【エッセイ】時間とは、秒針と同じリズムでハイヒールを鳴らし歩くイイ女

なんでか分からないけど、いつも時間が足りない。
別に朝から晩まで働いているわけでもないのに、昼まで寝てるわけでもないのに(たまにあるが)、なぜか時間がない。
忙しくないのに忙しい。
最近、そんな自分に業を煮やし、1日の行動を詳細に記す日記を始めた。
1日の始めに予定を書き、答え合わせのように実際のスケジュールを書く。
そこまでやっているのに、平気で3日ぐらいスルスルと時間が経っていることに気付く。
体感1日ぐらいなのに。
時間ってたぶん、髪が長くて後ろ姿がめっちゃ可愛い女なんだろうな。
秒針と同じリズムでハイヒールをカツカツと鳴らし、良い匂いをさせながら目の前をフワッと通り過ぎる。
待ってくれよぉ〜!と童貞根性全開で追いかけているうち、平気で1年が経つ。

日記を振り返る。
「作業」という名目で組み込まれた時間を見ながら、回顧する。
実際に何かを書き始める前に、腕を組んで「ん〜〜〜」と唸っていた時間があったな。
作業として計上してはいるが、果たしてあの時間は作業に入るんだろうか。
ボーッとしているわけではない。
例えば脚本を書き始める前、ある程度頭の中でシミュレーションをする。
そのうちキャラが立体的に動き出して、「あ、いけるかも」と思った瞬間、それを文字に起こし始める。
つまりパソコンに打ち込まれた文面は、過程ではなく結果である。
答えだけが並んでいる。
——しかし、そうである必要ってあるんか?
初稿があれば2稿があって、3稿も4稿もある。
何度も書き直すチャンスが与えられる。
なのに初っ端から正解めいたものだけを書く必要って、ある?
俺の時間を奪っていたのは、おそらくこの「ん〜〜〜」の時間だ。
このせいで俺は幾多の〆切を過ぎ、自分で自分の首を絞め、時間という女に逃げられてきた。
時間の横をそれとなく歩きながら「お茶でもどうです?」「シーシャとか好きっすか?」と声をかけていればいいものを、
何と声をかけるか「ん〜〜〜」と考えているうち、時間はどんどん先に進んでいってしまう。
マジで童貞じゃん。
誰もお前のことなんて見ていないんだから、スカしてないでさっさと声かけろや。

と、言ったはいいものの。
いざそれを止めるとなると、結構な勇気がいる。
ナンパだって、最初はめちゃめちゃ勇気いるでしょ? したことないけど。
つまりこの「ん〜〜〜」という時間こそが、今まで自分の作品のクオリティを担保してきたのではないか?という懸念があるのだ。
実際、時間をかけた方が色んな案が出るし、その分選択肢も増える。
深く考えた方が、良いテーマが浮かんでくることもある。
でもそれでは、いつまでも時間に逃げられたままだ。
人生は限られている。
例え良作を10本書いたとしても、その間に100本作る奴の方が、おそらく成長の幅がデカい。
自分で自分に下す評価より、他人からの評価の方が大事だからだ。
たくさん作って人目に触れて、評価に晒されながら研磨される方が何倍も効果的だ。
だったらもう、「ん〜〜〜」は他人に委ねた方がいい。
俺は書く。
例えそれが固まってなくても、定まってなくても、自信がなくても、とりあえず書く。
書いて書いて書きまくって、いつか時間を口説き落とす。
そして、俺の腕枕でスヤスヤと眠る時間を見ながら、こう言うだろう。
俺、売れたな——。

というわけで、その一環としてこのエッセイは30分という縛りを設けて書いてみた。
いつもは1〜2時間かかるところを、無理矢理にでも30分に収めた。
果たして俺の言説が正しいかどうかは、このエッセイのクオリティが語るところだろう。
ん~~~、どうでしょう。

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