入国審査

初めての海外旅行で、チェコ・オーストリア・ハンガリーへ行ったときの入国審査は、パスポートをろくに見もしないで適当なページにスタンプを押していた。
その後、2回、オーストリアへ行ったときも同じような感じだった。
乗り継ぎのオランダやドイツでもパスポートを適当に見て、適当なページにスタンプを押す。ページの若い数字の所から順に押して欲しいなあと思いつつ、まあ、そんなことはなかった。

ところが、2011年8月にロシアへ入国したときは、パスポートの顔写真をしっかり見て、スタンプは適当なところではなく、ビザの所に丁寧に押してくれた。

2012年12月、3回目のロシア入国時にトラブルが発生した。
いつも通りパスポートの写真と私の顔をしっかり見るのだが、この時の入国審査官は、「顔が違う」と言う。一人で判断できないため、向かい合わせで入国審査をしている職員に声をかけて、2人で私の顔をじろじろ見て、パスポートの写真と見比べている。
「本人だ」と言って、パスポートを作った時の残りの写真も見せたが、まあ、それは、偽造している人も持っているだろうから、証拠にはならない。幸い、ツアーで参加していたため、添乗員さんに助けを求めるが、ロシア語を話せると宣伝している旅行社の添乗員さんだが、このときに、積極的に入国審査の人に声をかけることもなく、何もできなかった。
一緒にツアーに参加した人は、一部始終を見ていて、この添乗員さんは、いざというときに頼りにならないと判断した人もいたらしい。
入国審査官は、2人で判断ができないため、もう1人を呼んで、3人で私の顔をじろじろ。何度も見ている。

どうしてこうなったかは、いろいろ心当たりがある。
パスポートを作りに行ったときは、タートルネックのセーターを着ていた。写真を撮る時に、タートルネックが首にかかりすぎているとよくないらしく、首も見えるように、下におろして撮影した。
さらに、私は、まっすぐ座っているのに、「曲がっている」と何度も言われ、だんだん私の顔は仏頂面になっていった。履歴書などの証明写真を撮る時に、こんなにうるさく言われた記憶がなかったため、本当に不機嫌になった。

詳しい値段を覚えていないが、カラーと白黒で、白黒の方が安かったため、けちった私は、白黒写真でパスポートを作った。

ツアーにギリギリ申し込んでパスポートづくりを急いでいたため、美容院にも行かず、くせ毛のぼさぼさの髪の毛だった。

写真は、眼鏡でなく、コンタクトで撮影した。

それがパスポートの写真。

ところが、ロシア入国時の私の顔は、ロシアに上陸して、嬉しくて満面の笑み。
10時間半のフライト後だから、コンタクトではなく、眼鏡。
ロシアへ行くときは、写真も撮るだろうと、毎回美容院に行き、髪はストレートっぽくしている。
この状態で、入国審査の窓口に行くと、パスポートの写真と別人になる。

パスポート   ロシア入国時
仏頂面     満面の笑み
くせ毛     ストレート
コンタクト   眼鏡

3人にじろじろ見られたが、別室まで行くことはなく、何とか入国できた。

10年パスポートを作っていて、この時は、パスポートを作ってから6年目でまだ半分近く残っていた。
すぐにパスポートを作り直すとお金がかかるから、そのままあと4年間同じパスポートを使った。
その後も、年に2回ずつ6回出入国した。

その後、私がした対策は次の通り。
ロシアに到着して嬉しいのだが、パスポートと同じ顔になるように、ものすごい仏頂面を作って、入国審査官の前に行く。
眼鏡をはずして、入国審査官の顔はよく見えないが、同じ顔だと判断できるようにした。個人で来ている時は、着陸後、トイレに行って、コンタクトをさっとつけて入国審査に行くこともあった。

この対策で、その後、「顔が違う」と言われることはなかったが、仏頂面を見て、入国審査官が笑っているのは分かった。まあ、通過させてくれればいいので、笑われようが、仏頂面で入国審査に臨んだ。

10年のパスポートの期限が来て、新しいパスポートを作る時も今後ロシアの出入国がほとんどだから、写真を真剣に撮った。白黒ではなく、カラーにもした。
それでも、眼鏡ありと無しでは顔が変わるので、トラブルを避けるために、まず、眼鏡なしで入国審査官の前に立ち、手続きを始めたなと思ったタイミングで眼鏡をかけるようにしている。

10年パスポートで、10年間の間に太ってしまって、顔が違うと言われたという人も知っている。
今から10年以上前は、入国審査官の目で見て判断していたと思うが、私が何度か出入国しているうちに、システムがすすみ、おそらく、パスポートをスキャンすると、出入国履歴がデータベースに出てくるようになり、怪しまれなくなっていった気もする。
さらに、パンデミックにより、顔認証システムもすすみ、コンピュータによる本人確認もしているから、「顔が違う」と言われなくなったと思う。

ロシアへ入国予定がある人は、無用なトラブルを避けるためにも、パスポートの写真を真剣に撮った方がいい。


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