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ホラ吹き猫野郎

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  • またたび日記

    我が家の猫たちとの日々を綴った日記です。

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またたび日記9「飼い主(ぼく)のこと」

ここ数日、抑うつが酷くてろくに文章が書けなかった。 そういうことは多々ある。調子のいい波が来てる時と、それが引いていくときがあって、ここ数日はまさに波が引く時だった。 波が引いている時は、とてもじゃないが文章を書く気なんて起こらない。案外、そういう時の方が文章を書いた方が心の整理に繋がっていいのかもしれないが、そもそも打ちのめされていてそんな気力もない。過去の失敗や現在の不安が大挙して押し寄せてきて、僕をぼろぼろにするのだ。 というわけで何の文章も書けなかったわけだが、じ

    • 寝太郎だらけのこの浮世にも

      「三年寝太郎」 嘘みたいなタイトルだが、実在する絵本のタイトルである。 「三年寝太郎」はある働き者の百姓が母の死をきっかけに、毎日寝てばかりの怠け者になるのだが、三年の時を経て(文字通り)覚醒し、不作で苦しむ村人のために川から用水路を引く話だ。 この話を読んだとき、まず思った。これ、「うつ病」の話じゃね???と。 もともと真面目すぎる人間がある日を境にプツンと糸が切れたように床から起きられなくなる、というのはうつ病患者の体験談でよく耳にするものだし、自分にも覚えがある

      • いつまでもいつまでも……なんて嘘

        「元気でな」猫を起こさないよう、囁くように言った。「今度会った ら、 うまい餌食わしてやるからさ」 そのまま僕は猫たちと同じように瞼を閉じた。こんな満ち足りた気持ちで眠るのは久しぶりだった。頬を何かが伝うのを感じながら僕は眠った。 https://note.com/checoco/n/n63202ce27bff?magazine_key=m12f02fe9447b 「ああ~ん、だいふくちゃん! もちさん! 相変わらずかわいいねえ! 元気してた? うん、そうなの! 良かっ

        • 蛇飼いたい

          蛇を飼いたいという欲望が最近ふつふつと湧き出している。 もともと爬虫類は好きだったのだが、先日地元の博物館に行く機会があり、そこではく製の蛇を見て以来彼らのことが気になって仕方ない。 死してはく製にされた蛇たちはとぐろを巻いて、僕をじっと睨んでいた。 僕もその目を見つめ返した。蛇の目は丸く、瞳孔は刃物で裂いたように細く、黒い。 褐色の瞳に開いた黒い隙間に、僕は吸い寄せられるような気がした。この感覚には覚えがあった。早朝、朝日に照らされて目を覚ますと、その瞳はいつも僕の枕元

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        またたび日記9「飼い主(ぼく)のこと」

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        • またたび日記
          9本

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          またたび日記8「オトモアイルー」

           最近MH3rd(モンスターハンター3rd)にはまっている。まあ、就活中の息抜きだ。ハンマーをもともと使っていたが、今回は趣向を変えてランスを使っている。突進とカウンターが気持ちいい。昨日ジンオウガを倒した。 今述べたことは分からない人は分からないままで構わない。本編とは全く関係ない。 では、そもそもMH3rdが分からない人のために説明するとMH3rdとはPSP(プレイステーションポータブル)で発売された狩猟ゲームのことである。MHシリーズの第6弾だ(3rdなのに第6弾とは

          またたび日記8「オトモアイルー」

          またたび日記7「猫としねたら」

           僕が死ぬとき、傍らには猫がいて欲しい。  衰弱し、朦朧とした意識の中で猫のぬくもりだけを確かに感じて消えていきたい。  猫たちよ、君たちは知らないだろうけど、ただいるだけで人を幸せにする力を君たちは持っているんだ。君たちにその気がなくてもね。  ああ、最期の時を君たちといれたらなあ。 猫としねたら、僕はどんなに幸せなんだろう。 * 「ねえ、旅猫リポートって知ってる?」  車内には冷房の音とFMラジオが流れていて、母のその質問は最初よく聞こえなかった。 「え? 何?」  僕

          またたび日記7「猫としねたら」

          またたび日記6「猫と眠る日」

           猫の体調が良くなったと思えば、今度は僕が腹を壊してしまった。  下痢気味で、十五分ごとにトイレに立たなければならなかった。  今朝はピンピンしていたのに。  もちとだいふくが元気になった安心感からか、彼らが帰った寂しさからか、とにかくお腹が痛かった。(*またたび日記5参照)  とても座っていられず、座っているとすぐに腹がよじれ、便意を催した。  仕方ないので、僕は居間で寝転んでいることにした。  ほかの家族が皆学校や仕事に行っている間、僕だけ寝ているというのは何となく申

          またたび日記6「猫と眠る日」

          またたび日記5「また会う日まで」

           深夜、蒸し暑さでなかなか寝付けずにいると、毛布の中に何か入り込んでくるものがあった。ごそごそと動き回るそれにスマホの光を当てると、小麦色をした丸い物体が動いているのが分かった。 「ん……なんだ、もちさんか」僕が目をこすりながら言うと茶トラのもちは「にゃあ」と一声鳴いた。しばらく僕がもちの背中を撫でていると、今度は僕の腰に何かが飛び乗るのが分かった。光を当てると、闇の中に困り眉をした猫の顔がくっきりと浮かび上がった。 「おお、だいふくさん、どした?」だいふくは、僕の腰の上に座

          またたび日記5「また会う日まで」

          またたび日記4「ガラスのブルース」

           BUMP OF CHICKENの代表曲の一つ「ガラスのブルース」僕はこの曲が大好きでたびたび歌う。バンドの最初期に作られた曲でメンバーの初期衝動みたいなものが感じられ、歌っているとこっちまで初心に戻ったような熱い気持ちになる。何が何でも突き進んでやろうという気持ちになれるのだ。  夕方、大学の課題を一通り終えると無性に音楽が聴きたくなった。ちょうどその時、部屋では四匹の猫が食後の運動で部屋中を矢のように走り回りドタバタと騒がしい音を立てていた。仕方ないので、ウォークマンを

          またたび日記4「ガラスのブルース」

          またたび日記3「母」

           昼下がり、薄暗い部屋の中で午睡から目を覚ますと、二匹の猫が僕の傍らで丸くなり眠っていることに気づいた。しっかりと重なり合い、まるで一つの玉のようになって眠る猫たちを見ていると、自然に顔がほころぶのが分かった。僕は彼らにそっと手を伸ばした。そして、そのやわらかい毛に覆われた背中を優しく撫でてやった。ごろごろと、猫たちの喉が鳴る。気持ち良さそうだった。しばらく撫でていると、一匹の猫――レイがゆっくりと目を覚ました。重い瞼を半ば持ち上げながら、前足を探るように動かしていた。すると

          またたび日記3「母」

          またたび日記2「うちの猫たち」

           今日は、うちの四匹の猫、もち、だいふく、リン、レイについて説明しよう。  もちちゃんは茶とらだ。  熟した麦みたいな色をしている。ファーみたいな手触り。  しっぽは細くてしなやかだ。  人懐っこくて、話しかけるとみゃうと鳴く。  顔を近づけるとちゅうしてくる。  だいふくちゃんは色んな猫の特徴を持った猫だ。  茶とらのぶぶん、キジトラのぶぶん、アメショのぶぶん  かわいさてんこもりだ。  撫でると毛布みたいな触り心地でなんだか眠くなってくる。  しっぽは太くて短い。先が

          またたび日記2「うちの猫たち」

          またたび日記1「腕の傷」

           先日帰省してからというもの、実家の猫たちのことがひねもす気になって仕方ない。本を読んでいても、小説を執筆していても、履歴書を書いていても、マスをかいていても。いつだって頭の片隅には猫たちがいた。  我が家では現在四匹の猫を飼っている。もともと四匹は祖母の家で飼われていた猫たちだ。だが、数か月前母猫が事故で死に、多頭飼いが祖母一人には難しくなり、そのうち二匹が実家にやってきた。もう二匹も現在病気療養のため、動物病院に近い実家に滞在中である。実家に帰ってきて驚いた。夢にまで見た

          またたび日記1「腕の傷」

          阿呆よ、帰ってこい

          図書館から一歩外に出ると、途端に生暖かい空気が体を包み込んできた。気持ち悪い。十人のおじさんから一遍に熱い息を吹きかけられたような感覚だった。しかも、路上では発情した雄猫がしきりに雌猫に交尾を迫る始末だ。目に映る景色まで暑苦しかった。 早く涼しい場所へ。僕は足早に最寄りのコンビニへ向かった。 *  コンビニに入るや否や、体にまとわりついていた嫌な熱気はすぐに剥がれ落ちた。僕はしばらく商品を選ぶふりをして店内を徘徊し、すっかり涼んでしまうとクーリッシュを買って店を出た。  店

          阿呆よ、帰ってこい

          0と100・善と悪

           小学校の頃、僕をいじめていた少年はGReeeeNの曲をよく聴いていた。そいつはいわゆるガキ大将のような奴で、僕は彼にしょっちゅうぶん殴られ、からかわれていた。僕はガキ大将への反発心から長年GReeeeNをダサいアーティストだと決めつけ、聴かずにいた(そりゃあ、あんな暴力の権化のような奴が「二人寄り添って歩いて~♪ 永久の愛を形にして~♪」なんて歌っていても薄っぺらく聴こえるでしょう)。しかしちょうど三年前、GReeeeNの結成秘話を映画化した『キセキ―あの日のソビト―』を見

          0と100・善と悪

          詩:いつか天まで

          僕がせっかく苦労して建てた塔を お前たちはハンマーでなぎ倒してしまう 理由を聞いたって無駄だ 理由なんてないんだから ただ壊したいから壊した それだけのことだ 盛った犬が犯したいから雌犬を犯すのと同じだ 快楽が全てなのだ しかし、射精の後、すぐに虚しさに襲われてしまうのと同じように お前たちが満たされることはない だからまたすぐに標的を見つけてハンマーを振るいに行く そして束の間の快感を得る だがすぐに虚しくなり また壊す その繰り返し 死ぬまで続く馬鹿騒ぎ 僕らはしばしば

          詩:いつか天まで

          詩:朝を越えて

          あなたに会いました いつものようにたあいない会話で盛り上がって、私はあなたと笑っていました 幸せでした。たとえそれが夢であっても あんまりあたたかい夢だから、私はなかなか起きませんでした 目を覚ませばそこはがらんとした六畳間で、窓からは冷たい朝日が指しているのが分かっていたから 私は覚醒しかける意識をなんども夢の中に沈めて あなたに会いに行きました 夢の中でなんどもおはようを言いました 朝ごはんは何がいいかしら? いつもみたいに出し巻き卵を作ろうかしら、もちろんおひたしと

          詩:朝を越えて