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穀物のお酒には「仕込み水」が必要! そして『水磨き』とは?

■仕込み水とは?

穀物からつくるお酒(ウイスキー/ビール/麦焼酎など)には、この仕込み水が必要となります。

これら、穀物(基本的には大麦)を原料とするウイスキーとビールなどのお酒の「仕込み水」を使うタイミングは基本的には一緒です。

メインは糖化工程で使われます。
細かく粉砕した麦芽に、水(温水)を投入する時に使われるのが「仕込み水」です。

イメージで言うと、「コーヒーや紅茶に注ぎ入れるお湯」ですね。

この仕込み水については以前に記事にしています↓
ウイスキーの仕込み水とは?|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)

対して、穀物ではなくフルーツからつくるお酒(ワイン/ブランデー/シードルなど)の場合は、お酒のベースの水分となるのは「フルーツの果汁」なので、「仕込み水」を投入することはありません。

お酒の過半を占めるのは水分ですから、穀物原料のお酒において、この「仕込み水の品質」は、できあがるお酒の品質に直結する超重要事項であることは、想像に難くないでしょう。

そのため、ビールメーカーや、ウイスキーメーカーはこぞって、「質の良い水」が「豊富にある」ところに工場を建てるのです。


■お酒づくりには大量の水が必要!

あと、水質に加え、「水が豊富」というのも重要で、お酒をつくるには、超いっぱい水を使います。

瓶を洗ったり、麦汁を冷却するのに使ったりと、なんやかんやと水は使うので、仕込み水で使われる水の量は、全行程の中ではごく一部ということになります。

例えば、ビール大瓶1本633mlをつくるのに、基本的にはその約5倍の3~4Lの水が必要になります。(場合によっては、完成品のビール量の約10倍程度まで必要になることもあるそうです。)

1本のビールをつくるのにはどれ位の原料が必要ですか? サントリーお客様センター (suntory.co.jp)

ウイスキーづくりでは、ビールづくりよりも工程が長いので、もっと大量の水が必要になります。

歴史的には「水不足で蒸溜所を閉鎖した」という事例も珍しくありません。
最近では、SDG’sの観点から、水の使用量を減らしたウイスキーづくりも、各社で試みられています。


■水磨きって?

「天然水」に比べるとあまり聞き慣れない、「水磨き」という言葉があります。

これは、そのお酒をつくるのにマッチした水質に、仕込み水の成分を調整することです。

主に、ビールで用いられることが多いようです。というか、歴史を振り返ってみると「ビール製造」において、発明された手法となります。

具体的には、「ペールエール」というタイプのエールビール(上面発酵ビール)の誕生が、「水磨き」の誕生に深く関係しています。


■ペールエールの誕生

18世紀に、イングランドのバートン・オン・トレントというところで、ロンドンとかで飲まれていた普通のエールビールをつくってみると、あらビックリ!!

当時よく飲まれていた「濃い色のエールビール」でなく、「淡い色(ペール)のエールビール」が、偶然にできあがったのです!
そういう意味では、比較的新しいビールのスタイルです。

なぜ淡い色になったかというと、バートン・オン・トレントの地の水質が他のエリアよりもちょっと硬水で、それが影響して、色が淡くなったそうです。

その後、「あの淡い色のエールビールって、イケてるよね!」と真似をする醸造所が出てきます。
ただ真似をしようにも、その醸造所の仕込み水では硬度が足りないので、水の硬度を調整して、バートン・オン・トレントのような水質にしてから、エールビールをつくるようになりました。

こうした歴史から、水質調整のことを、「バートナイズ(バートン化)」を呼ぶようになり、今ではそのフレーズが酒類製造の現場で、普通に使われるようになっているのです。


■で、話をウイスキーに戻すと

話をビールからウイスキーに戻して、前回にご紹介したイスラエルの「ミルク&ハニー蒸溜所」です。

売るものがなくなっちゃうよ! 『ミルク&ハニー蒸溜所』|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)

このミルク&ハニー蒸溜所ですが、仕込み水としては「地元の地下水(いわばテルアビブの水道水)」を使っていますが、そのまま使っているわけではありません。

その地下水に「水磨き=水質調整」を施したのちに、仕込みに使っているそうです!

ウイスキーの蒸溜所ではあまり「水磨き」を聞いたことがなかったので、ちょっと意外な感じがしましたが、私が知らないだけで、ウイスキーづくりでも結構、水磨きをしているケースがあるのかも知れませんね。


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