明星圭太

脚本マン、小説マン、エッセイスト

明星圭太

脚本マン、小説マン、エッセイスト

マガジン

  • 深淵を覗き込むかのようなエッセイ

    人間の心の奥を覗くという稀有な体験を提供。

  • 小説「NOT FOR SALE」

    ある日、高校の頃の友人が俺にこう言った。 「俺に、感情を売ってくれないか?」 全6話のオリジナル小説。

  • 100のコントから厳選されし10本

    1日1本、100日書き続けたコントの中から選ばれた10の作品。

  • 目を見張るほど多種多様なコンテンツ

    脚本でもエッセイでもない、多種多様なコンテンツ類。

  • 100のコント台本

    2020年1月〜4月に行なった、1日1本を100日書き続けるという挑戦の全記録。

最近の記事

【エッセイ】半年前やりたかったことが、みるみるうちにタスクになっていく

締め切り。 例えるならそれは、脳みそにできた口内炎。 物を食うたび鈍痛が走るように、生活の随所でその言葉が頭をよぎる。 そのうちどんどん肥大し、気づけば看過できない大きさになっている。 もっと早いうち対処しとけば、こんなサイズには……! もう遅い。 「間に合わない」という激痛。そして後悔。自己嫌悪。現実逃避→更なる後悔(≒このナミダ・ナゲキ→未来へのステップ)。 そして、自然治癒。 そう、締め切りにおける一連のすったもんだは、喉元過ぎれば熱さを忘れてしまうことにその病理がある

    • 【エッセイ】櫻井翔 未来への言葉展

      に、行ってきました。 (以下、大いなるネタバレを含みます) もともと嵐のファンで、いわゆる”推し活”の一環として赴いた、この展覧会。 エントランスの待機場所には、壁面にポップな櫻井氏の近影の数々。 あ、嵐のイベントだ。懐かしいな〜。 まんまとエモ楽しい気持ちにさせられ、いざ中へ。 そこには、およそアイドルのイベントとは思えぬほどの、文字、文字、文字。 会員限定のブログで綴られたアーカイブの数々が、壁にびっしりと記されている。 来場者は一様に目を細めながら、その小さな文字を

      • 【エッセイ】上手くやろうとした瞬間、何も上手くいかなくなる

        役者デビューしました。 普段からお世話になっている西本健太朗さんのワークショップ・ACT HOUSEに去年の10月から通っていて、その卒業公演という形で、つい先日、初舞台を踏んだ。 コントやら漫才やらで人前に出たことはあるが、本格的な芝居は初めて。 しかも主演だ。 2時間、ほぼ出ずっぱり。 膨大なセリフに加え、結構しっかりめのダンスシーンまである。 プレッシャーは、、、、、正直、全くなかった。 だって俺、もともと脚本家だし。 脚本家に「芝居が下手くそだ!」とか言われても、そ

        • 【エッセイ】2022年12月34日

          人生の分岐点に毎日立っているような1年だった。 本当に疲れた。 一挙手一投足、一瞬の選択が今後の人生を左右する気がして、それが自分を大胆にもしてくれたし、萎縮もさせた。 去年まで一緒にフーテンしていた連中は軒並み就職し、いよいよフーテン組は俺一人になった。 結婚した友達も格段に増えた。 暇さえあれば焦っていた。 焦る暇を与えないようにパソコンへと向かった。 「こんなことしてていいのか?」と、毎秒耳元で悪魔が囁いていた。 天使はずっとベッドに引きこもっていた。 諦めないことしか

        【エッセイ】半年前やりたかったことが、みるみるうちにタスクになっていく

        マガジン

        • 深淵を覗き込むかのようなエッセイ
          37本
        • 小説「NOT FOR SALE」
          6本
        • 100のコントから厳選されし10本
          10本
        • 目を見張るほど多種多様なコンテンツ
          13本
        • 100のコント台本
          100本
        • かつて人前に姿を現した台本
          3本

        記事

          【エッセイ】行儀なんて知らなければ、俺だってクチャクチャ言わせながら飯が食えた

          小さい頃、家族で回転寿司へ行った。 目の前を踊るように回る寿司たちは、さながら「パルプフィクション」のトラボルタとユマサーマンに見えた。 あれは俺にとってツイストだった。 瞬時に心躍った俺は、来るもの拒まずの精神で寿司をどんどん回収し、バクバク食べた。 するとすかさず、母親からの指導が入る。 箸の持ち方が汚い、逆の手をお皿に添えなさい、落ち着いて食べなさい——。 幸せな食事に水を注されて、俺の食欲は急激に減退した。 ふと見ると、隣の席も家族連れで、俺と同い歳ぐらいの女の子がい

          【エッセイ】行儀なんて知らなければ、俺だってクチャクチャ言わせながら飯が食えた

          【短篇小説】ガム

          味の多い生涯を送ってきました。 と言っても、毎晩フルコースを嗜むような貴族の家の者ではありません。 むしろ母は、父の身体を心配して塩の少ない料理を出していました。 我が家の筑前煮は、茶色よりもむしろ素材本来の色が主張し合って、目にも鮮やかだったと記憶しています。 私の舌が、鋭すぎたのです。 と言っても、蛇の舌先を想像してはいけません。 鋭いのは形状ではなく、私の舌に張り巡らされた味蕾です。 私の味蕾は、3月下旬の桜です。 今にも花開かんとしています。 ちょう

          【短篇小説】ガム

          【エッセイ】死にたいんじゃなくて、死んでもいいと開き直って生きてみたいだけ

          大学受験を翌日に控えた夜。 俺は勉強するでもなく、公園のベンチに座っていた。 いろいろと理由はあるけど、要するに全てが面倒臭かった。 勉強したくなくて、何かしたいとだけは思っていて、かと言って明確にやりたいこともなくて、結局それって勉強したくないだけじゃね?とか思って、でもやっぱり何かしたくて、何かは分からなくて。 嫌でもそんなことを考え続けてしまうことが面倒臭かった。 死にたいけど、死ぬことすらも面倒だった。 孤独を演出するためにわざわざ公園のベンチに座っている自分すら、嫌

          【エッセイ】死にたいんじゃなくて、死んでもいいと開き直って生きてみたいだけ

          【エッセイ】俺、倫理マンじゃん

          TikTokでたまに、外国の調子こいた奴が街中でシャレにならないドッキリを仕掛けるみたいな動画が出てくる。 最後まで観る前に、コメント欄を覗いている自分がいる。 炎上気味だと「やっぱな」と思うし、賞賛されていると「これセーフなんだ」と思う。 そこでふと気づく。 俺、倫理マンじゃん。 自分がどう思うかより、これが世間的にどういう評価が下されてるかの方が気になってるじゃん。 ただの倫理マンじゃん。 あるいは、YouTubeで誰かの新曲を聴いている時「このサビ、〇〇(別の曲)に似て

          【エッセイ】俺、倫理マンじゃん

          【6話】 NOT FOR SALE

          砂川の口から語られる評価の数々は、 書いていない俺でさえ、耳を塞ぎたくなるものだった。 それはひとえに、その全てが残酷なまでに的確だったからだ。 砂川 「登場人物同士が、作用し合ってないんだよね」 砂川 「それぞれが自分の意思で勝手に動いてて、影響し合ってないんだよ」 砂川 「だから、読んでて1ミリも感動しない」 砂川 「人と喋ったことないんだろうなって奴の文章だね、これは」 砂川 「小説の前に、コミュニケーションから勉強した方がいいと思うよ」

          【6話】 NOT FOR SALE

          【5話】 NOT FOR SALE

          高校の頃から、何も変わっていない。 変わったといえば、書くのがノートからパソコンになったことぐらい。 パソコンの方が、言葉が浮かんでから出力までのラグが少なくていい。 言葉の鮮度が落ちない気がする。 ペンの速さだと、文字に起こしているうちに嘘になってしまう。 それでは意味がない。 僕は、小説に嘘は書きたくない。 矛盾しているようにも聞こえるが、嘘を嘘のまま書いた話など、誰も感動しない。 優れた芸術とは、必ずそこに作者の本心が潜んでいる。 そ

          【5話】 NOT FOR SALE

          【4話】 NOT FOR SALE

          記憶を刺激されたのは、俺も同じだった。 確かにみんな、喜一のことは『天才くん』と呼んでいた。 いわゆる、アダ名だ。 しかし問題なのは、誰も喜一の前でそのアダ名を口にしていなかったことだ。 部員5 「懐かしいなあ、天才くん」 部員6 「なんでそんなアダ名が付いたんだっけ?」 部員7 「いつも教室の隅で、なんか書いてたからじゃない?」 部員8 「小説だろ? まだ書いてんのかな」 部員9 「流石にもう書いてないだろ、この歳で」 部員10 「いや、

          【4話】 NOT FOR SALE

          【3話】 NOT FOR SALE

          テッテレー。 場違いな効果音が、頭の中で盛大に鳴り響く。 ……テッテレー? いや、仮にこれが悪趣味なドッキリだったとしても。 今までの甘いひとときは、事実として俺の胸の中に残り続ける。 それって、厳密にはドッキリとは言えないんじゃないか? だってもう抱いちゃってんだから。 ていうか、喜一、いつ結婚してたんだ? 久弥 「どういうことですか」 ひとまず、渦巻く疑問をこの一言に全て集約した。 玲子 「喜一から、変なこと頼まれませんでしたか」

          【3話】 NOT FOR SALE

          【2話】 NOT FOR SALE

          久弥 「感情を売る?」 疑ったのは、耳だけではなかった。 コイツはとっくに、フィクションと現実を混同してしまっているのかもしれない。 喜一 「早い話が、俺に新しい感情を植え付けるような何かをしてほしいんだ」 喜一 「悲しませたり、怒らせたり、絶望させたり」 喜一 「なるべくネガティブな感情がいいな」 喜一 「ポジティブな気持ちからは、何も生まれないから」 久弥 「それをするごとに、お前が俺に10万払うってことか?」 喜一 「必要ならもっと出すよ

          【2話】 NOT FOR SALE

          【1話】 NOT FOR SALE

          腹が減って、目が覚める。 およそ俺の人生は、腹が減る以外に目を覚ます理由がない。 だから、腹が減ってくれることに感謝しているし、絶望もしている。 布団から上体を起こすと、自動的にパソコンに向かえる“仕組み”になっていて、 その勢いのまま作業に取りかかる。 食べかけのジャムパン。 30歳の男が、1つのパンを2日に分けて食べている。 美味しいからとっておきたいとかじゃなく、一気に食べ切る元気がない。 それを平らげる頃には、あらかた編集は済んでいる。

          【1話】 NOT FOR SALE

          【エッセイ】時間とは、秒針と同じリズムでハイヒールを鳴らし歩くイイ女

          なんでか分からないけど、いつも時間が足りない。 別に朝から晩まで働いているわけでもないのに、昼まで寝てるわけでもないのに(たまにあるが)、なぜか時間がない。 忙しくないのに忙しい。 最近、そんな自分に業を煮やし、1日の行動を詳細に記す日記を始めた。 1日の始めに予定を書き、答え合わせのように実際のスケジュールを書く。 そこまでやっているのに、平気で3日ぐらいスルスルと時間が経っていることに気付く。 体感1日ぐらいなのに。 時間ってたぶん、髪が長くて後ろ姿がめっちゃ可愛い女なん

          【エッセイ】時間とは、秒針と同じリズムでハイヒールを鳴らし歩くイイ女

          【エッセイ】死んでもいいとか言っといて、頭皮がちょっとピクピクするだけで怖くて眠れない

          昨日、パソコンに向かっていると、左こめかみの上あたりがピクピクと痙攣するのを感じた。 ピタッ、と、水を打ったようにキーボードを打つ手が止まる。 全神経が、左こめかみの上あたりに集中する。 確かに皮膚がピクピクしてはいるが、特別痛いわけではない。 ——これ、死なんよな? めちゃイケだったら、右下に「死?」という面白テロップが出てるな。 とか考えるぐらいの余裕はある。 一向に激痛が襲ってくる気配はない。 怖くなってそのまま検索タブを開き、「頭皮 ピクピク」とサーチする。 「頭

          【エッセイ】死んでもいいとか言っといて、頭皮がちょっとピクピクするだけで怖くて眠れない