〈認知言語学ノート#04〉統語論

認知言語学をよりよく理解するには、生成文法の特徴を把握しておくことが望ましい。

〈統語論と意味論〉
・統語論(構文論)とは、語句の組み合わせの仕方の議論

例)
「花子は太郎を大好きなのだ」は正しいが、
「花子は太郎を赤いのだ」や「大好きは太郎を花子なのだ」は正しくない。

・意味論とは、語句や文の意味がどのように与えられるのかの議論

生成文法は、統語論と意味論を厳しく区別する。というのは、統語論的な規則によってできあがった文に対しては、別の規則が適用され、その文の意味解釈が得られると考えるから。

〈意味論をめぐるチョムスキーとレイコフの変遷〉
・チョムスキー
生成文法を創始したとされるSynactic Structures(1957)が扱ったのは統語構造であった。しかし、Aspects of the Theory of Syntax(1965)で、意味の特定の側面については言語知識の中に取り込むべきだとの考えを示した。

・レイコフ
チョムスキーが生成文法に意味論を取り込んだので、いっそのこと統語論ではなく、意味を言語知識の中心にすえようと考えた。そこで、1960s半ば、レイコフは「生成意味論」を唱えた。

《統語論と文法(狭義)の違いは?》
⇒だいたい同じだが、正確には異なる。

“dog”の複数形“dogs”に含まれる“s”や、
“work”の過去形“worked”に含まれる“ed”は形態素と呼ばれるが、これは語より小さい語彙項目であり、認知言語学における文法(狭義)は、形態素を組み合わせて語を作るパターンも考える(形態論)。
一方、統語論では、語より大きいもの(語や語句)の組み合わせを考える。

【参考文献】西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』 (中公新書)

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