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恋の調べ【ショートショート】

「今日も吹いてる」

 部室に向かう途中の廊下を歩いていても彼のクラリネットだと分かるのは、毎朝誰よりも早く彼が部室に来て練習しているのを知っているからだ。
 どんなに早く学校に着いたつもりでも私はいつも二番目で、優しくも強かに響く彼の音色を一番に聞かされている。

 四月に出会ってから立春を迎えた今でも、まっすぐで変わらない。


 邪魔にならないよう音が途切れた瞬間に部室の扉を開け、いつも通り「おはよう」と彼に声をかける。

「今日も早いね」

 にへらと笑う彼の顔を、なぜだかまっすぐに見れず、思わず目を逸らしてしまった。


___鳴り止まない鼓動が、唯一変わってしまった彼への想いを告げている。



実は、先日行われていた下記のイベントにて「恋の調べ」を印字したしおりを配布していました… !

あえて字数を制限して文字を紡ぐというのは、なかなかに窮屈でしたが、その分だけ言葉が洗練されていく感覚が楽しかったので、不定期で執筆していこうと思います!

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