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インフレと新車

物価高である。
失われた30年、デフレデフレと言われ続けてきた日本にもついに物価上昇の波が怒濤に押し寄せている。

コロナパンデミックとウクライナ侵攻がいろんな停滞をぶち壊した感がある。
あらゆるものの値段ぶち上げである。

世界中がコロナ禍に見舞われ1年が過ぎた頃、
人類の叡智が結集してワクチンができた。
そこに至るまで3年はかかると思っていた私はそのスピード感に衝撃を受けた。
そして日本中にようやく接種が普及した頃に我が家は引越を決行した。

引越というのは多かれ少なかれ断捨離をもたらす。
間取りや広さが変わるに当たって、
家具家電の大物に始まり、収納の隅に追いやられて忘れ去られていた細かいものまで、要不要、買い替えの選択を否が応でも迫ってくるのだ。

思い返せば
東京に出てきて5年くらいした頃、それまで大学入学時に購入した家電セットを使い続けていた私は、思い切って家電を買い替えた。
大学入学で実家を離れ一人暮らしを始めるとき、洗濯機、電子レンジ、冷蔵庫などなどの生活家電を一挙お買い上げすると思う。大手家電量販店などでは新生活セット!で売っているやつ。
その大学入学時の一挙お買い上げセットを何も考えず使い続けていたので、はたと気づけばどの家電も10年選手だった。
急に『私この家電いつまで使うんだ?』とひらめいた私は電光石火で買い替えを決めた。
学生気分のままではいかん、という妙な焦燥感に突然焚きつけられて、
どうせなら、と冷蔵庫も洗濯機もオーブンレンジもちょっといいやつを買った。
入学時はセットで10万程度だったものを、冷蔵庫10万、オーブンレンジ7万、洗濯機に至っては新品のドラム式洗濯機にしたので20万以上にした。
もちろん自分の稼ぎで買った。
大人になったなあ…と感慨深かった。

それからさらに10年…
私が独り暮らしをしていた頃の家電を
同棲を経て結婚をしたあともずっと使い続けていた。

我が家の家電はあらゆるものがまた10年選手となった。
二人と一匹暮らしになって、少し容量が足りなくなったのもあるし、引越もするし、、、
断捨離と買い替えの時期が来たのである。

洗濯機は特にネックだった。
10年選手ともなると乾燥機能に疲れが見え始め、
昔はふわっふわで出てきたタオルも最近は乾きに不安を覚えることが多くなってきた。
ちょっくら偵察してくるか…と某家電量販店でドラム式洗濯機売り場を覗いてみたら、37万円。

37万円!

ドラム式洗濯機を導入して以来、
洗濯物を干して取り込む、
天気を気にする、
という洗濯の煩わしさから解放され久しい我が家は、もはや乾燥機のない生活など考えられない。
洗濯機を買うならドラム式洗濯乾燥機一拓、と決めている。はずだが、こんなにお高いとは…。


新品のドラム式洗濯機って下手したら給料一月分ぐらい吹っ飛ぶじゃん。
平均的な初任給じゃ手も足も出ないよ。いや足が出るか。
最近の学生は一人暮らし始めるとき洗濯機どうしてるの?などなど
本当に一体みんな洗濯はどうしてるの?と疑問でいっぱいになるくらいそのお値段にびびり散らしてしまった。

しかしその頃ちょうど世の中では『値上げ』という言葉がたびたびニュースで騒がれることが増えてきていた。
何もかも値上げ。油も小麦もあれもこれも。
スーパーで買い物をすると、これまでの感覚で思っていたより1000円や2000円くらい高い総額をたたき出すようになってきていた。
いつも3000円くらいで買えていたはずなのに、レジが示す総額は5000円…
インフレで買い物の勘所が掴めなくなっている。

家電だって値上げ値上げとニュースで騒ぎ立てられている。

観念した。

どうせいつかは買い替えるのだ。
この先高くなることはあっても安くなることはあるまい。

さすがに37万はちょっと手が出しづらいので、
型がちょっと古くてもう少し安いのを購入した。
それでも30万近いお値段だった。

この
この先高くなることはあっても安くなることはあるまい理論。

こいつは随分とくせ者だ。

洗濯機もオーブンレンジもバックカントリーセットも、購入の決定に一押しも二押しも背中を押してくるインフレの恐怖。
頭の片隅でくすぶり、購入意欲をわかせるこの悪魔の思考。
『今が一番安いのよ…』
『インフレで次のタイミングにはもっとすごい値段になってるかも…』

ああああー。
買わなきゃー。

悩んでいる暇をくれない。
物価上昇速度が早すぎて、乗り遅れるなとぐいぐい背中を押してくるパワーワード。


そして我が家はついに、次の買い替えが来てしまった。

新車購入を決めてきたのである!

いや、これには、一応、理由があって。

趣味であちこち遠出をするため
我が家の車は7年ですでに、15万㎞近く走行しているのだ。
これでもコロナの影響で少なくなった方だ。
何もなければ18万㎞くらいになってたと思う。
最近の車は作りがよいので30万㎞くらいまで耐えられる、とは聞くものの、10万㎞を過ぎたあたりからあちこち調子の悪いところが出てきた。
走行音がうるさかったり揺れが激しくなったり、エアコンが壊れたり。
明らかにガタが来ている。
耐えられるっていっても全く機能的に衰えないわけではないわけで、走行不能になるようなぶっ壊れ方をしないだけで走り方がぽんこつになりつつある。
車検とメンテナンスでやたらお金がかかる。

おまけに、最近は納車にものすごく時間がかかるらしい。
買い替えに急を要しても肝腎の車がなかなかやってこない。
新車注文のタイミングがむつかしい。
そのあおりを受けて、すぐに納車できる中古車市場は高騰し新車を買うより高くなることもざらときたもんだ。

それに加えて自動車も例に漏れず値上げラッシュ。
10万とか普通に、中には100万以上の値上げを決めた車さえある。

ふぁー給料も100万上がらんかなー、と給料が増えるのを待っていたら一生買い替えができないかもしれない。
壊れて大変なことになる前に、ここはやはり。


こうしてまたしても、インフレの波に押されて購入を決めてしまった。

次は、10年後くらいか。
買い替えの波がまた押し寄せてくるのは。
10年後には一体どんな世の中になっているのか。
洗濯機だの車だの、技術の進歩がどんなことになってるのか全く想像がつかない。
自動運転で寝てる間に目的地に着くようなクルマが販売されてるんだろうか。

とりあえず、お金を貯めて備えるしかあるまい…。



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