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ダンサー イン ザ ガーデン その①

20年ぐらい前の話です。
前に勤めていた会社の時の話です。

ガス交換をするお客さんちと、隣の家に壁がなく、敷地の境界線代わりに地面にタイルが埋め込まれている案件でした。

間隔が1メートルぐらいです。
そこでよく隣のおばさんにクレームを言われました。

と・に・か・く、絶対に、うちの敷地にはいるな! と。

いつも、おばさんが腕組みをしながら、監視されてました。

1歩でもタイルを踏み込んで隣の家に踏み込むと、
「ちょっと、あんたぁ!! 今、ウチの敷地に入ったでしょおお!」
と怒鳴りつけられます。
なので、いつも凄いプレッシャーの中、ガス交換をしていました。

―ある日―
いつものようにガス交換をしていたら、「ちょっとあんたぁ!!」と怒鳴られた。
足を踏み込まないように十分に気を付けていたはずなのに、入っちゃったのかな、と思った。


「あんた、今、肩が入ったわよ!」


えっ………。
僕の肩がタイルを超えて、自分の敷地の領空を侵犯したと主張された。
なんかびっくりして、「ごめんなさい」とか細く謝った。
それから、なるべく息もタイルを超えないように細心の注意を払う日々が続きました。

―そんなある日―
その現場に着き、トラックを止め、ガスボンベを担ぎ、運ぼうとした時に、隣のおばさんに、
「ちょっと、あんたぁ!!」
と叫ばれた。
まだ何もしていないのに……。
「なんでしょうか?」
僕がそう尋ねると、おばさんは言った。


「あんた、今、うちに入ろうと思ったでしょ!!」


えっ………。
40キロのガスボンベを担いだまま、僕は呆然と立ち尽くした。

続く。

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