齋藤芳生

齋藤芳生です。短歌をつくっています。「かりん」所属。歌集『桃花水を待つ』『湖水の南』『…

齋藤芳生

齋藤芳生です。短歌をつくっています。「かりん」所属。歌集『桃花水を待つ』『湖水の南』『花の渦』。 twitter @chicayoshi220

マガジン

  • 金の砂、銀の雨~齋藤芳生のエッセイ~

    齋藤芳生がこれまであちこちに発表したエッセイをまとめています。

  • 齋藤芳生の日記とか雑談とか。

    齋藤芳生の日々のあれこれ。ときどき周子先生。不定期更新。

  • 齋藤芳生のほんだな

    これまでに書いた書評や好きな本の話など。

  • なきごえ。

    いろいろな生きものの鳴き声を集めています。

  • 齋藤芳生の写真帖

    これまでに撮った写真をまとめております。 写真を撮るのと歌をつくるのってなんか似てる。

最近の記事

いちめんにみどり

 アラブ首長国連邦の公立小学校で日本語教師として働いていた頃、「日本」という国を紹介するにあたってなかなかに便利だったのが、四季折々の写真を月毎に楽しむことのできるカレンダーだった。4月は満開の桜。5月は、新緑のなかを涼やかに流れてゆく渓流の水。6月は、雨に濡れた紫陽花とかたつむり。  アラブ首長国連邦は典型的な砂漠気候で、基本的に季節が二つしかない。日中の気温が50度以上にもなる、しかも海沿いなので湿度も高い「夏」と、気温10度から20度前後の爽やかな天気が続き、時おりぱ

    • つるばみいろの思い出

       どんぐり、と一口に言ってもその大きさや色、形は様々だが、子どもの頃の私が特に好きだったのはクヌギの実だ。コナラやシラカシといった細長い形のどんぐりよりも一回り大きくてまんまるな実は、見つけた時の喜びが一際大きい。かき分けた落葉の中で、その一つひとつがどれもぴかぴかに光って見えた。よく「帽子」と呼ばれる殻斗(かくと)も立派である。これはクヌギっていう木のどんぐりだよ、と教えてくれたのは両親だったか、それとも担任の先生だったろうか。  くぬぎ、くぬぎ、と呟きながら、友だちや妹

      • 「宣戦布告」の思い出~私の短歌公募館~

         さて、あれこれ慌ただしかったのがちょっと落ち着いたので、また季節を逃さないうちにアップします。  今回は私が短歌を見よう見まねでつくりはじめたばかりの頃のお話です。もう四半世紀前になりますが、当時の「NHK歌壇」と角川「短歌」の「短歌公募館」に毎月投稿していました。では、どうぞ。 ******  短歌をつくってみようと思ったとき、私は小学校の教員を志望する大学生だった。俵万智さんの『チョコレート革命』が話題になっていた頃である。そう、私もまた、俵万智さんの歌を読み、「こ

        • 会津を歩く――髹(ぬり)の辻まで――

           夏休みにアップして以来、また時間が空いてしまいました。 もうすっかり秋ですね。寒い。  さて、「私のおばあちゃんたちの話」も①②で止まっており、近々③をアップする予定でおりますが、昨年横浜歌人会の会報123号に書かせていただいた「町歩き」についての小文を。季節を逃さないうちにね。  では、どうぞ。 *********  歌ができないとき、文章が書けないときには、好きな音楽を聴きながら1~2時間をひたすら歩く。福島県の福島市に住んでいるので、普段は家の近くを流れている阿武隈

        いちめんにみどり

        マガジン

        • 金の砂、銀の雨~齋藤芳生のエッセイ~
          32本
        • 齋藤芳生の日記とか雑談とか。
          13本
        • 齋藤芳生のほんだな
          4本
        • なきごえ。
          1本
        • 齋藤芳生の写真帖
          3本
        • アブダビ通信(2009~2010)
          8本

        記事

          私のおばあちゃんたちの話②

          昨日の続きです。 芳子さんの話。  アメリカに渡った両親を追って一人移民船に乗った、9歳の少女。それが私の曾祖母だ。名前は「ヨシ」だと聞いている。しかし、「ヨシ」の写真だというこの一枚には、裏に「芳子」と書いてある。  だからここでは「芳子さん」と呼ぼう。  ちなみに私のペンネームは「芳生(よしき)」だが、決めたときに彼女のことはまったく意識していなかった。漢字が同じなのも偶然である。 (が、偶然だと思っていたことが実は必然だった、ということはしばしば起こる。亡くなった

          私のおばあちゃんたちの話②

          私のおばあちゃんたちの話①

           1年前の今日、こんな記事を書いた。  今年は、私自身の”おばあちゃんたち”の話を書いてみようと思う。  ”私のおばあちゃんたち”とは、私の母方の祖母、曾祖母(祖母の母)、そして高祖母(曾祖母の母)、の3人の女性のことである。  はじめに断っておくと、これは私が子どもの頃から、特に夏休みに母の実家に帰省した際、私の祖母やその妹、弟たちから聞いた話をつなぎ合わせたもので、詳しい事実関係の確認はできていない。  でもこの”おばあちゃんたち”の物語、私が言うのもなんなのだがとても

          私のおばあちゃんたちの話①

          花の落ちる音

           今年の夏(註:2017年)は、いつまでもいつまでも降り続く雨が止むのを待ちわびている間に終わってしまった。一ヶ月以上もの間続いた雨がようやく上がって晴れ間がのぞいたと思ったら、街はもうすっかり秋の気配だ。ひんやりとした空気のなか、我が家のささやかな庭もいつの間にか秋の虫たちの澄んだ鳴き声でいっぱいになっている。  太陽を求めて高く伸びた向日葵。今年も見事な花を咲かせていたご近所の百日紅や、真っ白な槿。プランターや花壇に植えられた真っ赤なサルビアやカンナ、そしてマリーゴール

          花の落ちる音

          夏の友だち

           高校を卒業してから、生まれ育った福島市を数年間離れては戻り、ということを何度か繰り返している。首都圏で暮らした時には新幹線でしょっちゅう帰省することができることもあってあまり感じなかったのだが、アラブ首長国連邦で三年間暮らした後に帰国した時には、家族や友人をはじめとするたくさんの懐かしい人たちとの再会を心底嬉しいと思った。積もる話はお互いに山ほどある。お米も、畑で採れたばかりの玉蜀黍もトマトも胡瓜も、そしてよい香りのする大きな桃も、久しぶりに口にする何もかもが美味しい。子ど

          夏の友だち

          桃のにおい

           この歌をつくってからちょうど1年になる(註:2018年8月)。  昨年は今年の猛暑など想像もできないほどの冷夏だった。最近は友人たちと「去年と今年を足して二で割るぐらいがちょうどいいのにねえ」と冗談めかして話してはよく笑っているが、あの冷夏はなんだかもう遠い昔のことのような気がする。  冷夏でも猛暑でも、福島市で生まれ育った一人として毎年夏を過ごすために欠かすことのできないのは、桃である。猛暑の影響で今年は全体的にやや小ぶりだと聞いたが、やはり今年もおいしい。あのまるい形

          桃のにおい

          さみどりの合歓

           2007年8月から2010年6月までの3年間、私はアラブ首長国連邦の首都であるアブダビという街で働いていた。日本語教師として、現地の公立小学校に通うアラブ人の子どもたちに日本語を教える仕事である。アブダビ政府と取引のある日本の石油会社が募集していた仕事だった。  外国で暮らしてみたい、という漠然とした思いはあったけれど、「アラビア」に対してそれほど関心があったわけではない。正直に言ってしまえば、アブダビという街がどこにあるのかも心もとなかった。当然アラビア語もわからないし

          さみどりの合歓

          かなしみは自然にあらずー窪田空穂ー

          こんにちは!齋藤です。 久しぶりにnote更新です。今回は、ちょうど一年前に書いた窪田空穂についての小文を転載します。 いろいろあるけど、生きなくてはね。 ***********  あなたの飼っている牝犬が、ある時子犬をたくさん産んだとする。親となったその犬は「わたしの赤ちゃんたちを見て」と言わんばかりにあなたの服の裾を咥えて、子犬たちのところにあなたを引っ張って行く。本当にかわいいね、よく産んだね。そう声をかけて撫でてやったが、しばらくして子犬のうちの一匹が死んでしまっ

          かなしみは自然にあらずー窪田空穂ー

          秋のうた「平行世界の花野」

          こんにちは!noteではご無沙汰しております。齋藤です。 今回はめずらしく?歌を。 ちょうど一年前、某短歌総合紙に出したものです。 平行世界の花野       齋藤芳生 もう10月が終わりますね。 みなさま、どうぞよい秋を。

          秋のうた「平行世界の花野」

          私たちのおばあちゃんの話

          8月15日、ということで、 書き残しておきたいと思う「おばあちゃんの話」。 福島に帰郷してからしばらくの間、 ご縁があって私は伊達市の小さな短歌会に参加していた。 これは、その短歌会に来ていたおばあちゃんから聞いた話だ。 ここではHさん、と呼ぶ。 歌の縁というのは本当にふしぎなもので、 Hさんは私が高校時代に仲がよかった友人のおばあちゃんのお姉さん、だった。 (ちなみにその友人は中学時代、私の母が英語を教えていたという縁もある。) 以下、詳しい場所や人名は残念ながらしっかり

          私たちのおばあちゃんの話

          2021年の12ヶ月を振り返ってみる④ 10月〜12月

          はい、とっくに年が明けてしまいましたが、 2021年の振り返り最終回です。 10月。 この月は、担当している小学生の国語の授業に毎年登場している作家たちの短編を読んでいる。それぞれに印象深かった。 まずは、永井龍男の「胡桃割り」。 そして、竹西寛子の「蘭」。 (しかしこれは現在なかなか手に入らない。Kindle版出ないかな。) 佐多稲子の「水」。 直接テキストに出てきたわけではないのだけれど、関連して読んだ。 「水」は大人になってから読むと一層、 淡々とした描写のな

          2021年の12ヶ月を振り返ってみる④ 10月〜12月

          2021年の12ヶ月を振り返ってみる③ 7月〜9月

          あっという間に2021年も後半。 7月。 子どもたちと一緒に勉強勉強勉強。 今年初めから J-SHINE の 小学校英語指導者認定資格を取得しようと勉強中(?)。 で、この7月はオンラインでのセミナーを第1回目を受講。 職場と家と駅前での買い物、という3点移動ばかりの生活をどうにかしたい!と前年から英会話スクールに10年以上ぶりに通い始めていた。 そこで、前々から「とれるならとりたいな」と思っていたこの資格が「オンラインで受講できるんですよ」「今受講していただいているコー

          2021年の12ヶ月を振り返ってみる③ 7月〜9月

          2021年の12ヶ月を振り返ってみる② 4月〜6月

          4月。 4日、一羽のボタンインコが我が家にやってきた。 名前をいろいろ考えていたのだが、母の「簡単なのがいい」という一言で「ぴい」に決定。 Twitter上では敬意を込めて「ぴいさん」と呼んでいるが、 実際の呼び方はその時その時で 「ぴい」「ぴいちゃん」「ぴいこちゃん」「ぴいのすけ」などなど変わりながら現在に至る。12月で1歳。 知識としては知っていたけれど「ラブバード」と呼ばれるだけあって本当に人なつっこい。そして賢い。 はじめはおっかなびっくりだった母が、今は孫のように可

          2021年の12ヶ月を振り返ってみる② 4月〜6月