見出し画像

ヤリとイノシシ


『秦野市のイオンで野生のイノシシ大暴れ』
22歳まで過ごした地元のニュースが流れてきた。
あぁ、あの辺はいるよね、イノシシ。
その付近で信号待ちをしていたら、道端で野生のキジが羽を広げているのを見たことがある。
めいいっぱいに両腕を広げ、ビロビロォ~と揺さぶって隣にいるメスキジを口説いているオスキジ。
また始まったよ……。
ウンザリした様子のメスキジはそっぽを向いていた。
チョコチョコと横歩きしながらメスキジの視線に入って、しつこくピィロピロ~と羽を広げるオスキジ。
関係のない人間の俺までウザイなあいつ、と思ったりした。
そんな地元なんで、イノシシが出ても別にふーんとしか思わなかった。
ただ驚愕したのは、その後の文言。
地元の人がヤリで退治と書いてあった。

ヤリィィ?

ヤリってあのヤリ? 漢字で書くとこの槍!
戦国武将が戦争ん時に使う、アレの事?
そんなん、家に持ってて、しかも使いこなせれる人が地元にいたのかよ。
知り合いだったら嫌だなぁ……。
子供のころにプチいじめした、例えば、朝礼の時に膝カックンしたあいつとか、肩をポンポンと叩いてほっぺたプニュッと指で突いたあいつとかが、実は自宅の居間に槍があるお宅の子だったらと思うとゾッとする。

靖生……こっちがその気をだしたら、お前なんか先祖代々から貯蔵してある蜻蛉切(ヤリの名前)で簡単に……
と心の中で思っていたとしたら、どうしよう……。

でもよくよく記事をちゃんと読み返してみたら、市役所に置いてあったヤリを使ったとの事。
えっ! じゃあ、誰がそのヤリで戦ったの?
受付係とか?
家にゴキブリが出たんで丸めた新聞紙をハイッて渡されたような感じに、鼻息が荒いイノシシの前にたたされて、ヤリを渡されたって事?
「いのしし殿ぉ、いのしし殿! そなたはなぜ複合商業施設イオンで荒ぶるのかぁ!」
とアシタカみたいに言ったのだろうか……。
「買い物ですぅぅ、ユニクロってどこですかぁ?」
とかイノシシ言わないだろうな、多分。
血走った目で猪突猛進してくるイノシシ。
真面目に公務員試験を受けてコツコツ頑張ってたのに、まさかお役所努めで殉職するとは思わなかっただろうに………。

ヤリでどうやって立ち向かったんだろうと思って写真を観たら、なんだ、自分が想像しているようなヤリじゃなく、害虫駆除ような現代的なヤリで、がっかりした。
なんだよ、それだったらオレだってできるのに……。
今度現れたら、オレにやらせてみん。

写真だけ見ると、普通に優しそうな人。
いのししを倒した人に見えない。

イオンの床や壁がイノシシの血で血まみれとかになったのかしら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?