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ザ・リーサルウェポンズをまだまだ広めたい

先日書いたザ・リーサルウェポンズについての記事を、なんとポンズアイキッドセンセイ本人にリツイートされるという予想だにしなかった事態…。

自分のアイコンの海賊版感

読んで頂けた人にも概ね好評なようなので大変嬉しい。

気を良くしたので調子に乗り勢いに任せ新たな記事を書こうという算段だ。

今回のコンセプトは
【誤解して受け取られがちなポンズの曲】
に関してだ。

前回にも書いたが、センセイの書く歌詞はなかなかに風刺が効いている。
ともすれば毒とも受け取られかねないほどに。

そして一見・一聴すればどう見ても毒にしか見えないが、実はそれだけがテーマじゃないという曲もあるのだ。

もちろん詞を書いた本人ではないので、『あるのだ』と言い切った所で間違っている可能性も多々ある。
だから「こういう見解もありか」という、気楽な気分で読み進めてもらえるとありがたい。

では早速一曲ずつ見ていこう。
幸いポンズの曲は全ての曲のMVがYouTubeにアップされているので、動画リンクも交えて紹介していく。


パーティースーパースター

タイトルと動画のサムネだけでも解るほど、ハロウィンをテーマにした曲だ。

スクランブル交差点を仮装して行き来する若者達。
騒いで酒を飲み街を荒らし、自己承認欲求を満たすためだけにハロウィンという日を利用する…。
一聴すればそんな一部の人たちへの苦言を呈した曲だ。

だがセンセイ自身は「Dメロに言いたいことがある」と言っていた。
その歌詞はこうだ。

本質なんて知ったこっちゃない
Puppet party people just be dancin' until they die

後半の英語をDeepL翻訳で訳すとこうだ。

傀儡党員は死ぬまで踊り続ける

若干分かりにくいが自分はこう解釈する。

本質も知らないままでは、自ら踊っているのではなく死ぬまで踊らされる操り人形と一緒だと。

要はただ若者をディスっているのではなく、色んなことの本質や意味を理解しましょうねという曲なのではないかと思う。
そうでないと浮かれてるつもりが社会に搾取されているだけになるよと。

もちろんこれは拡大解釈になるが、そういう注意喚起なのではないかと思う。

「騒いでるBAKAどもめ!うるせーぞこのヤロー!」という怒りではなく、
「ああ可哀そうに…知能がちょっとあれなんだね…」という、一歩引いたクールな大人の目線の曲ではないだろうか。

もちろんそこを可哀そうに思うこと自体が物凄い皮肉でもあるのだが、センセイのスタンス的にはどうもこちらで正解なのではないかと思っている。


特攻!成人式

こちらも一目で解る通り、成人式で荒ぶって暴走してしまう若者を歌った曲だ。

歌詞にわざと間違った字を使ったり、田舎のヤンキーあるあるが並べられていたりと、ポンズの中でも相当ウィットに富んだ一曲だ。

これもただ聴いただけ、歌詞を見ただけではそういうヤンキー…
DQNを小馬鹿にしたように感じるだろう。

自分もある程度までそう思っていた。

だがセンセイ自体の発言を加味していくと、これは都会と地方の格差社会をテーマとしていることが解る。

歌詞に出てくるような王道を地で行くようなDQNは、大体が地方や田舎に多い。
統計を調べたわけではないが、多くの人が概ねそういうイメージを持っているはず。

だがそんな荒れた時代を過ごした若者も、いつしか子供が出来結婚する(あえて順番はこうしてある)
MVの中でもそうやって家族が出来る光景が切り取られている。

そうやって地方に残り、都会に出ることもなく一生を終えていく…
そんな人間の社会性を歌ったのがこの曲ではなかろうか。

地元の絆はハンパねぇからこそ、
その絆に縛られる。
都会に出て一旗あげることもないから、
成人式が人生さい後の晴れぶ台になる。

井の中の蛙のように、オレたちマジハンパねぇと叫び、一生ブチかましてぇといきり立つ。

そう思うと迷惑行為を働く新成人の背中にも、一種の物悲しさ・寂しさが垣間見えてくるだろう。

やはりこれも引いた位置から遠い目で見ているような、そんなスタンスの曲に思える。
センセイから新成人に向けられている感情は、一言で表現するなら哀れみの類だろうか。


押すだけDJ

タイトルのインパクトが凄いが、
その歌詞も非常に辛辣だ。

楽器も弾けない、なんにもやってないのに指先ひとつでフロアを湧かすDJ。
曲のチカラを自分のチカラと勘違いし、他人のふんどしで相撲を取っていると言及。

聴きようによっては全てのDJを敵に回すような、壮絶なディスりソングだ。
パっと耳にしてポンズを毛嫌いしたDJもいるとかいないとか…(でも多分少なからずいると思う)

そんな一曲だが、
決して全DJをバカにした曲ではない。
もしそうだとしたらそもそもDJ会の大御所、DJ KOOがMVやライブに出演するわけがないのである。

一部のDJ気取りのナニカ、こそディスってはいるだろうがちゃんと音楽としてやっているDJも多くいることを解った上でセンセイは作っている。

なのに曲解して受け取られかねない曲を
なぜ書いたのか?

それはこの曲のラストの部分が全てだろう。

Composer Song writer
Track maker Music arranger
Producer Mix engineer
All respct しいや DJ

要はDJの行為そのものが悪なのではなく、曲を作った人たちに感謝もせずただ素材としてだけ曲を使うDJが悪、ということであろう。

裏を返せば「一生懸命楽曲作ってる我々にもたまには感謝してほしい」というアイキッドセンセイの嘆きみたいなものだ。
その感情をボソっと言いたいがために、健全なDJをも敵に回す覚悟で曲を作ってしまう…。

そういうところがセンセイの『可愛さ』みたいなものであり、(主に)女子のポンザーから好かれる一面なのだと思う。


シェイキン月給日

ジョーいわく「オカネソング」な、ストレートにお金にまつわる一曲。
タイトルからも解る通り、月給日までのひもじい生活を歌っている。

うまいstickをねだる、とんかつを奪う、鳩メシを横取りする、お供えをパクる…と貧乏を盾に取りやりたい放題のMVが非常に面白く中毒性のある曲だ。

言葉選びや言葉遣い、ハネるようなリズムに転調と、ポンズ曲にしては非常にスタイリッシュかつオシャレであり名曲の一つだ。

曲を通してお金のない生活を歌っているのは間違いないのだが、肝はCメロ(ブリッジ?)の部分だ。

スクネエ スクネエ メチャスクネエ
ギョウシャニヒカレテ メチャスクネエ
スクネエ スクネエ メチャスクネエ
ナカヌキ ピンハネ メチャスクネエ

この部分は機械加工されたようなコンピューター的な歌声になっていて、まるで精密に働き続けるワーカホリックと化した日本のサラリーマンを揶揄しているようだ。

『現代の奴隷 派遣社員』といった歌詞からも
ステレオタイプな日本人イメージを意識しているはずだ。

そして歌詞からは決してダラけた生活をしてるから貧乏なわけではないことが窺える。

いくら懸命に働いても預かり知らぬところでなぜか目減りする日本の給与・賃金、その他お金にまつわるシステム。
そういったものを生みだす日本社会への不満や怒りを表現している曲だと個人的に思う。

ただ単に「お金がナイ!」「貧乏で困っちゃったよw」というような
コメディっぽい曲ではないと考えている。
無論、他の歌詞やジョーの演技や動きなどで面白おかしくカモフラージュしてはいるのだが。


プータロー

元ネタはジューダス・プリーストの
Breaking The Law。
↓↓↓↓

曲調もタイトルもそれをオマージュしたものだ。

日本で呼ばれるプータローよろしく、いわゆる働かない人間やニートの日常を歌った曲だ。

一部の人が聴くと非常に耳が痛いのでは、となるくらい堕落した生活が描かれている。

やること nothing
予定は blank seet
実家に parasite
Motivation 出ない

この出だしの歌詞だけでも現代社会のニート問題を色濃く反映していて非常に痛切だろう。

極めつけは

365連休
Lonely endless long vacation
働きたくないでござる

である。
ここまで言われるともはや逆にすがすがしくさえ思えてくる。

こんな感じで全編を通して働かない人、あるいは働きたくても働けない人について歌っているのだ。

そのこと以外に何か別のテーマがあるか?とも思われるが、そのタイトルに全てが詰まっている。

歌の途中で挟まれるのだが、
タイトルの『プータロー』を連呼する箇所がある。
しかしその最後の部分の歌詞は『Pooh the law』である。

日本語に直すと…『クソったれの法律め』と言った感じだろうか。

元ネタのBreaking The Lawは法を破れ、殻を破れといったニュアンスだがプータローは法や秩序に対してツバを吐くようなイメージがある。

これもまた、ニートに対しての憤りではなくそういう人達を生み出す社会に向けての歌ではなかろうか。

働かないことを責めているのではなく、働く意思を阻害する社会や法の是非を問うている…
と書くと言い過ぎかもしれないがそういった面を含んでいる楽曲なのだろう。

I have no dream no desire
(私には夢も希望もない)

Cuz drop out lost generation
(なぜなら失われた"ロスジェネ"世代の落ちこぼれだから)

敗戦処理の set upper みたいな life
(この人生は戦後復興の中継ぎでしかない)

かなり自分の意訳ではあるが、
この部分からも明らかだ。

仕事や労働の方より、社会に対する悲哀がヘビーにこちらに伝わってくる。
ただ愉快にプータローを罵っているわけではないのである。

ちなみに余談だが、MVの中で出てくるスーツ姿にグレイヘアをセンター分けのジョーはめちゃくちゃ男前でカッコイイ。
ジョーに対して「ああ、あのコミカルなカッコしたパーマ頭の兄ちゃんでしょ」というイメージしか持ってない人にはぜひ一度視聴を薦めたい。


最後に

ここに採り上げた以外の曲にも、ポンズは意外と大小様々なテーマが見え隠れしている。

ポンズを有名にするのに一役買った『きみはマザーファッカー』も【きみ】と言いつつやはり向けているのは個人にではない。
一部の非常識な人間や信じがたい部類の人々に対しての心の叫びなのだ。

『マハラジャナイト』も曲やMVは純度100%のディスコソングだが、内容は権利や利益優先のあくどい人々への魂の咆哮である。

こうやって見ていくと、ポンズの楽曲は社会だったり世間だったりあるいはルールやマナーだったりと、『ナニカ大きなモノ』に対しての反骨精神の要素が大変に多い。

ポップで楽しいサウンドと裏腹に、下地にあるのは非常にパンクな精神だ。

だがそこを前面に押し出すと、メッセージ性が強くなりすぎるし何よりアラフォーの2人組がやるには『イタく』なる懸念があっただろう。
パンクは、社会にフラストレーションを溜めた若者がやるからこそ大きな意味を持つ面も少なくないのである。
(もちろん年齢を重ねても色褪せないパンクの人たちも大勢いる)

エッジが鋭くなりすぎる危険性を丸くしているのが、前回エントリーでも書いたジョーの声質やその人間性なのだ。
(前回記事はこちら↓↓↓↓)

つまりは
【Anarchy in the U.K.】
ではなく
【穴開き・イン・ザ・J.P.】
だ。

それくらい軽く、丸く、脱力させて曲を作り上げるセンセイの手腕は、本当に見事としか言いようがないのだ。
そしてそれをしっかり表現できるサイボーグジョーの能力とセンス。

この二人でしかザ・リーサルウェポンズは成立し得なかっただろう。

ポンズをまだよく知らない人には声を大にして言いたい。

「見た目はコミックバンドだけど、中身は社会派バンドだよ」と。


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