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三鷹・武蔵境付近の廃線跡めぐり

2023年の年末に、三鷹駅近くにある、「三鷹跨線人道橋」の撤去工事が始まる直前の最後の姿を見に行ってきました。その模様は、前回の記事でご紹介しました。(前回の記事はこちら)

それで街歩きはおしまいにしても良かったのですが、跨線人道橋の近くに気になるスポットがあるので、行ってきましたので、それについて報告したいと思います。

■三鷹駅と武蔵境駅から伸びる廃線跡

実は、三鷹駅からは、かつて中央線の線路から分岐する線路があったのです。その隣の武蔵境駅からも、同じように分岐する線路がありました。それらの線路が、何だか近い場所に密集しているエリアがあります。今回はそんな場所を訪ねました。

下の航空写真は、国土交通省の「地図・航空写真閲覧サービスを参照して見つけた、1957年(昭和32年)に米軍が撮影した、この付近の航空写真です。

三鷹駅付近の昭和32年の航空写真。
三鷹駅と武蔵境駅からカーブを描いて北に向かう線路が。

この三鷹駅から分岐する廃線跡は、短命ながら旅客輸送も行われた、「武蔵野競技場線」の廃線跡です。武蔵野競技場は、かつて「グリーンパーク」と呼ばれ、プロ野球の「国鉄スワローズ」(ヤクルトスワローズの前身)の本拠地を作ろうとされた場所です。戦前は、中島飛行機製作所の工場があり、その引き込み線が、武蔵境駅から延びていました。左からの引き込み線と右側の引き込み線の間に、直線的な地割がかすかに見えますが、それがその名残のようです。

武蔵境駅から分岐する廃線跡は、上述した中島飛行機の引き込み線があった線路の一部でしたが、途中で左に曲がり、境浄水場に入っていく引き込み線として機能していました。

そんな廃線跡を、ぶらりと歩いてみたいと思います。

■グリーンパークへの廃線跡の緑道を歩く

三鷹跨線人道橋の少し先に、JRの広がった敷地が。
ここから廃線跡が分岐していたようです。
この付近の案内図です。

この付近の案内図を見ると、いろんな情報が入っています。

直線状の緑道は、有名な「玉川上水」です。羽村から江戸までを結んだ水道事業です。そのすぐ左に、線路を跨いで繋がっていそうで、長方形の区画の中を堂々と横切る道路が見えますが、これは「品川用水」の跡地です。品川用水は、玉川上水から分水し、その名の通り品川方面に向けて農地に水を供給する役割でしたが、早々に廃止されたので、今は道路として痕跡が残っているものです。

グリーンパーク緑道は、線路から廃線跡っぽいカーブを描き、それらの水路などを横切って北に進んでいきます。

今は遊歩道となっている廃線跡。
よく見ると、境界杭が残っているようですね。
何となく廃線跡っぽい感じの残る道です。
電車が走り出してきそうな道です。
緑道は武蔵境通りに平行した道になっています。
そして玉川上水を渡る橋がやって来ます。

この「ぎんなん橋」という名前の歩道橋、よく見るとレールが埋め込まれています。ここが廃線跡だということを知らせる仕組みになっています。実はこの場所・・、

よく見ると、鉄道橋時代の橋台が隠れています。
対岸側にも。この歩道橋は橋台には載せていないようですが。
説明板が付いていました。

この説明板によると、昭和13年に中島飛行機の工場が作られ、終戦後、米軍に接収され、その後グリーンパークとして開発されたものの、すぐに閉鎖されてしまったので、引き込み線は昭和34年に廃止された、とのことでした。かなり短命の引き込み線だったようです。

実はこの玉川上水が、三鷹市と武蔵野市の境界になっていて、ここから北側が武蔵野市。緑道は武蔵野市側も続いていますが、今回は探索していません。ちなみに中島飛行機の跡地は、今でいう都立武蔵野公園、緑町パークタウン、武蔵野市役所、NTT武蔵野研究開発センターなどがある一角です。

Googleマップより。軍需工場の跡地の区画は、色んな用途に使われています。
左下の緩やかなカーブを描くのが、廃線緑道です。

■境浄水場への引き込み線の廃線跡

続いて、境浄水場へ引き込み線の廃線跡を見てみたいと思います。

玉川上水(左)と、境浄水場(右)。
この、斜めにせり出した敷地からまっすぐ進んだ先にあるフェンスが
どうやら廃線跡のようです。玉川上水のほうをよく見ると・・、
やはりありました。廃線跡の橋台の跡です。
廃線跡が繋がっていたと思われるフェンス。
境浄水場は、施設更新の工事が進んでいるようでした。
橋の上から見た玉川上水。
先ほどの廃線橋台があった場所の対岸に来てみました。
道路が微妙に高くなっている場所があります。
その場所から対岸を覗くと、やはり橋台の跡が見えました。
その反対側には、「本村公園」という名前の緑道が。
これがどうやら廃線跡のようです。
こちらも、廃線跡ムードのある緑道です。
緑道の途中に、何故か恐竜っぽいオブジェが。
子供向けの遊具のようですが・・(笑)。
武蔵境駅に近づいてきました。
中央線の線路近くは、事業所になっています。
境界杭が残っているので、事業所の敷地が廃線跡のようですね。
そしてこの敷地が、中央線の高架に合流していきます。
それを反対側から見たところ。
何となく分岐した感がある、尖がった敷地境界が残っています。
中央線、武蔵境駅のすぐそばです。
そのすぐ南側には、日本獣医生命科学大学の名建築があります。
昔の麻布区庁舎を有名な建築家、ヴォーリズさんが指導して移築したものです。
武蔵境駅。良い感じの高架駅になりました。

武蔵境駅は、とても歴史のある駅。高架化された時にそれを記念するような展示コーナーができているようです。なかなか見ごたえがあります。

実は武蔵境駅は、中央線の前身・甲武鉄道が開業した当時からある駅。
かつては中野駅の次は境駅(武蔵境)でした。
境停車場ものがたり、展示内容が激アツです(笑)。
いくつか写真が展示されていましたが、その中に
浄水場の引き込み線の写真もありました。
帰りは、武蔵境から出るもう一つの電車、西武多摩川線で。
武蔵境駅は近代的な高架駅ですが、あとの駅はとってもローカルな電車。
終点の是政駅。この電車は自転車持ち込み可能という、
何ともローカルな特徴があります。

西武多摩川線で是政駅まで移動すると、そこから多摩川に架かる是政橋を越えれば、JR南武線の南多摩駅に到着できます。そこまで来ると多摩ニュータウンに差し掛かります。なかなか楽しい帰り道になりました。

■終わりに

三鷹駅、武蔵境駅から出る廃線跡は、今では緑道等に変わっていますが、玉川上水との交差部に橋台跡が残るなど、いくつかの痕跡を辿ることもできます。そんな楽しい街歩きができることを再発見しました。

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