煉獄さんと会議

先日USJに行った際、不思議なメニューに出会った。『牛鍋&焼きカレーセット』。鬼滅コラボのレストランで、煉獄さんをイメージしたメニューらしい。

メニューには写真も載っているが、どこからどう見ても一人用の鍋と分かるメインの皿と、奥の方に汁物。こちらは味噌汁的なやつだろう。

友人とメニューを見ながら、

「え、焼きカレー?」

「これ鍋やんな?もう1皿別であるってこと?」

「それは多いやろ。この味噌汁も味噌汁やんな…」

「え、じゃあ鍋がカレー風味なんかな?」

と様々な考察をするが結局答えは出ず、とりあえず2人で頼んでみた。

30分ほど友人と、その良い感じの人の話で盛り上がっているうちに、料理を受け取るカウンターまで来た。料理を作る手元がガラス越しに見える。

カウンターを進んでいくとだんだん完成していくそのいっちばん最初の段階、リカちゃん人形でいうと白のパンツとキャミソールだけの状態のときに、それは鍋に入っていたが、どこからどう見ても焼きカレーだった。

え、焼きカレーの上に具を乗せて、鍋っぽくしてるん?

それって「&」で繋げるので合ってる?上下で区切るセットメニューなかなか見―へんで。

カウンターを進むにつれて、立派なしいたけや渋い葉っぱ、ついにはお豆腐まで乗せられて、焼きカレーはどんどん鍋っぽくなっていった。

余談だが焼き豆腐とカレーはめちゃめちゃ美味い。


かつてないタイプの料理は思ったよりも美味しかったが、このメニュー、商品開発の会議の段階でどう考えてもモメている。

鬼滅は子どもに絶大な人気を誇るねんからみんな大好きなカレーで行くべきや派と、鬼滅の世界観を忠実に再現するためには和風であるべきだ派が明確にケンカしている。

長―い会議の末、調子の良い若い社員が、「それやったらいっそカレーの上に鍋の具置いたらどうですか?」と仲を取り持ち、「何言うてんねん。美味いわけあらへんがな。」と言いながら食べて「美味いわ」と手のひらを返した結果GOサインが出て、提案した社員は俺が会議を上手くまとめたとドヤ顔していたことだろう。


いや私は普通に無限列車で食べていた牛すき焼き弁当が食べたかったけどな。


会議というのはシニカルな笑いの宝庫だと思う。

もちろん自分は当事者としてではなく、無関係の立場でモニタリングするのがベストだ。

当事者になった瞬間結構真剣に意見言い出しては皆の顔色にヒヤヒヤするのに必死になって周りのことなど見えていない。


人が決めあぐねている様子や、欲望と理性の狭間で揺れた結果欲望に押し負かされる瞬間はたまらない。昔ロッチだったか、コント師がバイトの面接でスペックや条件全て完璧な女性と巨乳のどっちを取るかの会議のコントをしていたが、あれはその最たるものだと思う。三谷幸喜の『12人の優しい日本人』も一生笑える。多分三谷幸喜も会議にロマンを感じる人間だろう。


就活生としては、グループディスカッションなんかもかなり面白い。めげずに自分の推しのアイデアをちょこまか挟んでくる人、グルディスは俺に任せろみたいな雰囲気でファシリテーターのことを「ファシリ」って呼ぶ人、試験官が通る瞬間だけ元気に発言しだす人。

就活経験者しか共感できないからあまりメディアの題材で使われないが、もっと知名度が上がればコントに絶対に使ってほしい題材である。できれば5,6人は欲しいが、別に超新塾さんにはやってほしくないので3組くらいがコラボでやってください。

就活を題材にした『何卒』という映画があったが、あれはその痛々しさを笑いに変えずに可哀想な就活生として描いていたので、なかなか辛辣だった。コント師の方は今すぐあの気の強い女の子を笑いに昇華してあげるべきだ。


主人公のちっちゃいバージョンが脳内で会議しているやつも面白い。ディズニー映画で『インサイド・ヘッド』というのがあるが、あれは面白いし何回見ても泣ける。


今日も世界の至る所で会議がなされているが、大抵は企画とかなので守秘義務があるため、それを楽しめる立場の人にその様子が提供されないのが残念である。世界中のコメディを愛する人たちに、会議を題材にして眉間に皺を寄せた真面目な人たちを存分に笑いの対象に変えてほしい。


柱合会議はかっこいいが勝ってしまうので、また別物である。

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