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『ツイン・ピークス』第1シーズン感想~ロブ=グリエから見たシュルレアリズム~

こんにちは、『ツイン・ピークス』フルマラソン中のチェ・ブンブンです。

昨晩、第1シーズン感想しました。とはいえ、第1シーズンって7話しかないんですよね。あっという間ですよ。寧ろ問題は、製作陣とデヴィッド・リンチ、マーク・フロストが若干対立して中だるみしたと言われる第2シーズンが22話もあるの点です。以前、ブンブンは『男はつらいよ』フルマラソンをしているのですが、30話付近の苦痛を味わいそうで不安しかありません。

とりあえず、第1シーズンを完走したので軽く感想を書いていきます。

1.デヴィッド・リンチはロブ=グリエがお好き?

まず、本作を観て、デヴィッド・リンチはアラン・ロブ=グリエが好きなのではと感じました。アラン・ロブ=グリエとは、昨年イメージ・フォーラムで特集が組まれていたのですが、あの難解映画の金字塔『去年マリエンバートで』の脚本を手がけた小説家です。小説家でありながら、9本の映画を作っている異例のキャリアを持つ人物でもあります。

ロブ=グリエは一貫して、記憶と無意識が織りなすシュールレアリズムな世界を描いている。その作品スタイルが、デヴィッド・リンチの世界観と酷似している気がします。『マルホランド・ドライブ』では分裂する人格による胡蝶の夢たる世界を演出し、『インランド・エンパイア』では無意識がひとりでに結合し世界が創世される様が描かれていました。デヴィッド・リンチの心理の深層下にある沼への執着は、ロブ=グリエに似たものを感じます。

とは言っても、デヴィッド・リンチのオールタイムベストを見るとロブ=グリエやアラン・レネといった記憶の惑いを描いた作品が入っていないのですが。

【デヴィッド・リンチのオールタイムベスト映画】

・8 1/2
・サンセット大通り
・ぼくの伯父さんの休暇
・裏窓
・かぼちゃ大当り
・アパートの鍵貸します
・道
・ロリータ
・オズの魔法使
・シュトロツェクの不思議な旅
※ミニトリビア:『オズの魔法使』の正式邦題は、『オズの魔法使い』ではありません。送り仮名はつかないのです。

2.ロブ=グリエ『囚われの美女』のドラマ版?

『ツイン・ピークス』は噂通り混沌とした作品でした。我々の世界での常識が一切通じません。遅々として殺されたローラの犯人探しは進展しない。これはドラマシリーズなのだから想定内。しかし、捜査が進展しないのは見るも明らか。あまりにもどうかしています。

FBI特別捜査官のデイル・クーパーは、犯人探しのために石を投げ始めます。森に立ててあるビンが倒れたり、割れたりしたら《クロ》だと言うのですが、それは果たして捜査なのでしょうか?

またクーパーは夢の世界で、赤い部屋にたどり着き、逆再生で話すローラから犯人の名前を聞くが忘れてしまう。しかし、その記憶があまりに鮮明なものだから、「この夢の暗号を解けば犯人が分かるに違いない」と言い始めるのです。通常、「そんなわけないでしょ!」とツッコミが入るはずなのだが、皆口を揃えて、「そうだね」と納得している。この世界は、どうも我々の住む世界とは違った重力、引力で成り立っているようです。そこに身を任せるか、拒むかで本作を楽しめるかどうかが決まってくるのですが、ブンブンは少し抵抗しつつもこの世界に飛び込んでみることにしました。

というのも、先日イメージ・フォーラムで鑑賞したロブ=グリエ『囚われの美女』に酷似していたのだから。

霧のような空間から美女が消えたり現れたりする。男は自分の記憶すら簡単に幻と化してしまう世界で、女を追い求める。そのシュールレアリズムな空間、我々の常識を次々とへし折っていくスタイルにのめり込んだブンブンにとって、『ツイン・ピークス』の訳わからなさは至極の体験でした。

結局、思わぬクライマックスで幕引きとなった第1シーズン。これがどう変化を遂げていくのか?早く第2シーズンに着手して確認してみたいです。

それではまた!


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