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ふさわしい不倫(13)

子供のうーん、という声がした。
薄目を開けると、寝室のカーテンが朝日で明るくなっている。
陸くんが起きたようだ。
見つかるかな?と思ったら、陸くんは私を蹴って寝室から出て行った。

吹き出しそうになる。
これだから、子供っておもしろい。

大地はグースカ寝ていて、起きる気配がない。
私はもう、目がさえまくって、二度寝はムリそうだ。

陸くんに会いに行こうかな。
どうせ会う運命だし。
どんな反対するかな。
泣いちゃったらどうしよう。

大地の言葉を思い出す。
「陸は発達障害だから、他の子と違う。
家には児相のおばさんや家事代行のおばあちゃんが出入りしてるから、あなたを見ても何も思わないよ。」

大丈夫。
きっと大丈夫。

静かにリビングに移動する。
そこにはテーブルで切り紙で一人遊びをしている陸くんがいた。
ゆっくり、陸くんの顔が見えるところまで近づき、小さな声で「陸くん、おはよう。」と言った。

陸くんは一瞬顔をしかめて、
「なぁーにぃー」と言う。

ほんの一瞬だけど、陸くんに顔を歪めさせてしまったことに、ごめんねと心の中でつぶやく。

顔の作りが大地に似てない。
洗面台に妻の写真があったけど、こんな顔だったかな。

「一緒にあそぼー。」
陸くんが誘ってくれた。
とりあえず私のことを受け入れてくれたみたい。

嬉しい!


それから、アンパンマンを見ながら、麦茶を飲ませたり、昨日、陸くんのために買って来たみかんゼリーを食べさせる。
陸くんは、ゼリーを畳にひっくり返して、手で掴もうとしてぐちゃぐちゃにする。

これだね。
毎度これやられるから、ママはぶち切れるんでしょ。
私は平気だよ。
今日だけのお世話係だからね。


30分くらいして、そろそろちゃんと朝ごはんを食べさせたいと思い、寝室に戻る。
昨日、けっこう飲んだせいか、大地はまだ寝ていた。

大地の布団を少しはいで、耳元で「陸くん起きてるよ。」と伝える。

「えー、陸どうだった?」

「なんか大丈夫みたい。
一緒にアンパンマン見たよ。
ゼリーも食べた。」

「でしょ。大丈夫だから。あなたは陸をどうこうってないでしょ。悪いようにしない大人なら大丈夫だから。」

そりゃあ、子供をいじめるような悪い大人じゃないですけど、この状況は本当に大丈夫なんでしょうか。

誰にも分からないよね。
知らないおばさんが家に泊まったことで、4歳の子供の将来に、どんな影響があるかなんてデータがあるわけもない。

常識的に良くないことだと分かるけど、気持ちでは役立っているように感じた。

大地は「エッチしよう。」と言う。
大地は夜と朝できる人だった。
むしろ、朝の方がしたいと言っていたっけ。
こりゃあ、妻も疲労しただろう。

寝室に鍵をかけてエッチする。
もうすぐ終わるというところで、陸くんが「パパー!」と呼んで、扉をガチャガチャ開けようとしてした。

大地が「ちょっと待っててー!」と返事した。
かわいい。
大地はぜんぜん萎えない。
かわいい。
男の子たちがかわいすぎる。

(つづく)

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