向けて両親の受け入れや退院後の通院先もみつかり準備が進んでいきました。
いよいよ退院を裁判所に申請する時がきました。

そして、東京地裁に患者さんが出頭し審判を受けます。
受け持ち看護師も出席します。
検察庁から来たのか、裁判所からきたのか記憶が曖昧なのですが、
専用の移送車が来ます。患者さんは手錠をはめられ腰ひもが付けられ
移送車に乗ります。


私の受け持ち患者さんは、病気の症状は落ち着き地元に帰る方向となっていました。審判では、自分の病気のことをどう自覚しているか、どんな治療を受け今はどんな状態か、再犯の可能性はないかなど裁判官から質問されます。
病気はよくなったのですが、自己表現が苦手なところやのんびりした性格の患者さんでした。もう、何度も何度も患者さんと自分の病気に対する考えや気持ちを喋る練習をしました。裁判所での受け答えも練習しました。

いよいよ審判開始です。
子どもの成長と旅立ちを見守る親の心境です。
ドキドキ・・・・・

その時、ふと患者さんの方を見ました。
あっ、なんで・・・・・・、社会の窓が全開なんだよぉ~ 汗汗・・・

身だしなみ、大切だよ。印象も大切・・・・

なんだか、緊張の糸がぷっと切れました。

私の焦りをよそに、
患者さんは、社会の窓のことは全く気付かず、正々堂々と受け答えをしていました。よかった・・・・・。

そして、無事に退院の許可がおりたのでした。
もしかしたら、審判の前から患者さんの社会への窓はすでに開かれていたのかもしれません。(笑)

もう何年も前の事です。
ブログを書きながら、あの時の患者さんはどうしてるかなぁ~と思ったりしています。

今回は、このへんで終わりにします。








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