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オフィスビルより森の中。あるいは浜辺。

こんにちは。移住計画中のharuです。
移住に向け(なくてもやるべき)、ずーっと使ってなかった銀行口座の解約に行って来たのですが...



その銀行ロビーは、入った時からなぜか居心地が悪かった。

受付の男性が無駄に大きな声でロボットみたいに喋るから?

うん、それはある。でもそれだけじゃない。

思ったより待ち時間が長そうだから?

それは覚悟して来た。
最近は銀行の窓口も予約して行くものらしい、とは知っていたけど、当日の枠は埋まってた。でも絶対今日済ませたい。
なあに、本さえあれば1時間やそこら待つのはどうってことない。読書タイムと思えばいい。

それでロビーの椅子にどっかり陣取り、本を開いてみたのだが。
全然読めない。1ページも読めない。
どうしても落ち着かないのだ。
何かが不快。神経にさわる。
ここはとても居心地が悪い。
なぜだろう。

そして気付いた。
BGMのせいだ。
ここのBGM、なんか変。趣味悪い。
イライラの原因はきっとこれだ。

別に演歌が流れてるとかではない。(演歌をディスってるわけでもない)
聞いたことある曲。Jpopがピアノアレンジされているようだ。それはまあよい。ただ、そのアレンジがなんか変だ。

必要なメロディラインを追っただけ、コードを合わせただけ、一定のリズムと一定の音量。体温のない音楽。これは音楽なのか?

それに時々「カチャッ」という妙な音がする。あれ、どこかで聞いたような...

わかった!これはあれだ。自動演奏ピアノだ。そうに違いない!

音が聞こえるのは私の後方。そこにアイツがいるのは間違いない。この目で睨みつけてやりたい。でもできない。振り向いたら後ろの席の人と目が合っちゃうから振り向けない。

イヤホンで耳をふさぐ。読書をあきらめてスマホをいじってみる。それでもあの音がどうしても耳に入ってくる。だいたい、BGMにしては音量が大きい。気になってしょうがない。ああ、もう何もできない。助けてくれ...

ああ、これはオフコースの「さよなら」だ。多分もう3回目だ。名曲なのに嫌いになりそうだ。早くここからさよならしたい。

他のみんなは平気なんだろうか?こんなに不快な環境で長時間待たされて。

あのロボットみたいな受付の男性や窓口の行員さんたちは平気なんだろうか?毎日この環境で仕事をしてるのか?だったら恐るべき忍耐力だ。悟りを開いてるのか?私なら耐えられない。

何もできないままイライラと闘うこと約2時間。ようやく私の順番が来た。解約手続きはものの3分でおわった。

闘いを終えて出て行くとき、私は最後にアイツを見た。アイツは予想通り、ロビー後方にいた。そして時々「カチャッ、カチャッ」と音をさせながら悲しくオフコースを演奏していた。

ごめん。アンタが悪いんじゃないのよ。アンタだって、ほんとは誰かに弾いてほしいよね。プロじゃなくてもいい。下手でもいいから、ちゃんと血の通った音楽をね。
せっかくピアノとして生まれてきたのに、弾いてくれる人も聴いてくれる人もなく、冷たい銀行のロビーでカチャカチャ音を出し続けるだけなんて、悲しすぎる。
アンタこそ、移住した方がいいね。

それにしても「趣味の悪いBGM」ごときで、ずいぶん無駄なエネルギーを消費してしまった。自分の心の狭さが情けない。トホホ。

さあ帰ろう!外に出て、太陽を浴び軽く深呼吸。生き返る。

坂道を歩きながらふと思い出した。以前、何かの本で読んだ話。

「森が人にとって心地よいのはなぜか」

たしか脳疲労について書いた本だった。
人が「疲労」と感じているものは実はほぼ「脳疲労」。
疲労回復には、自律神経の副交感神経を優位にして脳と体を休息モードにする必要がある。つまり、リラックス。

よく、森にはリラックス効果があるといわれる。たしかに。では、森の何がそんなに私たちをリラックスさせるのか。森林の香り?マイナスイオン?

その答えは「ゆらぎ」。 

「ゆらぎ」とは
「一定ではなく、常にばらつきや変化がある」状態。


キラキラ輝く木漏れ日。
時々ふわっと肌をなでるそよ風。
樹々の葉がふれあう音。
水のせせらぎ。鳥の声。

森はゆらぎに満ちている。


「ゆらぎ」が人をリラックスさせる。
それがなぜかと言えば、人の生体も常にゆらいでいるからだ。
生命体は常に微妙に変化している。心拍も、血圧も、呼吸の速さも、体温も。
自然の「ゆらぎ」と人体の「ゆらぎ」がシンクロするから、人は森の中で「心地よい」と感じる。

納得。人も自然の一部だもんね。

こんな調査結果もあるという。

①最適な温度と湿度で一定に固定した環境(ゆらぎなし)
②最適な温度と湿度に微妙な変化を加えた環境(ゆらぎあり)

この2つの異なる環境で長時間作業(ここでは運転)し、疲労度を調べると、疲労の値が大きいのは最適値で固定した「ゆらぎなし」の環境だった。
長時間作業に伴う作業性の低下も「ゆらぎなし」の方が大きかった。

人には「ゆらぎあり」環境の方が合っているということだ。一定に固定された環境では、人は疲労しやすい。

たしかにそうかも。まっすぐ変化のない道を一定速度でひた走るのも辛いし。ずっと一定って、なんか疲れる。


だからあんなに辛かったんだ。
人工的に作られたゆらぎゼロの「音楽」によって時間を刻まれ続けた結果、生命体として脳にストレスがかかってたんだ。


オフィスビルより森の中。
あるいは浜辺でもいい。

人間には本来、その方が合っているらしい。


それを身をもって学習した日だった。



ゆらぎ、足りてますか?

ちなみに私が読んだ本というのは
「すべての疲労は脳が原因」(集英社新書)
興味深いトピックが多く、脳についての解像度が少し上がりました(すぐ忘れるけど)。
(ブックオフで100円で買いました...古本屋最高!)


それでは。生活に素敵なゆらぎを。

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