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詩:朝を越えて

あなたに会いました
いつものようにたあいない会話で盛り上がって、私はあなたと笑っていました
幸せでした。たとえそれが夢であっても
あんまりあたたかい夢だから、私はなかなか起きませんでした
目を覚ませばそこはがらんとした六畳間で、窓からは冷たい朝日が指しているのが分かっていたから

私は覚醒しかける意識をなんども夢の中に沈めて
あなたに会いに行きました

夢の中でなんどもおはようを言いました
朝ごはんは何がいいかしら?
いつもみたいに出し巻き卵を作ろうかしら、もちろんおひたしと、お味噌汁も添えて
あなたは目覚めが悪いから、朝は私が作るの
黙々とご飯を口に運ぶあなたを、私は湯気の立つお味噌汁をすすりながら、ちらりと見るの
今日も、隣にあなたがいる
それが私の幸せだから

……どこ行くの?
待って
行かないで
どうしてそんな悲しく笑うの
だめ
遠いよ
目の前が真っ白だよ
そばにいさせてよ
ごめんなさい
私は孤独に耐えられません。耐える術を知りません
存在理由をあなたに押し付けることを、どうか今だけはお許しください

私は本物の朝へ運ばれていく
あなたのいない、のっぺりした朝へ
起きあがる。隣にあなたはいない。それだけで、部屋はひどく広い
一人で食べる朝餉は、まずい
私は朝日の中で夜に焦がれていた


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