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舞台版「パラサイト」感想 - 韓国の半地下から大阪のドヤ街へ

舞台版「パラサイト」7/1(土)マチネを観ました。

映画は映画館で1回、配信で2回ほど観ているので、韓国の半地下から大阪のドヤ街に置き換えた映画版と舞台版の相違点を考えながら観ていた。

宮沢氷魚さんを映像でもあまり観たことがなくて(自分の中ではどちらかというとファッションのイメージが強い)舞台で初めてお芝居をしている姿を観て、すごく味のある素敵な俳優さんだなと思った。加えて古田新太さん、江口のりこさん、伊藤沙莉ちゃんという盤石の布陣からなる“半地下の家族”、観ていてとても贅沢だった。

映画版の水害と置き換わるのは、阪神淡路大震災。ポケベル、出始めの携帯、BGMで流れている篠原涼子「恋しさと せつなさと 心強さと」やJUDY AND MARY「BLUE TEARS」などが1994〜95年の世界観を表していた。

水害を阪神淡路大震災に置き換えたことで、特に被害が起きていない高台の家で行われる息子の誕生日パーティが、よりエグみを増していた気がする。きっと自分が日本人で地震被害をイメージしやすいのもあるし、火柱や黒煙が高台から見えるはずなのに...と胸糞悪かったのもある。

映画版のパーティでは、インディアンの仮装をするお父さん。舞台版では古田新太さんがオバQに扮していて、めちゃくちゃ笑ってしまった(ちゃんと頭の上に毛が3本立っている)。原作の地獄感は損なわず、映画よりももっとコメディのノリで作り上げてるのがすごくよかったな。うまい役者がそろってるからできること......!

というか社長役、山内圭哉さん!けもなれのブラック企業社長やんけぇ〜!!!とテンション上がってしまった。けもなれ大好き。真木よう子さんとのやりとり面白すぎました(時計回りのくだりもちゃんとある)。


追記

オチの見せ方がすきだったのだけど、書くの忘れてた。

映画版のエンディングもゾゾっとして好きなんだけど、舞台版はお母さんと妹、2人とも死んでしまうので、より妄想が“妄想”として伝わる作りに。

氷魚くんが語りを入れながら、1人あの家でクリスマスパーティをする。紙吹雪の中で、笑顔でシャンパンを開け、“本物”のクリスマスケーキのろうそくの火を吹き消す。

そもそも舞台の始まりがクリスマスの日にチキンとケーキがない、あるのは唐揚げとケーキに見せかけた鏡餅だけ!というシーンだったので、このつながりもとてもよかった。

映画版の見どころである車の中にパンティを落とすシーンや、桃の毛を家政婦に吹きかけるシーンは描かれていない(すべて事後)んだけど、その代わりにドヤ街で生きる人々の思いや、地下にいるもう一組の家族の思いが伝わってくる作りで、生の舞台の見せ方はすごいなと。

地下にいるもう一組の家族、映画版では夫婦だけど、舞台版では家政婦さんの寝たきりの夫と借金を作って首が回らなくなってしまった息子、という3人だったのもエグいなと思った。地下室に介護用ベッドがある!と。

寝たきりのおじいちゃん、本編で顔が見えなかったのだけど、カテコでやっと顔見られた!と思ったら、ファンタスティックスのファンタジーおじいちゃんこと青山達三さん!か、かわいい!

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