雨に閉じ込められて


良人は歯ぎしりをたてている
靴が濡れることよりも
傘をさすことが鬱陶しくて
外出することを躊躇してしまう
部屋では独り、音楽を聴いている
今の時間昼寝をしてしまったら夜に眠れなくなるだろう
困るのは良人、判り切ったことなのに
馬鹿じゃないかと思う
わたしと対峙するのが怖いのか億劫なのか
小さな画面と常に向き合って
貴重な休みを過ごす良人も悲しい
何も話すことはない
空っぽな夫婦生活も悲しい
胃の腑を暖めるためのコーヒーをドリップしようかと
台所に立つが
眼が覚めてしまうことを懸念してしまう黄昏時に
本当は二人、別々に過ごす方が気が楽だ
お互い気づいている
おはようもありがとうも
最近は聞かれなくなった二人
一緒にいる価値ってあるの
毎度ぐるぐると心の中でなぞる言葉
離れる
そういう選択肢もありっちゃあり
くだけた言い方で本質を隠すことはできないけれど
がさがさとふすまの音がして
良人が起き出しそうな気配
貴方が眠っている間
わたし孤独と向き合っていたのよ
コーヒーを淹れよう
くだらない言葉を吐く前に

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