詩:いつか天まで

僕がせっかく苦労して建てた塔を
お前たちはハンマーでなぎ倒してしまう
理由を聞いたって無駄だ
理由なんてないんだから
ただ壊したいから壊した
それだけのことだ
盛った犬が犯したいから雌犬を犯すのと同じだ
快楽が全てなのだ
しかし、射精の後、すぐに虚しさに襲われてしまうのと同じように
お前たちが満たされることはない
だからまたすぐに標的を見つけてハンマーを振るいに行く
そして束の間の快感を得る
だがすぐに虚しくなり
また壊す
その繰り返し
死ぬまで続く馬鹿騒ぎ

僕らはしばしば破壊を美しいと感じる
それは破壊は建設と比べて一瞬だからだ
そして簡単だからだ
破壊の気持ちよさ
それはよくわかる
でも、なぜか皆、そのあとに押し寄せる虚無に目を向けようとしない
それどころか忘れようとしている
いい加減気づけよ
全部幻想なんだってことに
破壊がもたらすのは悲しみと虚しさだ
魂の腐敗だ
そこから目を背け続けることは
ドラッグでトリップしてるのと何も変わらない
お前たちが欲した一瞬の快楽のために
山ほどの人間が傷ついてる
そこにはお前もいる
なにかを壊すのは、哲学でも芸術でもない
子どもの遊びだ
お前たちはいつになったら大人になるんだ

何かを建設する
それは破壊に比べてとても難しい
立派な御殿を立てたはずが、基礎がなっていないなんてことも往々にしてあるし
どんなに丹精込めて作っても
周りから笑われるようなおっちょこちょいのものしか作れないこともしばしばだ
けれど、それは破壊に比べて美しい
おっちょこちょいの建物を見てると
胸にくるものがあるんだ
背中を押されることがあるんだ
瓦礫の山を見てたってそんなこと感じないよ
僕らは神様がバベルの塔を壊してからずっと
手探りで塔を建て続けてる
理不尽な破壊に会ったって
何度でも作り続ける
いつか天まで届くと信じて
一生をかけて
それが人間だよ
壊すことしか能のない子どもには出来ない芸当だ

なあ、もういいだろ
いい加減帰ってこい 振り上げた拳が下せないのか それを下したところで僕は何も言わないよ むしろ誇るよ その勇気を
帰ってこい
そして
人間に戻ろう

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