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側面

人生長いと、いい話に出くわす。



   なるほどと思うことは、若い頃に多いが、歳をとると、何かと側面を気にする。



   (戦後、という言葉を漢字に変換するときに何故か真っ先に、1005が出てきた。もう戦後ではないのかとつくづく思った。)



   戦後間もない頃の、東京での話。闇市で、世の人々が、腹を満たしていた頃。闇市とは非合法なお店ということ。闇市で、お米を購入したという罪で、おばあさんが起訴された。そのお婆さんは、息子は戦地から還って来ず、お嫁さんは空襲で亡くし、育ち盛りの子供を二人抱えていた。当時の食料は配給であったが、遅配や間違いが多くあり、とても配給だけでは食っていけなかった。起訴されて裁判にかけられ、その時の地裁の判事は事情を察した。が、そのお婆さんは初犯ではなかった。法を守るため、その判事は、そのお婆さんに刑を処した。その判事は、その後一切、闇市の食材を食さなかったため、ついには餓死した。



   本当の話かどうかは知らない。それを調べもしない。真偽はどうでもいいのである。何が言いたいのかである。この話を私は、ある漫画で知った。どこで知ろうが、そこも問題ではない。いつ、なぜ、どこでは関係ないのである。要は、どう考えるかである。そしてどう、自分の中で消化して、結論めいたことを導けるかである。



   神様は何も観ていないし、声はかけないし、情けもかけない。



   死ぬことは悪いことでもないし、意志を曲げることは、誰にも防げないし、防いでもいいし、防がなくてもいいことなんだろう。時代のせいにもできないし、どれかにすることは、自分を偽ることにもつながってしまう事にもなりうる。



   側面は無限に出来上がっていく。



   そして、少しずつ球面になる。



   尖ったものは無くなっていき、何か分かりきったような老人になっていくのだろう。

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