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はたらくの、火花が散る瞬間。

 『火花が散る瞬間』。この本の中で何度も出てくるキーワード。岩田松雄さんが若い頃、上司に連れられて行った工場で見た光景と、上司の言葉。これが強烈に、岩田さんの中に刻み込まれたのだということが、全編を通して伝わってきます。その強烈な印象があったから、どの職場でも一番注力すべきことを見つけるようになっていったのかもしれません。

 岩田さんというと、個人的にはスターバックスコーヒージャパンの社長をされていたイメージが一番強いですが、いくつかの法人で社長を経験され、その中で常に現場を大事にしてこられたということを、この本の中のエピソードの中で強く感じました。時間を見つけて現場に行ったり、現場の店長をはじめとしたスタッフの方々とコミュニケーションをとったり。うわべでなく人と向き合ってこられたのだと思います。加えて、直接コミュニケーションをとれない方に向けても情報を発信し続けてこられたようです。

 その源泉にあったのは常に、各企業のミッションや理念という、考え方。徹底的にその考え方を自分自身で吸収して、会社の方向性や商品、現場のスタッフの行動にいたるまで浸透させていったからこそ、大きな結果につながっていったのだと思います。

 日々の仕事を通して現場で働いていると、会社が目指していることに意識が向かない瞬間や、目の前の仕事をこなすことに追われている状況がほとんどだと思います。ですが、自分自身が何のために働いているのか、どんな方向に向かって進んでいくのかをイメージしていくことが大切なのだと思います。

 スターバックスをはじめとして、現場で実際にスタッフが行動してこられたエピソードがいくつか紹介されていますが、どのエピソードも、ココロが震えるような素晴らしいものばかりでした。現場のスタッフの方々が、理念やミッションを理解していることにとどまらず、体現しているからこそ、とっさの場合でも行動できるのだと思います。スターバックスの新人教育にかける80時間も、時間が長いだけでなく、密度の濃い時間なのだと思います。人材育成に力を入れるからこそ、商品やお店、会社に対する意識が高まり、素敵な空間が生まれるのだと、あらためて感じました。

 ちょっぴり疲れたときに、心に火が付くような、自分自身の仕事の仕方を客観的に見つめられるような、そんな素敵な本でした。

MISSION 私たちは何のために働くのか

岩田 松雄 著 株式会社アスコム 発行を読んでの感想

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